玄武岩の迫力を伝える、ランドスケープの再整備「玄武洞公園」【今月の建築ARCHITECTURE FILE #06】

  • 写真:水崎浩志
  • 文:佐藤季代

Share:

写真のような柱状の割れ目が連なる様子は「柱状節理」と呼ばれる。日本各地にある「玄武岩」はこの洞の名にちなんで命名されている。

日本海を望む兵庫・豊岡市内にある「玄武洞公園」。京都から鳥取にまたがる山陰海岸ジオパークの一部に加盟認定されており、160万年前の火山活動によって流れ出たマグマが固まる際にできた“柱状節理”を見ることができる。2022年8月には、玄武岩の魅力をより体感できる屋外ミュージアムとしてリニューアルオープン。基本設計と全体監修をデザイナーの二俣公一が率いるケース・リアルが手がけている。

02_genbudo_park_toyooka_08.jpg
玄武洞を見上げる位置にブラスト加工で表情をつけたコンクリート製のベンチを造作。擬木柵は存在感を抑えた鋼製柵に変更。

---fadeinPager---

03_genbudo_park_toyooka_09.jpg
曲線と直線で構成された基壇を上空から見た写真。洞窟側にはコンクリートに濃いグレーの顔料を混ぜ、ベースラインを引き締めている。

園路や休憩棟の改装、サイン計画など多岐にわたる再整備では、敷地全体の色彩と素材を見直した上で必要な部分のみに手が加えられた。明るい黄土色の土間、擬木柵や樹脂の手すりといった自然風の造作物は、経年変化とともに馴染むコンクリートや鉄などの素材に変更。グレーを基調に、ノイズのないデザインに仕上げている。

なかでも整備の主軸となったのが、5つある洞のうち国の天然記念物に指定されている「玄武洞」と「青龍洞」だ。洞の前面に幾何学をベースにしたコンクリートの“基壇(ステージ)”とベンチを造作。境界となる人工物を対峙させることで、ダイナミックな巨岩を引き立たせ、自然と静かに向き合う場をつくり上げている。

04_genbudo_park_toyooka_24.jpg
もうひとつの整備対象となった青龍洞では、池に張り出すように基壇と円形ベンチを配置。玄武岩が水面に映るさまを間近に眺められる。

リニューアル以降、音楽イベントなど新たな活用もされており、長年親しまれた希少な景勝地が再び注目されている。

05_genbudo_park_toyooka_33.jpg
城崎温泉からほど近い円山川を臨む公園。対岸の玄武洞駅から公園そばの「玄武洞ミュージアム」へは予約すれば渡し船でもアクセスできる。

玄武洞公園

住所:兵庫県豊岡市赤石1347  
TEL:0796-22-4774 
開園時間:9時~17時 ※入園は閉園30分前まで
休園日:12/29 ~1/3  ※臨時の休園日あり
料金:一般¥500 
https://genbudo-park.jp
【設計者】ケース・リアル
代表の二俣公一は、1975年鹿児島県生まれ。2000年に福岡を拠点とするケース・リアルを設立。05年には東京オフィスを、13年にはプロダクトデザインに特化した二俣スタジオを開設。

関連記事

※この記事はPen 2023年4月号より再編集した記事です。