ミシュランガイド選出の京都の餃子店が、新宿地下街にやってきた。生姜の苦味が絶妙っ

  • 写真・文:高橋一史

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京都祇園に本店を構える餃子専門店「歩兵」の一皿。

そりゃ、「権威は権威にすぎない」とは思っておりますよ。
そこに頼って思考停止してはいけないと。
でも「ミシュランガイド東京 2021」でわずか6軒、「ミシュランガイド京都 2020」では1軒しか選出されなかった狭き門のビブグルマン餃子店に、京都地域で17年から19年まで3年連続で選ばれた名店と聞けば、胸がざわつくのも致し方ないところ。

その店の名は、京都祇園の「歩兵」。
20年からミシュランガイドに載らなくなったのは、支店展開するようになったのが理由と推察されるようです。
ガイド基準は明かされてないものの、ミシュランは個人店重視の姿勢。
どれほどおいしくても、店構えや接客が上等でも、複数店舗店は選ばれにくいようです。
(しかし各国に店があるジョエル・ロブションはなぜか選ばれる)
このガイドに載るのは満足する確立が高い個人店で、ほかにも“いい店”はあるという話。

歩兵は現在東京の銀座と恵比寿にもあり、10月20日(水)に新宿駅地下街に進出。
この地下街はまるでミノタウロスの宮殿。
誰もが迷子になる迷路の攻略ガイドは記事の最後にするとして、餃子を実食した感想からはじめましょう。
10月15日(金)にメディア向けお披露目会が開かれたときのレポートです。

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将棋の歩兵のように少しずつ歩みを進める、という考えから名付けられた店名。

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一皿¥500(税込)の、にら&にんにく入り「ぎょうざ」。パリジュワの優しい食感。

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にんにく抜きの看板メニュー「生姜ぎょうざ」は、名に恥じない生姜の量と味わい。

餃子メニューは2点のみで、にんにくなしの「生姜ぎょうざ」と、にんにく&にら入り「ぎょうざ」。
舞妓や芸姑も闊歩する祇園において、女性も食べやすい臭わずコクのある餃子を開発することからスタートさせた店というだけあり、特にご自慢なのが「生姜ぎょうざ」。
なにげなく食べると、「おおっ」と驚けると思います、これ。
噛んだ瞬間はシンプルな食材の持つ甘み(この甘みが素晴らしい)を感じ、次に生姜の生っぽい苦味がどわっとやってきます。
このコントラストが、まー美味い!
食材の持ち味を生かす調理だと思いました。
“高級感”と言っていい奥深さ。

対する「ぎょうざ」は逆の方向性で、にんにくがガツンとくる華やかな味。
どちらも優劣つけがたしです。
今回は特別にメニューにない「ハーフ&ハーフ」の一皿をいただきましたが、レギュラーにすればいいのに、と思う完成度の高さ。
4個ずつ交互に食べると、2種類の違いがより浮き彫りになり、歩兵の餃子づくりの個性を実感できました。
店の味を客に手軽に体感させるには、満足度が高いハーフ&ハーフが有効そう。
カレーのトレンドである、2種類を一皿にした「あいがけカレー」と同じ発想で。

もっともここの餃子は、一口餃子と呼ぶべき小振りな大きさ。
あっという間に完食し、ライスをつけても一皿ではお腹いっぱいにならないでしょうから、もう一皿追加で注文することになりそう。
そうなると2種類が別メニューでもいいのでしょうが、歩兵初心者向けメニューもありだと思います。
健康志向が広がる中で食のトレンドが、ちょっとずついろんなものを、という流れになってますし。

あそうだ、歩兵の餃子はこれ自体にかなり味がついてます。
生姜ぎょうざは味噌だれ、ぎょうざは醤油だれで食べるのがデフォルトなものの、装飾が苦手な私にはトゥーマッチでした。
シンプルに酢だけで食べるのが私的なお薦めです。
これがいちばん美味かった!

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テーブル席6卓12席、カウンター5席のコンパクトな店内。

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サイドメニューも絞られた展開。餃子の引き立て役というより、酒の肴の居酒屋感覚。

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正面入口。左側はテイクアウトのカウンター。

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歩兵初テイクアウトメニューの「ぎょうざ弁当」は¥950(税込)から。持ち帰り餃子(各税込で8個¥500)は2人前からの注文式で、1箱につき¥50が追加。

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横から見た様子。新宿地下街は整備されていても昭和感が色濃く残ってます。

さーて最後に、店に行くまでの地下街の説明をしとかないと!
(ユーウツだ……)
住所は、新宿区西新宿一丁目西口地下街1号(小田急エース南館)。
「小田急エース」は、新宿駅から見て都庁方面にあたる西口の地下街ショッピングモールのこと。
「南館」は、小田急線や京王線に近い位置のエリア。
(“館”の名称でも地下1フロアだけで、複数階の建物ではない)
百貨店っぽい名前だから混乱するんですよ。

突然ですが、ちょっとグチっていいですか!?
なんかさ、最近の商業施設でもエリア名称を東西南北(イースト・ウエスト・サウス・ノース)と呼ぶケースがホントに多いけど、片手にコンパス持って歩いてる人間が都会にいます??
街中で太陽の向きを気にしてる人も見かけないですし。
人の肌感覚で方向を掴めないネーミングはよくないと思うのです。
「建築家発想じゃなく、素人目線で名付けていただけませんかねー、施工主さん」っていつも思う。
古い名残の新宿地下街は仕方ないとして、新規で施設をつくるときはぜひご一考を。

すみません、日頃の不満がふつふつと湧き出てしまいました。
歩兵さんはなんも悪くないのに。
え〜〜、鉄道各社の西口改札から都庁方面に地下を歩いていくと、屋外に吹き抜けた円形ターミナル(円形広場)に出ます。
その左側にある絵画や食材を販売するガラス壁の部屋(名称はイベントコーナー)に沿って、左横をぐるりと曲がって都庁方面に進むと、端っこに現れるのがこの店です。
小田急エース南館のもっとも奥まった人通りの少ないエリア。
地上にあるヨドバシ新宿西口駅前ビル(旧MY新宿第二ビル)に出る階段のすぐ近く。

う〜む、バカな私の説明能力ですとこれが限界……。
オープン直後は知る人だけが行く店として狙い目な気がしますので、どうぞ足をお運びくださいませ。

All Photos © KAZUSHI