仮面ライダーは“とにかく、カッコよくない”、それでも長年支持される理由は? プロデューサーに聞く

  • 写真:齋藤誠一 
  • 文:幕田けいた

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仮面ライダー誕生に関わった先人たちのDNAを受け継ぐ、プロデューサー白倉伸一郎。平成仮面ライダーなど多くの作品を手がけてきた彼が語る『仮面ライダー』の魅力とは? 現在発売中のPen最新号『シン・仮面ライダー徹底研究』より抜粋して紹介する。

Pen最新号『シン・仮面ライダー徹底研究』では、映画『シン・仮面ライダー』の公開に合わせ、初期のテレビシリーズや石ノ森章太郎の功績を振り返りながら、庵野秀明監督をはじめとするクリエイターたちのこだわりや、仮面ライダーやサイクロン号などのデザイン、出演者たちの想いを徹底取材!

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プロデューサー
白倉伸一郎
1965年、東京都生まれ。90年、東映に入社。翌年 『鳥人戦隊ジェットマン』よりプロデューサー補として参加。92年の『真・仮面ライダー 序章』以降、平成ライダーを手がけ、成功に導く。近年では『仮面ライダーBLACK SUN』に続き、『シン・仮面ライダー』でもエグゼクティブプロデューサーを務める。

視聴者にもつくり手にも、みんなそれぞれが考えるライダー像があるんです

白倉伸一郎は、これまでオリジナルビデオ『真・仮面ライダー 序章』(1992年)を皮切りに、平成仮面ライダーなど多くの作品を手がけてきた。また、東映の上司であった渡邊亮徳のほか、原作者の石ノ森章太郎、生田スタジオの内田有作など、仮面ライダー誕生に関わった先人たちから薫陶を受けた最後の世代ともいえる。その白倉さんが考える『仮面ライダー』の魅力は、「とにかく、カッコよくないところ」なのだとか。

「泥臭いというか、仮面ライダーは殴る蹴るしかできないんで、地べたを這いずり回っているような感じがします。でも、それが心に刺さった気がするんですね」

白倉さんが東映に入社した頃、オフィスには企画書棚があり、『仮面ライダーX』以降の企画書が並んでいたという。勉強のために読んでみると、制作者側にはそれぞれに違う理想の仮面ライダーがあることに気付いた。

「あれだけ違ったライダーがつくられているのに、どの企画書にも『原点回帰』と書いてある(笑)。じゃあ制作者の考える『原点』とはなんだろう? 視聴者の思い描く仮面ライダー像だって人によってぜんぜん違います。つくり手は、曖昧模糊とした魅力を理解するためにメスを入れていかないといけないんですが、私の場合、やればやるほど悩みが深まっていく感じがしました」

白倉さんは、石ノ森に直接、仮面ライダーについて話を聞いたこともあった。しかし――。

「私が『ライダーはこうなんじゃないですか?』といっても、先生はニコニコと聞くだけで、『イイネ』とか『それはどうかな』と言う程度でした。でも何年か経って自分が成長すると、あの時の石ノ森先生の考えは、こういうことだったのかと気付いたりするんです。先生は、最初に仮面ライダーの漫画を描いた時、作者と読者が求めるものの違いに気付いていたと思います。だからドラマのつくり手にも、それぞれの仮面ライダーがあるということを認めていたのかもしれませんね」

そんな白倉さんは、どんなことを思いながら、新しい仮面ライダーを生み出しているのだろうか。

「仮面ライダーの50周年は、すべてが輝かしいわけではなく、苦節の歴史でもあります。関わった人たちの中には思いを実現できなかったスタッフもいる。ですから、なにかを引き継ぐにせよ、新しいものを取り入れるにせよ、キャラクターをつくった石ノ森先生や、いろいろな思いをもった制作者に対して責任を感じないといけない、と意識しています」

仮面ライダーのタイトルは軽々しく使えるものではない、という白倉さん。魅力と責任のバトンを受け継いだ最新作が『シン・仮面ライダー』なのだ。

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