フルーティーなシングルモルトウイスキー「グレングラント」。その真髄を学ぶテイスティングイベントが開催

  • 文:青山 鼓

Share:

1840年に、スコットランドのスペイサイドに蒸留所を築いてから、上質のウイスキーを作り続けている「グレングラント」。その味わいは、多くの人がスコットランド産のウイスキーと聞いて思い浮かべるスモーキーな風味とは対極をなし、フルーティーでエレガントという特徴をもつ。この華やかなウイスキーの愛好者は多く、イタリアでは2020年度に売上No.1を記録した。そんな「グレングラント」の味わいを鮮明にプレゼンテーションする、テイスティングイベントが開催された。

イベントで供されたウェルカムドリンクは「グレングラント アルボラリス」でつくるハイボール。蒸留所設立180年を記念してリリースされたこのウイスキーは、シェリー樽で熟成された原酒が持つ、甘くてフルーティーな特徴が際立つ。シングルモルトを飲み慣れた向きにも、これからシングルモルトを知りたい人にも親しみやすいキャラクター。ソーダ割りにすることで、木漏れ日のような明るいニュアンスが強調され、気持ちを爽やかにリセットしてくれる。

ブランドアンバサダーの小川尚人によるスコッチウイスキーの解説、そしてブランドのヒストリーの紹介を経て、「グレングラント 10年」「グレングラント 15年」そして「グレングラント 18年」を順に試飲した。

_MG_0441.jpg
飲み方により変わるグレングラントのさまざまな表情を解説する、ブランドアンバサダーの小川尚人。
_MG_0037.jpg
フルーティーで爽やかなグレングラントは、陽の光もよく似合う。デイタイムに楽しむという新しいスコッチの魅力を教えてくれるシングルモルトだ。

「グレングラント 10年」はストレート、そしてオンザロックで。深みのあるモルトの香りをストレートで感じたのちに、オンザロックでいただく「グレングラント 10年」からは、フレッシュな果実の香りも主張する。また、このイベントでは飲み方の違いによる表情の変化だけでなく、フードとのペアリングによる味わいの違いも感じて欲しいとの意図から、特別メニューもあわせて提供された。「グレングラント 10年」にあわせるのは、トリュフチョコに山椒をふりかけたもの。キレのあるスパイスとチョコレートの甘味が、複雑に続く香りの余韻を、ひときわ長く感じさせてくれた。

_MG_0151.jpg
この日のために特別に作られたオリジナルのフード。文中に登場するもののほか、定番のアーモンドやくるみも。

「グレングラント 15年」は、マスターディスティラー(蒸留責任者)であるデニス・マルコムが「この原酒は15年の熟成を経てひとつのピークを迎えた」と語るとおり、ストレートで口に含むと「グレングラント アルボラリス」や「グレングラント 10年」よりもさらに凝縮された芳醇な味わいが広がる。そして、常温の水と1:1で割ったものをいただくと、デリケートなフローラルの香りやキャラメルを思わせる甘い香りが際立つ。ストレートには鴨のパストラミ、そしてトワイスアップにはさつまいものグラッセをあわせて。鴨の油分は「グレングラント 15年」の口当たりを柔らかく、かつ味わいの残響を心地よくさせ、また、甘みのあるさつまいものグラッセが「グレングラント 15年」のハチミツやバニラのニュアンスを強調するという興味深い体験となった。

そして最後にいただいたのが「グレングラント」の最高峰たる「グレングラント 18年」。グラスに注がれた液体は明るい黄金色で、深みある輝きを見せる。ストレートで口に含めば、さらに複雑で重層的な味わいと、長い甘みの余韻を感じる。少しだけ加水すると、芳醇なフローラルの香りが広がり、そこにオークの香りが。あわせるフードは白インゲンの甘煮にピンクペッパーとディルを飾ったもの。「グレングラント 18年」の長く残る甘みをさらに強調しながら、スパイスを効かせた、お酒のキャラクターに寄り添うフードが、グレングラントの余韻を堪能させるもの。

加水により際立つ香りなど飲み方による変化、塩味、甘み、脂、スパイスといった要素が織りなすフードとのペアリングの妙。飲み比べることでプロダクトごとの違いも明確に理解でき、なによりもそれらの豊かな表情を存分に感じることのできるひとときだった。