1847年の創業以来、世界中の人々を魅了してきたラグジュアリーメゾン、カルティエ。その歴史をひも解くと、時の権力者・エドワード7世に「王の宝石商 宝石商の王」と言わしめるほどにジュエラーとして名を馳せたことが、今日まで続くブランドの礎になっていることは間違いないだろう。
その一方で100年を超える時計づくりへの情熱も、メゾンの歴史を語る上で欠かせない。そんなカルティエのウォッチメイキングに特化した体験型イベント「TIME UNLIMITED - カルティエ ウォッチ 時を超える」が9月15日から東京・原宿で開催される。
香港、北京、ソウルに続き、東京で開かれるこの世界巡回展は、フランス系カナダ人のデザイナー、ウィロ・ペロンが会場デザインを手がけた“没入体験型”を謳うイベント。カルティエの時計製作における重要なテーマである「パイオニア精神」「フォルム」「デザイン」「美を支える技術」に焦点を当てた展示になっており、4つに分かれたスペースでカルティエ ウォッチの世界観を堪能できる。
カルティエらしい豪奢なレッドカーペットを進んでいくと現れるムービーエリアではまず、来場者はブランド黎明期のパリ・ベルエポックへと時間旅行に誘われる。人々が束の間の平和と繁栄を謳歌し、さまざまな文化が花開いた時代。三代目当主のルイ・カルティエは社交界へのジュエリーの提供に留まらず、時計製作にも力を入れていた。
そんな最中の1904年。ブラジルの富豪で飛行家のアルベルト・サントス=デュモンから依頼を受けてつくられたのが、いまなお愛され続ける「サントス ドゥ カルティエ」の原型となった逸品だ。飛行中に操縦桿から手を放すことなく時刻を確認したいとの要望に応え、ケースとラグを一体化させた実用的なこのモデルは、世界初の男性用腕時計として知られており、カルティエが「腕時計の祖」と呼ばれるゆえんにもなっている。
展覧会では、過去の写真のモンタージュやアニメーションを用い、華やかな時代の雰囲気と時計づくりの歴史を体感させてくれることだろう。
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その後に続くエリアでは、アイコニックなモデルのデザインの変遷が窺える。1917年に戦車から着想を得てデザインされた「タンク」は、縦枠を無限軌道、ケースを操縦席に見立てたもの。19年に発売された後、22年にケースが長く縦枠が細くなった「タンクL.C.」が登場。
その後さまざまなバリエーションを世に送り出しながら、70年代末にはモノトーンの文字盤も発表され、96年にはケースと完全に一体化したメタルブレスレットの「タンク フランセーズ」が生まれた。展覧会では、こうした時代に合わせてしなやかに変化を続けてきた様子を実際に展示される時計とともに楽しむことができる。
ほかにもブランドのアイコンである豹をモチーフにつくられた「パンテール ドゥ カルティエ」や、ボリュームのあるラウンドシェイプと特徴的なリューズが美しい「バロン ブルー ドゥ カルティエ」、そして「サントス ドゥ カルティエ」のデザインの変遷も興味深い。
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最後にフォーカスするのは、カルティエの意匠を凝らした時計を支え続ける「技術力」についてだ。てん輪やヒゲゼンマイのデザインなど、まるで巨大なムーブメントに入り込んだかのようなトンネル型のビジョンには、時計製造の中心地であるスイスのラ・ショー・ド・フォンにある工房と、隣接する職人の育成のためにつくられた施設「メゾン デ メティエダール」のストーリーが映し出される。
美しいデザインやフォルムを実現するため、すべての部品を自社で一貫生産するマニュファクチュールとしても知られるカルティエ。長年にわたり時計づくりを支え、伝統技術を守りながらも進化を続けるクラフツマンシップに感銘を受けることだろう。
VRを使ってスイスの時計工房を訪問することもできる体験エリアでは、職人の匠の技をより間近に見て取れる。ほかにも最新モデルの試着や会場限定のフォトブースも設置される。
まさにカルティエ ウォッチの歴史といまを、見て、触れて感じ取れる展覧会だ。入場は完全予約制となっており、現在予約を受付中。ぜひこの機会にカルティエの時計づくりの真髄に触れてみてはいかがだろうか。
TIME UNLIMITED - カルティエ ウォッチ 時を超える
開催期間:2023年9月15日(金)~ 10月1日(日)
開催場所:東京都渋谷区神宮前6-35-6
入場無料(事前予約制)
https://cartier-timeunlimited.jp/