思い出や記憶を鮮やかに可視化する、和菓子作家の感性【坂本紫穗インタビュー】

  • 動画ディレクション:TISCH(MARE Inc.)
  • 動画制作、撮影:仲谷譲
  • インタビュー、文:倉持佑次
  • スタイリング:古牧ゆかり
  • ヘア&メイク:奥平正芳

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28歳になる頃、和菓子の夢を見たことがきっかけで和菓子作家の道へ飛び込んだ坂本紫穗は、独自の感性とアプローチによって、多くの人を甘味の世界に誘うクリエイターだ。「目指しているのは心でキャッチできるような和菓子」という彼女が手がける作品は、どのような魅力を秘めるのか? その創造の源に迫る。

オリジナルの和菓子を数多く生み出してきた坂本は、色とりどりの作品一つひとつにユニークな名前を添えている。例えば、桜の花びらを模した「夢見草」、雨粒を表現した「ひとしずく」、眩しく輝く真夏の暑い日をイメージした「陽炎」といったように。それらは日本の四季からヒントを得ているものが多いというが、目にした光景そのものを再現することより、そこで得た体験からどのような印象を受けたかという点を重視して和菓子づくりの表現を探るのが、坂本流だ。

「桜の和菓子をつくろうと思っても、実物の桜がいちばん綺麗で、本物の美しさには敵わない。では、それを和菓子にする意味はなんだろうというようなことをいつも考えます。そこで、作り手の解釈や捉え方、私なら桜をこう愛でるという気持ちを和菓子に込めるのです。見た目だけでなく、和菓子になるまでのストーリーを大切にすることで初めて、人の心を動かすものが完成するのだと思います」

皿の上に乗る小さな和菓子は、坂本の宇宙を通して存在しているもの。そんな風に考えると、繊細で優しい味わいの奥に、さらなる和菓子の魅力を感じることができるはずだ。空も、風も、花の色も、坂本の手にかかれば思い出や記憶はたちまち美味しい和菓子となり、幸せな時間を味わわせてくれる。

衣装協力:白いドレス¥81,400/SATORU SASAKI(ザ・ウォール ショールームTEL:03-5774-4001)、YGのイヤカフ¥67,200/トーカティブ(トーカティブ 表参道TEL:03-6416-0559)、白いVネックドレス¥198,000/Co(イーストランドTEL:03-6231-2970)、YGのイヤカフ¥57,200/トーカティブ(トーカティブ 表参道TEL:03-6416-0559)、黒いドレス¥115,500/HARUNOBUMURATA(ザ・ウォール ショールームTEL:03-5774-4001)、レースアップブーツ¥181,500/セルジオ ロッシ(セルジオ ロッシ カスタマーサービスTEL:0570-016600)、YGのバングル¥209,000/トーカティブ(トーカティブ 表参道TEL:03-6416-0559)