「ホワイトジーンズ」はいつ登場し、定番アイテム化していったのか?

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一

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モデル名は「503 レギュラーストレート」。バランスよく合わせやすいレギューラーストレートで、足元まですっきり見せるシルエットが人気の秘密。素材はコットン98%×ポリウレタン2%で、伸縮性もある。日本製。¥9,790(税込)/エドウイン

「大人の名品図鑑」デニム編 #4

スポーティなファッションの流行であまりスポットライトが当たらなかった「デニム」が最近、復活の兆しを見せている。考えてみれば「デニム」は永遠の輝きをもつもので、流行やブームとは異なるポジションにあるものだ。今回はそんな「デニム」の名品の魅力を追う。

もはや年間を通してはける定番となったホワイトジーンズ。どんなトップスにも合い、清潔感を感じさせるデニムアイテムの筆頭だ。ドレッシーにもカジュアルにも装うことができる。イタリア人たちはジャケットにタイドアップして、革靴とホワイトジーンズを合わせておしゃれを楽しむ。最近では男性よりも女性がホワイトジーンズをはくケースをよく目にする。

ではデニムの歴史の中で、ホワイトジーンズの登場はいつごろだろうか。

そもそもブルージーンズはアメリカ西海岸のサンフランシスコで生まれて仕事着のひとつとして着用されるようになったが、なかなか東海岸の人たちには普及しなかったと聞く。第二次世界大戦前はワークウエアの印象が強く、戦後になってもマーロン・ブランド主演の映画『乱暴者』(53年)に見られるように、ジーンズは不良少年がはくものと見られていた。そんな印象を払拭するべく、リーがホワイトジーンズの先駆けである「リー ウエスターナー」を発売したのが1959年。続いてリーバイス®︎は、61年に「ホワイト リーバイス」というラインを発表した。これはホワイトデニムだけでなく、ノンデニム、いわゆるブルーデニム以外のカラーを揃えたラインだったが、特に人気を集めたのは通称ピケ素材を使った「カリフォルニアンズ」。どちらのジーンズも純白に近いものではなく、生成りに近いカラーだった。

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ホワイトジーンズはいつから浸透したのか

ホワイトジーンズの登場は、一説によると東部の学生たちにブルージーンズが浸透しなかったことも理由だと言われている。60年代のアメリカ東海岸の名門校であるアイビーリーグの学生たちを撮った『TAKE IVY』(ハースト婦人画報社)という本がある。写真を見ると、学生たちの多くがチノーズやカーキのジーンズをはいている。ブルージーンズは極めて少数派だ。アイビーリーグには厳格なドレスコードがあったのかもしれない。

『ジーンズ物語』(三井徹著 講談社現代新書)には、「60年代のいつの時点のことかはわからない」と断った上で、南部ルイジアナ州のバプティスト派の大学が出した本について紹介されている。「大きな勝利を勝ちとったのは、寮の外でもジーンズとショーツをはいてもいいと言うことが許可された時だった」とある。60年代におけるアメリカの学生たちの暮らしぶり、スタイルがわかる一節だ。ちなみに、デニム編の第1回で紹介した映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19年)でも主人公のひとり、クリフ(ブラッド・ピット)は前半のはき慣れたブルーデニムから変わって、後半はホワイトデニムの上下で登場する。60年代のデニムファッション移り変わりをよく再現している映画ではないだろうか。

その後60年代も後半になると、ヒッピームーブメントを受けてジーンズのデザインは大きく変化する。シルエットもストレートからフレアやベルボトムなども登場し、はき込んだ色合いのデニムや、ときにはパッチワークを施したジーンズなども登場する。そういう意味ではホワイトジーンズはその狭間に登場したデニムと見てもいいだろう。しかし清潔さを備え、オールマイティに使える魅力はいささかも薄れてはいない。もっと注目していい一本と言える。

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エドウインの名品「503」

今回紹介するホワイトジーンズは日本を代表するデニムブランド、エドウインの製品だ。

エドウインは1961年に東京で創業されたブランドで、ブランド名はデニム(DENIM)の「D」と「E」を入れ替え、「NIM」を反転し、「WIN」にしたアナグラムだと言われている。創業当時、固い、縮む、色落ちするアメリカ製のジーンズに対して、日本人の体型に合ったはきやすいジーンズづくりを目指したことで知られ、日本製の名品デニムを次々とヒットさせた。

この「503 レギュラーストレート」もそんなモデルのひとつで、1997年の登場以来、累計2,800万本を売り上げた同ブランドを代表する名作ジーンズ。この「503」に課せられたテーマは、“常に最新の技術やトレンドを取り入れながら、日本人の体型やライフスタイルにマッチしたジーンズを生み出すこと”だった。これまで幾度ものバージョンアップを重ね、シルエットもバリエーションを拡大してきたが、「レギュラーストレート」は「503」の出発の起点になったモデル。進化する「503」らしく、今回紹介するホワイトジーンズでは本格的なホワイトデニムを採用しながらも、素材にポリウレタンを混紡し、伸縮性が備わりはきやすさがアップしている。日本人の体型を研究し尽くしたシルエットに加え、快適ではきやすいという特徴も加わった最新の「503」。着こなしのなかで白が映えるこれからの季節、使いでがある万能な1本になるはずだ。

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バックポケットにはブランドのアイコンでもある「W」のステッチ入り。品番が刻印されたレザーパッチのデザインも一新され、「503」がアイコン的にデザインされている。

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腰裏には日本国旗をイメージしたタグが縫い付けられている。素材から縫製まで日本で行われている。

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こちらがホワイトジーンズの先駆けとなった「リー ウエスターナー」。素材はコットンサテンで光沢がある。ジーンズ以外にジャケットも製作され、人気を集めた。ともに参考商品。/リー

問い合わせ先/エドウイン・カスタマーサービス TEL:0120-008-503

https://edwin.co.jp

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