スタイリストの私物から超レアスニーカーのデッドストックを発掘! その価値は?

  • 文:小暮昌弘
  • 写真:宇田川淳

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友人のスタイリストの実家にあったAJ1。2足とも94年にジョーダンの引退後に初めて復刻されたモデルで、右の「シカゴカラー」は数度履いているが、左の「ブレッドカラー」は、未使用、紐さえ通していない。ボックスやカードも初めての復刻を記念した特別な一足。

ファッションや社会のカジュアル化でますますその重要度を高めているスニーカー。「空前のブーム」と評されるほど、流行は加熱気味。スポーツブランドだけでなく、ラグジュアリーブランドまでスニーカー戦線に加わり、加えてインターネットなどでスニーカーの二次流通市場が出来上がり、“定価よりも時価”で買う人も少なくない。

最近、Pen Onlineの記事のためにあるスニーカーを探していた。米プロバスケットボールリーグNBA史上最高のプレイヤーと言われたマイケル・ジョーダンの名前を冠したナイキの「エア ジョーダン」がそれだ。ファーストモデルが発売されたのが、ジョーダンがシカゴ・ブルズに入った1985年。履いていたのは、「エア ジョーダン1」(以下AJ1)というモデルだ。昨年春、実際に彼が当時履いていたサイン入りの「エア ジョーダン1」が競売にかけられ、56万ドル(約6,000万円)で落札されたというニュースが世界を駆け巡った。今やスニーカーは投資対象にもなっている。

もちろん私が探していたのは当時のAJ1ではなく、現在、復刻して販売中のものだが、なかなか目当てのカラーが見つからない。サンプル品も借りられず、写真に収めることも難しそうな状態で一時、紹介することも諦めていた。

そんな時、朗報が舞い込んできた。友人のスタイリストがファーストモデルではないが、復刻されたモデルなら持っているというのだ。写真を送ってくれて、状態もかなり良さそうに見える。

「シカゴカラーのものは数回履いているが、ブレッドカラーは一度も履いていない、いわばデッドストックものだよ」と友人。

「ブレッド(BRED)カラー」とは、ブラックとレッドの配色でまとめられたモデル。ジョーダンがこのAJ1で試合に出場すると当時のNBAの規則(ユニフォームにふさわしい靴をはく、着用するシューズは70%以上ホワイトであることなど、諸説ある)に違反していると、1試合あたり5,000ドルの罰金を支払わせたいわくつきで、スニーカーヘッズの中でも特に人気が高いモデルだ。

さっそく撮影させてもらうために送ってもらったところ、2足のAJ1は、1985年発売後、初めて復刻された1994年製のモデルだった(冒頭の写真)。「ブレッドカラー」は完全に新品状態。ボックスも、シューズが包んだペーパーも、AJ1にまつわるエピソードが書かれたカードも買ったままの状態で保存されていた。

撮影終了後、これはそうとうな価値がある、オークションに出品すれば高値で取り引きされるはずという話で盛り上がり、友人の許可を得て、最近日本でも人気を集めているモノの株式市場「StockX」(ストックエックス)に価値を聞いてみた。

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レアスニーカーの価値はいかに

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StockXのトップページ

StockX」はスニーカーやアパレル、コレクターアイテムなどを扱うオンラインマーケットサービスで、株式市場の仕組みとデータの力を利用した新しいEコマース。出品者が提示した金額で購入するか、あるいは購入者が金額を設定してオファーすることができる。価格や過去の販売実績などで、データも株式市場のようにリアルタイムで更新される。全世界で毎月3000万人以上のユーザーが訪れ、200以上の国でサービスは提供されていると聞く。さっそく、友人のAJ1の価値をStockXのシニアエコノミストであるJesse Einhornに聞いたところ、以下のような回答をもらった。

Air Jordan 1 Retro Bred」(同サイトでは友人のモデルをこのように表現する)は、Air Jordanシリーズの中でも最も象徴的な配色のひとつとして、スニーカーヘッズの間で絶大な人気を集めています。93年のジョーダン引退後、この配色は何度か再販されていますが、94年に発売されたオリジナルモデルの『デッドストック』は時間の経過とともにますます貴重になっており、StockXでの平均再販価格は上昇を続けています。またESPNの番組『The Last Dance』の放送後、1994年版だけでなく、2001年版、2013年版、2016年版のAir Jordan 1 Retro Bredへの関心がStockXで急上昇したことも注目に値します」

そして気になるこのAJ1StockXでの平均販売価格は、7月1日時点2,845ドル(USD)、日本円で約31万円。過去12ヶ月間では2,293〜3,307ドル(USD)の範囲で取り引きされているという。何でも「エア ジョーダン」シリーズの中でも日本ではAJ1の人気が特に高いと返答があった。

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Air Jordan 1 Retro Bred」の取引価格のグラフ。20年頃から上昇しているのがわかる。StockXより

人気のモデルとは言え、27年前のスニーカーがこんなにも高い価値を持つことに驚いた。友人にそれを伝えると「売る気はないけれどね」と笑いながらも、満更でもなさそう。

あなたの家に眠っているスニーカーももしかしたら、とんでもない“お宝”かもしれない。一度靴箱の中を探してみてはどうだろうか。