フルモデルチェンジした新型ライカM11。副社長ステファン・ダニエルに開発秘話を訊いた

  • 文:青山鼓

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2017年に「ライカM10」が発売されてから5年。2022年1月21日に、ついにメジャーアップデートとなる「ライカM11」が発売される。伝統的なM型カメラのアイコニックな外観はそのままに、6030万画素の35mmフルサイズ裏面照射型CMOSセンサーを搭載。記録画素数を60MP、36MP、18MPの3種類から選べるというフレキシビリティを持ち、シャッタースピードも最高1/16000秒に対応する。また、往年のM型カメラの特徴であったベースプレートがないという点も、外観上の変更を最小限にとどめてきたM型カメラとしては、極めてセンセーショナルなポイントだ。これにより、バッテリーやSDカードの交換は非常にスムースになる。今回Penではライカカメラ社上級副社長 技術・オペレーション担当のステファン・ダニエル氏に話を訊くことができた。

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ライカカメラ社上級副社長 技術・オペレーション担当のステファン・ダニエル氏。ドイツのウェッツラーにある本社からZOOMにてインタビュー。

「他のカメラを考えることと、Mの後継機を考えることは全く異なります。なぜかというと、ヘリテージに重きをおかなければならないし、ルックスや触れたフィーリング、大きさといった制限事項が多いため、開発においてのフレキシビリティは非常に小さいからです。また、アナログ時代のレンズとの互換性も考えなければいけないので、できることは制限されています。そのなかで、Mの持つスピリットを最新の技術を使いながらいかに表現していくかを念頭におきながら、クルマに例えるならフルモデルチェンジを図ったのが、この“ライカM11”です」

「ライカM11」のプロジェクトが本格的にスタートした2018年から、どのような過程で開発が進められたのかを聞くと、まずはユーザーからのフィードバックを集めることだったという。

「まずはライカM10を使ったユーザーの声を注意深く聞き、何を好んでいて、何を好んでいないか、何を残して、何をチェンジするのかを分析しました。そのうえで、技術的なトレンドをどのように取り入れていくのかを検討します。開発における大きな柱はこの2点でした」

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ブラックペイントとシルバークロームのモデルが登場。ブラックペイントはマグネシウムとアルミニウムが採用されており、約530g (バッテリー含む)と軽量化されている。

ユーザーからのフィードバックを集めたところ、高画素数のセンサーの搭載、そしてベースプレートの廃止については、多くのリクエストが寄せられたポイントだった。

画素数の向上については、常にリクエストが寄せられるポイントでもある一方で、古いレンズは光学解像度の関係からあまり高解像度ではレンズの特性にはあわないという問題もあり、画素数はあげないで欲しいというリクエストも多かったという。

「ライカの場合ひとつのモデルサイクルが4年から5年と長いので、将来に渡って製品としての競争力を確保するために60MPを採用しました。写真にものすごく詳しい人は24MPでも18MPでも充分と認識されている一方で、みなが同じように玄人的な知識を持っているわけではありません。そして世の中では、画素数も昔ほど急激には上がらないにしても大画素数という傾向はしばらく続いているため、リスクヘッジ的な意味でも60MPを採用しました」

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意見がわかれた、ベースプレートを残すか否かの議論

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ライカカメラ社より提供された作例写真。6030万画素と大幅に高画素化された。

画素数を上げすぎないで欲しいというリクエストは、いかにも1952年からの歴史のあるM型ライカらしい。そして、その声は決して無視できるものではない。ヘリテージを重んじること、具体的に言えば1954年からのMのレンズが使えるということがM型ライカの大きな価値でもあるからだ。そこで、「ライカM11」では、36MPモード、そしてライカM9のセンサーと同じ18MPモードを用意し、往年のレンズにも対応できるようにした。

「解像度の向上だけでなく、ベースプレートを残すか、なくすかという点でも意見が分かれていました。Mを実用カメラとしてハードに使っている人にとってはバッテリーを外すためにアンダーパネルを外すのは手間である一方で、アナログ時代からMを使っているユーザーは底蓋を外すという手順を好んでいたことです。地域によっても傾向は異なります。実際的に考えるユーザーの多いアメリカと、トラディショナルなことを重んじる日本のユーザーとでは意見も違いましたが、今回は写真を撮るツールとして考えたときに早くバッテリーを交換できることのメリットを重視してこのような決定になりました」

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従来モデルでは、底面をまるごと外してバッテリーを取り出す伝統的な仕様だったが、新モデルでは写真中央のレバーによってバッテリー部分のみを取り外せるようになった。

本体の内側いっぱいのサイズの大きなバッテリーは容量1800mAh。従来よりもなんと64%の容量アップだ。

「“ライカM10”のバッテリーについては改善してほしいという声が多くありました。大容量のバッテリーを入れられるように、中身の構成を含めて考えて、ライカM10ではバッテリーの横までプリント基板が来ていましたが、ここを改善しライカM11では本体の内側いっぱいにバッテリーが収まるよう設計することができました」

実際に「ライカM11」を操作すると感じるのは、GUIの美しさだ。日本語フォントも改善され、メニュー画面は非常にクールにデザインされている。

「まずポリシーとして、ライカのユーザーはMだけではなくQやSLも持っているというケースがあるので、メニューにおいても常にライカのカメラを使っていることを感じさせるような統一感を持っておきたいということがありました。日本語のフォントは美しく感じられましたか? 私には日本語フォントの良し悪しはわからないのですが、日本語フォントについてもいままでフィードバックをいただいていて少しずつ改善していた部分です。日本の方にお褒めをいただいて非常に嬉しいです」

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スマホとの連携もブラッシュアップ

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デザイン面では伝統的なスタイルをほぼ踏襲し、操作性や性能が大幅にアップデートされた

日本には世界に冠たるカメラメーカーがあるなかで、と前置きをしながらダニエル氏は続ける。

「個人的な印象ですが、世界で一番、日本のユーザーがライカを高く評価してくださっていると思っていて、これは特別なことだと感じています。世界のほとんどのカメラが日本のカメラですから、日本製でないライカにエキゾチックなイメージがあるのかもしれません。それもただ違うということではなく、メルセデス・ベンツやポルシェのような印象を持たれているのかもしれません」

プレステージ感というものは、ただ高価なだけで得られるものではない。高価格に対して適正な上質感を味わえてこそ、ユーザーははじめて満足する。すなわち、見た目が美しいこと、機能的に充足できること、使い心地のいいこと。

「ライカM11」で撮影を行うと、充分な高速性能を備え、洗練されたメニュー画面をもち、ボタンはセンスよく配置されクリック感も心地よいことを知る。デジタル時代のワークフローに適応するスマートフォン連携用のアプリケーション「Leica FOTOS」も高速化され安定した転送を叶える。ひとつひとつが洗練されていることを存分に味わうことができるのだ。写真の写りが良いということだけでない部分でも、高いプレステージ性を備えている。

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スマートフォン連携用のアプリケーション「Leica FOTOS」で使える専用ケーブルが付属。無線でもスマホなどに転送可能だが、有線による高画素データの転送もスムーズに。

満を持して登場する「ライカM11」。新しくなったMをどんなユーザーに楽しんで欲しいと思っているかと訪ねると、ダニエル氏は笑顔でこう答えた。

「“ライカM11”は、いろいろな意味で過去のMのクセというものがなくなり、自然に使っていただけるカメラです。たとえばベースプレートがなくバッテリーやSDカードの交換がスムースになったことなども象徴的です。その点で、いままでMを使っていなかったユーザーの方にも違和感なく使っていただけるという要素が増えてきていると思っています。ですから、これまでMを使っていなかった、写真を愛する方々にぜひ一度手にとって使っていだきたいと思っています」

“A Legend Reinvented.” とは「ライカM11」に冠せられたキャッチコピーだ。意味するところは、“伝説の再発明”。1925年からの伝統を受け継ぎながらも最先端が同居する「ライカM11」。ぜひ五感で楽しんでほしい名機である。

ライカカメラジャパン

https://leica-camera.com/ja-JP

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