音と光を操るブライアン・イーノによる至高の体感型インスタレーションが京都で展開!

  • 写真・文:中島良平

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『77 Million Paintings』 モニター上で自動生成される画像の動きと、複数の音のレイヤーをずらしながら構築される音楽によって、無限に近い音と光の組み合わせを実現する光と音のインスタレーション作品。会場ごとに設えを変え、雰囲気のまるで異なる空間が生まれる。Photo: So Hasegawa

アンビエント・ミュージックの祖として知られるミュージシャンで、ヴィジュアルアーティストとしても大きな影響力を持つブライアン・イーノの個展『BRIAN ENO AMBIENT KYOTO』が京都中央信用金庫 旧厚生センターでスタートした。建物を一棟丸ごと使用し、計4作品の音と光のインスタレーションを出品。音と光、闇に全身で没入できる至極の体験がそこに生まれる。

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会場入口。京都中央信用金庫 旧厚生センターはこれまでにもKYOTOGRAPHIEでも会場になるなど、古い信用金庫の特徴的な空間が多目的に活用されてきた。

会場に入ると、1階展示室の作品『77 Million Paintings』へと促される。“Visual Music(視覚的音楽)”として着想したこの作品は、13台のモニターが組み合わさり、途絶えることなく変化する視覚表現と音の組み合わせによって、無限に絵と音を流し続けるインスタレーション作品だ。夜の庭園を想起させる木の柱と小さな盛山の設えも、光の移ろいに合わせて表情を変え、空間では唯一無二の瞬間が更新され続けていく。

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『77 Million Paintings』展示空間に設えられた小さな盛山。

次に向かうのは、3階の『The Ship』。展示空間のカーテンを抜けると、そこには真っ暗な空間が広がる。部分的に光を当てられてグレーに浮かび上がる柱に目を凝らすと、そこにはクラシックなギターアンプやスピーカーなどが設置されていることがわかる。室内各所のスピーカーが音源となり、ときには響き渡る環境音や電子音が、ときには凶暴なギターやドラムの音、感情の奥に訴えかけてくるようなヴォーカルが流れ、空間には緊張感が張り詰める。「タイタニック号の沈没」「第一次世界大戦」「傲慢さとパラノイアの間を揺れ動き続ける人間」をコンセプトの出発点とした作品だという。音の強さと会場の暗さが結びつき、恐怖心を煽るような空間だが、心がざわついてくると離れがたくなってくる。

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『The Ship』 会場内で立つ位置によって聞こえる音が変化し、真夜中の航海で見る夢を想起させる空間体験が生まれる。

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会場全体をつなぐオーディオ作品も空間に作用する。

3階の別空間には、『Face to Face』という世界初公開作品も展示されている。ベースとなっているのは、実在する21人の人物のポートレイト。特殊なソフトウェアによって画像はひとりの実在する顔から別の顔へとピクセル単位でゆっくりと変化していく。ランダムなパターンと組み合わせによって予期せぬアートを生み出す可能性を追求したこの作品では、実在しない新しい顔を毎秒30人、合計すると36000人以上、21人の顔から生み出すことに成功した。

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『Face to Face』 光の描写が幾何学な色彩表現や光と闇のコントラストから展開し、ついにモチーフとして人の顔も扱うようになった。Photo: So Hasegawa

『Face to Face』の部屋を出ると、廊下もシームレスで音楽つながっていることに気づくはずだ。『The Lighthouse』というオーディオ作品を採用し、『77 Million Paintings』『The Ship』以外の2作品展示室、会場内の通路や階段、化粧室などもSonosスピーカーを通じて音響でつなぐ全館型のインスタレーションとなっているのだ。

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3階通路。聞こえてくるのは『The Lighthouse』のサウンド。

2階に下り、4作品目となるのが、LED技術を駆使した光の作品『Light Boxes』。光りながら色彩は変化を続け、その組み合わせの移ろいによって光が空間を変容させ続ける幻想的な作品だ。3台のボックスから放たれる鮮やかな光の色には中毒性があり、次に来る色を見逃したくないとやはり空間から離れられなくなってしまう。展示全体を通して、音と光が絶え間なく変化するインスタレーションが展開するこの展示。歩きながら空間によって変わる音と光を体感するのは刺激的で、また空間のソファに腰を下ろして身を委ねたときの恍惚感ときたら…! 禁断のインスタレーションを味わいに、京都を目指してほしい。

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『Light Boxes』 光りながら留まることなく色彩が変わり、その組み合わせは移ろい続ける。個別のボックスが作品であると同時に、空間自体がまた光の箱として作品となっている。
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1階のENOSHOPでは、オリジナルTシャツや図録に加え、再発レコードなども販売されている。

BRIAN ENO AMBIENT KYOTO

開催期間:2022年6月3日(金)〜8月21日(日)13:30〜16:30
開催場所:京都中央信用金庫 旧厚生センター
京都府京都市下京区中居町七条通烏丸西入113
開場時間:11時〜21時
※入場は閉館の30分前まで
会期中無休
入場料:一般 平日¥2,000、土日祝¥2,200
※公式サイトにて日時指定観覧券が購入可能
https://ambientkyoto.com/