ラグジュアリースポーツウォッチ全盛ともいえる時代を経て、いま改めてクラシックなドレスウォッチに注目が集まりつつある。そんな潮流を象徴するかのように、カルティエが名作「トーチュ」の新作コレクションを発表した。「トーチュ」とは、フランス語で“亀”を意味する言葉。その名の通り、亀の甲羅を思わせる独創的なケースフォルムが特徴だ。
誕生は1912年。「サントス」や「タンク」と並ぶカルティエの歴史的コレクションでありながら、どこか通好みの存在として語られてきたモデルでもある。だが今回の新作を見ると、その印象は大きく変わる。単なる復刻ではなく、現代の感覚でエレガンスを再構築したような仕上がりになっているからだ。
今回の中心となるのは、イエローゴールドやホワイトゴールドケースを採用した2針モデル。ローマ数字インデックスや繊細な針など、カルティエらしい意匠を継承しつつ、最大の魅力はやはり独特のケースラインにある。
丸形でも角形でもない、なめらかに湾曲したフォルムは、腕に乗せた瞬間に独特の色気を生む。主張は決して強くない。それでも自然と視線を引き寄せる。その“静かな存在感”こそ、「トーチュ」が100年以上にわたり愛されてきた理由なのだろう。
名作ケースに宿る、工芸とジュエリーの感性


近年はラグジュアリーウォッチにもわかりやすいインパクトが求められる傾向が続いていたが、「トーチュ」はむしろ逆をいく。サイズも過度に大きすぎず、スーツスタイルはもちろん、ニットやシャツの袖口にも自然になじむ。そのクラシカルな佇まいが、いま新鮮に映る。
さらに、カルティエならではのジュエラーとしての美意識も見逃せない。ホワイトゴールドやピンクゴールドケースにダイヤモンドをセットしたモデルも用意され、時計という枠を超えたジュエリー的な魅力を放っている。
そして今回、特に目を引くのが「トーチュ パンテール メティエダール ウォッチ」だ。カルティエを象徴する“パンテール”をモチーフに、ミニアチュールペインティングやシャンルべ エナメル技法を駆使して文字盤を制作。多彩な色彩を重ねた幻想的な表情は、まるで工芸作品のような存在感を放つ。
近年の高級時計市場では、“誰がつくったのか”“どんな技法で仕上げられたのか”といったクラフツマンシップへの関心が高まっている。このモデルは、そうした価値観を象徴する一本といえるだろう。
スマートウォッチが普及し、時間を確認するだけならスマートフォンで事足りる時代。それでも人々が腕時計に惹かれるのは、スペックでは説明できない感情的な魅力があるからだ。
カルティエの「トーチュ」は、100年以上前に生まれたデザインでありながら、いまなお新鮮さを失わない。流行を超えて愛される“名作”とはなにか。その答えを静かに語りかけてくれるコレクションだ。
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