【Color of Japan 日本の魅力、再発見】<萌黄色>に溢れる白神山地の森

  • 文:岩崎香央理

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<白神山地:360° VR映像>
VRグラスをお持ちの方は、ぜひご使用してお楽しみください。

<白神山地:エリア映像>
全画面にして、ハイビジョン映像の迫力をお楽しみください。

青森・秋田両県にまたがる、約13万ヘクタールの山岳地帯。
“神の山”と崇められる白神岳をはじめ、天狗岳や二ツ森などの峰々を有する秘境・白神山地は、1993年、そのうちの約1万7千ヘクタールに及ぶエリアが日本で最初の世界自然遺産に認定された。

8千年以上前からこの地に根を張る、地球上でも最大級のブナ原生林。険しい山々と、1年の半分を雪に閉じ込められる厳寒の気候とが、限られた地元民や登山者、とりわけ山をなりわいの場とするマタギ以外の人間を寄せつけず、伐採や開発を免れ、手つかずの森を守り続けた。

白神の名を初めて文献に記した江戸時代の紀行家・菅江真澄も辿ったという暗門川のほとりから、ブナの原生林を旅してみよう。ふかふかとした落ち葉まじりの土を踏み締めながら歩く、木漏れ日の散策路。新緑が揺らめくブナの木立は、<萌黄色>のカーテンのように視界が明るい。モノトーンの長い冬から雪解けを経て、初夏には枝をいっぱいに伸ばした大樹たちが、萌え出る若葉を誇らしげに広げてみせるのだ。


散策道を抜け、渓流沿いを登り下りする。「曲がり淵」と呼ばれるカーブは沢歩きの難所だが、“ブナの森は水の森”と言われるだけあり、豊かな清流にしばし心を奪われるだろう。
ここから先は「暗門の滝」を目指して歩を進める。最初に現れる「第3の滝」までは軽いトレッキングだが、徐々に息が上がってくる。鉄骨と板で組まれた細い足場を渡り、道なき道を攻略するように「第2の滝」を通過。さらに奥へと峡谷を分け入れば、ついに落差42メートルの激流を轟かす「第1の滝」へと到達する。
500種以上もの高山植物が分布し、イヌワシやクマゲラといった希少動物も生息する白神山地。脈動のように流れる水を湛え、萌黄色に広がる原初の森が、懐深く万物の命を育んでいる。

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<ブナ林散策道>
暗門川近くの森は散策路となっており、保水力豊かなブナ原生林に育つ多様な高山植物を観察しながら、山歩きを楽しめる。

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<曲がり渕>
暗門の滝トレッキングコースの途中にある風光明媚なポイントでひと休み。白神山地の湧き水は、ミネラル分豊富な超軟水として知られる。

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<ブナの原生林>
ヨーロッパや北アメリカなどにも広く分布するブナだが、ほとんどは伐採や植林が施されている。白神山地ほど広大で手つかずの原生林は世界的にも貴重。

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<暗門の滝>
白神山地随一の景勝地であり、3つの滝が点在する。ブナが生い茂る峡谷を白い水しぶきがつんざく様子は清涼感たっぷり。

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