襲名記念! 新たな一歩を踏み出した16代樂吉左衞門が語る、初個展への想い

  • 文:小長谷奈都子

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十六代 吉左衞門 黒樂茶碗

安土桃山時代、千利休の創意のもと、初代長次郎によって生み出された茶碗に始まり、450年間にわたって連綿と続く樂家の歴史。2019年7月には、先代である直入の長男・篤人が16代樂吉左衞門を襲名。現在、髙島屋京都店にて、その襲名記念の展覧会が開催中だ。

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16代樂吉左衞門は1981年生まれの39歳。東京造形大学彫刻科やイギリス留学を経て、2011年より樂家にて作陶をスタート。会場には、襲名後から制作してきた黒茶碗、赤茶碗が44点と水指、花入などが並ぶ。当代に話を聞いた。

「いままでになかったまったく新しい茶碗で最初は名前もなく、いまできたばかりの茶碗ということで“今焼”と呼ばれたのが樂茶碗の始まりです。その後、2代、3代と続く中で、利休さんの侘び茶の精神や長次郎茶碗を原点としながら、真似ることなく、代々それぞれが新しい茶碗を作るというのが樂家の根幹にあります。私のお茶碗は、形のラインや高台の風通し、いままでにない景色の流れなど、ちょっとしたことで華やかさや新しさを出しながら、伝統のなかにある魅力を感じてほしい、というところに芯を置いて制作しています」

父である先代は、斬新で前衛的な作風で、作家としても独特の世界を打ち立ててきた陶芸家。その薫陶を受け、代を重ねるごとに重みを増す伝統や葛藤を抱えながら、現代に生きる自らの茶碗づくりに専心する16代。ぽってりした艶のある釉薬が豊かな景色を見せる黒茶碗や、内側からほわっと発色するような温かみのある赤茶碗。伝統にしっかりと軸足を置いた作品は、どれもやわらかくやさしい佇まいだ。

「樂茶碗の特徴でもある手びねりは、持った時に違和感なく手に馴染み、すっとやわらかくお茶が口に入ります。お茶を飲んだ後、茶碗の中に世界の広がりがあって、置いてからもふわっと魅力を感じるような、ガンと主張するよりはやわらかく存在する、そんなお茶碗をつくりたいです」

歴代の中で好きな作家を尋ねると、のんこうと呼ばれた3代目の道入だそう。「初代長次郎には軸を置いていて、絶対的に好きなんですが、その次はのんこうですね。長次郎のお茶碗は小ぶりながら、見込みがすとーんと宇宙を感じるほどに深い。のんこうの見込みは深いというより、ふわっとおおらかな広さをもっている。のんこうのような見込みをもつ、艷やかで華やかな作品に憧れます」

450年の歴史と伝統を背負う、若き当代の新しい始まりの一歩。京都の展覧会は19日(火)まで。その後、一部作品が入れ替わり、髙島屋日本橋店にて、11月3日(水・祝)から9日(火)まで開催される。

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十六代 吉左衞門 赤樂茶碗

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十六代 吉左衞門 赤樂獅子瓦 国宝薬師寺東塔之土以

『十六代 襲名記念 樂吉左衞門展』

開催場所:髙島屋京都店6F 美術画廊
開催期間:〜10月19日(火)

開催場所:髙島屋日本橋店6F 美術画廊
開催期間:11月3日(水・祝)〜9日(火)

※各会場とも最終日は16時閉場