【大人のオーダーメイド】ブルックス ブラザーズであつらえる、“2着目のスーツ”体験レポート

  • 写真:高橋絵里奈 文:Pen編集部
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ブルックス ブラザーズの「パーソナル オーダー」で製作したグレーフランネルのスーツ。自分の理想を細部まで追求した一生ものだ。

唐突に冬の到来を感じる今日この頃。しかしそれは、コートやジャケットを楽しめる、本格的なファッションシーズンの始まりとも言える。今回は、そんな季節にオンオフ両方で活躍する、遊びのある2着目のスーツをお薦めしたい。日頃カジュアルウエアが多いなら少し綺麗に装いたい時、ビジネスシーンでスーツを着用しているならそこにニュアンスを加えたい時、季節感漂うスーツがあれば重宝する。

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トラッドウエアをつくり続けてきた、ブルックス ブラザーズへ

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パーソナル オーダーを体験すべく、表参道に立つ旗艦店「ブルックス ブラザーズ 表参道」の地下へ。

クラシカルなスーツが気分であれば、その筆頭候補と言えばやはりブルックス ブラザーズ。1818年にアメリカ・ニューヨークで生まれたこのブランドは、トラッドなコート、スーツ、ジャケットなどをつくり続ける一方、近年ではアイ ジュンヤ ワタナベ マンやパラブーツなど国内外のさまざまなブランドとコラボレーションも行い、ファッション性もきわめて高い。 

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地下1階のフロアは大人の隠れ家のよう。オーダーはスーツのほかに、シャツやコートも受け付けている。

ブルックス ブラザーズには既成のスーツももちろん豊富に揃うが、体型やディテールなど、理想的な一着を手にしたいのであれば「パーソナル オーダー」がお薦め。今回、ブルックス ブラザーズのパーソナル オーダーで秋冬のスーツを実際にオーダーしてみた。

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まずは、イメージするスーツについて担当者にじっくりと話を聞いてもらう。担当者は指名可能。

極私的な好みではあるが、秋冬の生地として「グレーフランネル」に強い憧れがあった。起毛させたウールは重厚感を醸し、ヘビーデューティな印象がありながらも、どこか上品。相反する魅力を備えた生地で、スーツをつくってみたかった。

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手前から、トラディショナル フィット、クラシック フィット、スリム フィット、TOKYO モデル。4型のサンプルが並ぶ。

そんなことを考えながら、旗艦店「ブルックス ブラザーズ 表参道」へ。地下1階に広がるフロアで、パーソナルオーダーを受け付けている。スーツやジャケット、ドレスシャツなどがズラリと並ぶこのフロアには、通りから見えるガラス張りの1階や2階とはまた違った趣がある。

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肩幅、ウエスト、着丈などを設定するにあたり、採寸してもらう。

担当してもらったのは、30年以上のキャリアを持つ大平洋一さん。「グレーのフランネル生地を使って、遊びのあるクラシカルなスーツをつくりたい」という、こちらの大まかなイメージを伝える。着用シーンや予算などを相談し、そこから具体的な一着に落とし込んでもらう。理想のスーツを思い描きながら打ち合わせる時間も、パーソナルオーダーの楽しみのひとつだ。

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イギリスのウィリアム・ハルステッドの生地に触れながら、隣のロロ・ピアーナの生地も気になる。シーズンにより揃う生地のラインアップは変わる。

まずはブルックス ブラザーズの既存の4つのスタイルからセレクト。アメリカンスタイルを象徴する、最もゆったりした「トラディショナル フィット」。トラディショナル フィットと比べるとほっそりした印象を与える「クラシック フィット」。より細身で現代的なシルエットに仕立てた「スリム フィット」。そして段返り3つボタンのモデルにダーツを入れ、ウエストラインをすっきりさせた日本オリジナルの「TOKYOモデル」。

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スーツの絵柄に切り抜かれたプレートをのせて、仕上がりをイメージ。

トラディショナル フィットはゴージやフロントボタンの位置が低いのでVゾーンが広く、最もクラシカル。パンツもテーパードが少なくストンと落ちたシルエットなので、まさに理想としていたスタイルだ。トラディショナル フィットに決め、続いて生地選びへ。

ドーメル、サヴィル・クリフォード、エルメネジルド・ゼニアなどさまざまな生地ブランドが揃う。産地はイギリスとイタリアが基本だ。イギリスの生地は耐久性を備えていて質実剛健といったイメージで、長く着続けることで味が出てくる。一方、イタリアの生地はしなやかで光沢があり、ひと目見ただけで“いいスーツ”だとわかる。

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選んだグレーフランネルの生地の上に、ボタン、裏地、襟裏のカラークロスなどを合わせてみる。

グレーフランネルを考えていたものの、実際に生地見本を手にしてみると思わず他の生地にも惹かれてしまう。イタリアのロロ・ピアーナ社が織り上げたウール100%のネイビーの生地は、トロリとした質感で上品な光沢を放つ。比較的薄い生地なので長いシーズン着用できるのも魅力だ。

グレーのウールフランネルは、イギリスの生地メーカー、ウィリアム・ハルステッドのものをチェック。1メートルあたり450グラムもの重さがあり、冬物のコートもつくれるようなボリュームだ。このような振り切った生地を手掛けていることから、玄人好みのメーカーとして近年注目を浴びているそうだ。

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大平さんが描いてくれた、パンツ2型の手描きイラスト。迷わずクラシック仕様を選ぶ。

ロロ・ピアーナか、それともウィリアム・ハルステッドか。長い時間悩んだ末に、やはり秋冬のスーツとして当初から憧れていたグレーフランネルをセレクト。しかし、このような想定外の出合いも、パーソナル オーダーならでは。

フランネルは起毛素材なので光沢はないものの、その立体的な表情には高級感が漂う。特にグレーは霜降りと言われ、さまざまな色みが混じり合うことで深みが感じられる。スーツが出来上がったら、長い時間をかけて生地の味を出して育てていきたいと思う。

あとはディテールの調整だ。ジャケットの着丈の長さをヒップがちょうど隠れる位置まで詰め、パンツのダブル幅は身長も踏まえて4cmに。裏地はヨーロッパではジャケットの内側全体に付いた総裏が主流だが、アメリカでは歴史的に背抜きのものが多いとのことで、カジュアルにも着られる背抜きをセレクト。パンツは縦ポケットに加えて、元来懐中時計などを入れるためにデザインされたウォッチポケットも配された、クラシカルな仕様に。このように詳細まで詰め、オーダーが完了。後は完成したスーツが届くのを待つだけだ。

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完成したスーツと、いよいよご対面

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待望のスーツに袖を通した瞬間。大平さんがサイズ感などを確認してくれた。

そして1カ月半ほど経ち、さまざまなリクエストを反映したスーツが完成し、ブルックス ブラザーズ 表参道へ受け取りに。袖を通してみて、サイズ感はもちろん、スーツのスタイルや素材から受ける印象もイメージ通りだ。担当の大平さんが肩幅やパンツの丈などを確認してくれる。この段階で丈詰めなどの微調整も可能だという。

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襟の縁にうっすら浮かぶAMFステッチ。手縫いのような温かみがある。

選んだディテールもそれぞれ映えている。フロントポケットはフラップ仕様、襟の縁には手縫いのように見えるAMFステッチ、ボタンはダークブラウンの水牛の角を、袖口は本切羽に。 

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袖口は、イギリス製の水牛の角を用いたボタンで本切羽仕様に。

ジャケットやパンツの丈を短めに設定しているのでカジュアルにもハマる。受け取りの際にはシャツと革靴で合わせたが、中はニットやスウェット、足元はスニーカーという装いも馴染みそうだ。着用感もやわらかいので動きやすく快適。

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生地ブランド、ウィリアム・ハルステッドのロゴ。裏地にはブルックス ブラザーズのアイコンであるゴールデン フリースが随所に配されている。

今回オーダーしたグレーフランネル生地のように、季節感のあるスーツを一着持っていると便利だ。上述したように、中にどんなものを合わせてもさまになる万能アイテムである。既製のスーツで自分のイメージした“まさにそのもの”があればいいが、ディテールやジャストのサイズ感まで追求すると、なかなかそうはいかない。

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ウォッチポケットのデザインも効いた、クラシカルなパンツ。

そして、オーダーから完成までの時間や生地が豊富に揃うタイミングを考えると、季節の変わり目に相談するのがベスト。着こなしの幅が格段に上がり、一生ものとして着用できるパーソナル オーダーをぜひ試してほしい。

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1階に上がり、着用した状態で撮影。味わい深いグレーフランネルの質感が際立つ。

ブルックス ブラザーズ パーソナルオーダー

対象店舗:メンズ・ウィメンズ パーソナルオーダー取扱店(アウトレット店を除く)
料金:スーツ¥121,000〜
納期:約2週間(レギュラー生地)~、約3週間~(インポート生地)
https://www.brooksbrothers.co.jp/stores