「フルーツ牛乳ナメてるだろ」。『おいしい給食 season2』8話レビュー

  • 文:絶対に終電を逃さない女

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©2021「おいしい給食」製作委員会

絶対に終電を逃さない女による、ドラマ『おいしい給食 season2』全話レビュー連載。今回は第8話「ミルクを制する者」を振り返る。

給食といえば、牛乳。子どもの頃は毎日の牛乳に飽き飽きしていた記憶があるが、大人になったいま、『おいしい給食』を見ているとあの冷えた瓶牛乳が恋しくなってくる。8話はそんな牛乳にフォーカスした回だった。

午前中、3年1組は社会科見学のため牛乳工場へ。最後に工場の人ができたての瓶牛乳をプレゼントしようとするも、「いつもの牛乳じゃん」と生徒たちが駄々をこねた結果、特別にフルーツ牛乳をもらえることに。内心同じように思っていた甘利田も、大人気なく生徒たちを押しのけてフルーツ牛乳をゲット。そんななか、神野はただ一人、プレーンの牛乳を選ぶ。

教室へ戻った神野に、一番後ろの席からガンを飛ばすのは、1組きっての不良少年である的場くんだ。休み時間、ノートにきなこ揚げパンと牛乳瓶の絵を描いている神野を、わざとらしく椅子を強めに引くヤンキー仕草をしながら、的場くんとその子分たちが取り囲む。「お前さあ……」とガンを飛ばし、的場くんが言う。

「フルーツ牛乳ナメてるだろ」

爆笑してしまった。フルーツ牛乳といえば、よくヤンキー漫画などで「フルーツ牛乳買ってこいよ」とヤンキーがパシリに命令しているイメージがある。的場くんにとっては、不良アイテムの一つであるフルーツ牛乳を否定された気がして悔しかったのだろうか。

「フルーツ牛乳より普通の牛乳選ぶ奴なんてこの世にいねーんだよ」

「好みは人それぞれだよ」

「いーや違う。転校して来たときからそうだ。なにかというと自分は人と違っているみたいなふりして。そうじゃなきゃ辻褄が合わないだろ。だってフルーツ牛乳だぞ!」

とんだ言いがかりだ。神野はただただ、給食が好きなだけのはずなのに。学校という空間は、みんなと少し違うというだけで何かと馬鹿にされたり因縁をつけられたりするものである。『おいしい給食』を観ていると、ついついノスタルジーに浸って中学生に戻りたい気分にもなるが、学校のこうした理不尽で窮屈な側面もさりげなく思い出させてくれるところがまた良い。

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オムレツではなく実は…?

神野以外フルーツ牛乳という異例の給食の時間がやってくる。7話では生徒たちが校歌を歌う甘利田を見ていたが、今回は何事もなかったかのようにまったく見ていない。みんなフルーツ牛乳に夢中なのかもしれない。しかも月に一度の「お楽しみデー」だ。きな粉揚げパンに、シークレットメニューのオムレツとババロア。そしてフルーツ牛乳。

甘利田は前菜としてサラダを先に食べてから、「学校という管理空間に風穴が空いた気がする」と、フルーツ牛乳と揚げパンという組み合わせの背徳感を楽しむ。ふと神野に目をやり、「あの忌まわしき蓋との格闘」の末に勢い余って牛乳に指を突っ込んでしまったのを見るやいなや、「来たーー!!」と大喜び。的場くんと同レベルの幼さである。

だがここから甘利田は追い込まれていく。血糖値が上昇した甘利田がオムレツで中和しようとスプーンを入れると、それはオムレツではなく、生クリームとバナナを包んだクレープ生地にいちごジャムがかかった「オムバナナ」だった。確かに給食には、「素人目に見ても栄養偏ってないか?」と思ってしまうような献立が時々あった記憶はあるが、果たしてここまで糖分過多な献立が存在するのだろうか。

一方の神野は、牛乳とサラダを中心に据えて、ローテーションしながら優雅に甘味を満喫していた。アレンジしないときはしない、という潔さ。これまで奇想天外なアレンジを施してきた神野だが、的場くんの言うような「自分は人と違っている」アピールではなく、あくまでも大好きな給食をより美味しく楽しく食べるためのアレンジなのだ。

「あいつ、まさか知っていたのか?」とお楽しみデーの情報漏洩を疑いつつも、なんとか完食する甘利田。史上最も苦しそうな回だった。よく見ると大量のきな粉がトレーに落ちており、普段の甘利田なら「大人」として気にしそうなところだが、そんな余裕もなかったのだろう。

給食後、甘利田から「なぜ白牛乳を選んだ?」と問われた神野は、真っすぐな目で言い放つ。

「白い牛乳が好きだからです。白い牛乳がない給食は、味気ないですから」

返す言葉が見つからない甘利田は、ラストで今回の戦いをこう振り返る。

「私は給食が好きだ。そのことに一点の迷いもない。だが、その思いを一途に実行するのは意外に難しい。今日、私は、神野ゴウの一途さに敗北した。奴は給食における牛乳の重要度を、誰よりも把握していた」

フルーツ牛乳に安易に飛びつき、失って初めて白牛乳の大切さに気付いた甘利田。それに対し、白牛乳といういつもそばにいる当たり前の存在の価値を理解していたからこそ、フルーツ牛乳に浮気しなかった神野。なんて、良い男なんだ……。

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第8話の放送(テレビ神奈川)は12/8(水)21時からスタート ©2021「おいしい給食」製作委員会

絶対に終電を逃さない女

1995年生まれ、都内一人暮らし。ひょんなことから新卒でフリーライターになってしまう。Webを中心にコラム、エッセイ、取材記事などを書いている。『GINZA』(マガジンハウス)Web版にて東京の街で感じたことを綴るエッセイ『シティガール未満』、『TOKION』Web版にて『東京青春朝焼恋物語』連載中。

Twitter: @YPFiGtH
note: https://note.mu/syudengirl

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第5話:冷やし中華を通じて、食文化の本質に迫る。『おいしい給食 season2』5話レビュー
第6話:謎の料理「インド煮」とは? 『おいしい給食 season2』6話レビュー
第7話:甘利田の奇行に生徒たちは気づいている? 『おいしい給食 season2』7話レビュー

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