資産を築くための「4つの条件」とは?

  • 文:川畑明美

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資産とは、保有しているだけでお金を生み出すもの。会社員でも1億円の資産を作る人もいるが、資産を築くには4つの条件が必須だ。bymuratdeniz-istock

なにもしなくても、あなたの元にお金を運んでくれるもの。それが「資産」だ。もしも資産1億円あれば、年率3%で300万円の収入ができる。資産を築くのに必要な4つの条件について解説しよう。

条件その1
収入に見合った支出を維持する

家計は収入と支出から成り立っている。収入が支出を上回ることが保証されている、なんてことはない。多くの人は、収入が上がると支出も増えてしまうのだ。お金があれば、すべて使い切るのが人間の性といえよう。家計の管理は、支出の目的と優先順位を明確にすることが大切だ。最優先しなければならないのは、税金と社会保険料(健康保険料や年金保険料など)だ。


会社員の場合ほとんどの人が給与から天引きされるが、固定資産税など別に納税するものもある。ここも予算化しておくことだ。税金の支払いが遅れると延滞税がかかる。それを避けるためにも税金や社会保険料の支払額は確保しておくことだ。


次に優先しなければならないのは、ローンやクレジットなどの借入金の返済、家や駐車場の賃借料などだ。これらは借りる時点ですでに支出が確定している。ローンやクレジットの支払いが遅れると信用度が下がり、その後のローンやクレジットの使用に制限がかかる。まず、滞納すると余分なお金が必要になってしまう支払いを優先するべきだ。

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趣味や娯楽で使えるお金を決めておく

税金や社会保険料、ローンやクレジットの支払いの残りから、食費や水道光熱費などの生活を維持するためにどうしても必要な資金を確保しよう。これらの資金は毎月変動するので予算化してヤリクリする部分だ。そして、将来に予定されているライフイベントや万が一に備えた貯蓄額を決めておく。貯蓄額が決まったら、毎月先取り貯金をしよう。


その支出と貯蓄を差し引いた金額の範囲で、趣味や娯楽などに使える額を考える。趣味や娯楽に使える金額が少ない場合は、生活に必要な支出を見直すことだ。また、旅行などの趣味の場合は、少額を旅行費用として毎月分けて確保しておくといい。1年に1回の楽しみのためにコツコツ準備しておこう。収入に見合った金額で生活するには、自分の意思や判断にもとづき、責任をもって行動することが大事だ。自らの行動がもたらす結果に責任を負う事ができる人が、資産を築けるのだ。

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条件その2
本業のスキルを高めて給与を増やす

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年収を上げる方法は、転職して収入を上げる、残業をする、出世して管理職になるなどいくつかある。takasuu-istock

資産を築くには、収入を上げることも大切だ。サラリーマンとして年収を上げる方法は、いくつかある。転職をして収入をアップする、残業をして残業代を増やす、出世して管理職になるなどだ。まず転職をして収入をアップすることを考えてみよう。転職者の3人に1人が入社後に後悔し、転職を繰り返すこともある。転職時は「給料をアップしたい」「残業の少ない会社に就職したい」など1つ2つのポイントだけに焦点を当てるのではなく、情報収集をしっかりすることだ。


次に、たくさん残業して残業代をたくさんもらうという考えだが、これは体力のある若い頃にしかできないということを意識して欲しい。やみくもに残業するのではなく、他の同僚から頭一つ抜きんでるような目標をもって残業することだ。最も効率が良いのは、会社で出世して管理職になること。出世すると基本給も上がるし残業代の単価も上がる。

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資格を取得するだけでなく実務経験を積む

出世のためには、会社での自分の評価を上げることも意識しよう。働いている職種によるが、基本的には実績を作って、会社や上司からの評価を上げることになるだろう。会社によって評価制度が違うので、何をすれば自分の評価につながるのかを考えて行動しよう。営業職の場合は、成績が見えるので比較的アピールしやすい。それ以外の業種の場合は、社内の目に見えない評価を追っていくことが大切で、社内営業も重要になってくる。


社内営業といっても、上司に媚びを売るのではない。「この人は仕事できるな」と思ってもらうということだ。コミュニケーション能力が必要になる。あまりコミュ力が高くないと感じるならば、資格を取得するのもよいだろう。ただし、資格を取得しても今の会社で活かせる資格でないといけない。資格を取得して経験を積んでプロとして認められることが大切だ。資格保有者であり実務経験があることで、あなたの強みに変わるのだ。転職する時にも資格+実務経験は、とても有利だ。

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条件その3
目先の値動きや利益を追わず長期投資する

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資産1億円を築く人がやっているのは「長期投資」だ。20年30年と続ければ複利効果が効いて、大きく増える。MarsYu-istock

投資信託や株などが値上がりすると、売却して利益を確定したくなるものだ。頻繁に売買を繰り返えす投資方法もあるが、1億円など多額の資産を形成できる人に共通するのは「長期投資」だ。なぜかというと「複利」の効果が得られるからだ。複利とは、運用で得た利益を元本に加算して運用(再投資)することをいう。


利益を元本に加算するので、雪だるまをつくる時のように利益も含めて雪のボールが大きくなるように増えていく。複利の効果は5年くらいからあらわれ、10年以上経過すると、とても大きく増える。株式投資も配当金を使わずに貯めておき、その配当金でまた株を購入することで複利効果は得られる。ただし株式投資や投資信託など価格が変動する金融商品の場合、複利の計算は5%や10%の数字を単純に当てはめてもその通りには行かないことも考慮しよう。

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複利効果を鵜呑みにはしない

株式投資や投資信託などの金融商品は、価格が変動する。20年間にわたって毎年必ず5%ということは、ないのだ。20%くらい下がることもあるし、20%くらい上がることもある。短期的には大きな下落が起こることもあり得る。収益率が一定でないからこそ高いリターンが期待できるのだ。それがリスクプレミアムだ。ただし、どのくらい増えるのか大まかに試算するために5%から7%くらいで複利効果の試算をするのはいいだろう。


注意して欲しいのは、マイナスになっている期間が長ければ複利効果がマイナスに働きダメージが大きくなるケースもあることだ。そのリスクを理解して欲しい。例えばコロナが原因で経営が立ち行かなくなれば株価が上がることも難しくなる。そういうリスクを考慮すべきだ。

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条件その4
年金や各種制度をうまく利用する

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税金が非課税になる制度や年金制度について詳しくなろう。仕組みが複雑でも知っているのと知らないのとではその後の資産形成に大きく差が付く。takasuu-istock

筆者は2010年4月からメールマガジンを配信しているが、その当時からiDeCoについて紹介してきた。その当時はiDeCoなんていう愛称はなかったので「個人型の確定拠出年金」と紹介していた。紹介する度に「どうしてもっと早く教えてくれなかったの?」と、言われたものだ。会社員が節税でき自分の年金を自分で作ることができる制度は、画期的なのだ。2017年からは、専業主婦でも公務員の方でも加入できるようになり、ほぼ全ての現役世代が加入できるようになった。NISAと違って金融機関が宣伝広告をしないので知名度が低かったのだ。


2014年に始まったNISA制度の時は、筆者もTV取材を受けた。それほど注目された制度だった。NISA制度ができた時に金融機関は一斉にCMを流し、さかんに投資の勧誘をした。筆者も投資が身近になるのは良いことだと思っていたのだが、NISAで失敗した方の相談がとても増えたのだ。多くの相談者は、金融機関でお勧めの投資信託を購入してNISAをはじめたら「投資信託がマイナスになってしまった」という相談だった。


勧められて購入した銘柄を見ると、手数料がたっぷりのっているモノばかりだったのだ。もっと手数料の低い投資信託はないか調べてみると、手数料の少ない投資信託は、金融機関の商品一覧には、ほとんど見当たらなかった。鳴り物入りではじまったNISA制度だが、フタを開けてみたら金融機関の儲けの手口になっていたのだ。もちろん全ての金融機関が、儲けの手口に使っていたのではないが、金融機関に有利な投資信託が多かったのは事実だ。宣伝につられるのではなく、しっかり制度や口座を開く金融機関を調べて欲しい。

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30代40代から年金制度をよく調べる

iDeCoやNISAなどの非課税の制度はもちろんのこと、年金制度もよく理解することは資産を築くためにとても大事だ。年金の1階部分である国民年金は、誰もが加入できる年金だが、2階部分から会社員と個人事業主では加入できる年金が変わる。自営業者は、国民年金基金、会社員は厚生年金になる。3階部分はお勤めの会社によって違い、企業型の確定拠出年金や確定給付型の企業年金、年金払いの退職給付などがある。お勤めの企業にそういった年金制度がない場合や自営業者はiDeCoで補うこともできる。


これらの年金制度でご自身で支払った掛金は、所得控除になるので節税にもなる。年金制度をよく理解していれば、自分の老後資金を貯蓄することで節税も可能になるのだ。お金のことは、知らないと損することが多い。30代40代から意識していればかなりの節税になる。ご紹介した4つの条件を守って、資産をコツコツ増やしていけば資産1億円も夢ではない。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/