1.LONGINES(ロンジン)
ロンジン ウルトラ-クロン
1968年に発表された「ロンジン ウルトラ-クロン ダイバー」にインスピレーションを得た、スポーティモデル。ブランド創業190周年に、最先端の技術とともに復刻された。外装のスタイルだけでなく、高振動周波数ムーブメント搭載機として名を馳せたオリジナル同様に毎秒10振動のムーブメントで再武装。シリコン製ヒゲゼンマイを装備し、防水性もより高めた。
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2.RADO(ラドー)
ダイヤスター オリジナル
60周年アニバーサリーエディション
スイスのデザイナー、アルフレッド・ハベリとコラボレーションした、オーバル型ケースの名品「ダイヤスター」発売60周年を記念したモデル。セラミックスの特性と金属の質感を兼ね備える合金、セラモス製のベゼルに、サファイアクリスタル風防は六角形のファセット加工を施し、ミラネーゼブレスレットを装着。クールなメタリックカラーで統一した。
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3.TISSOT(ティソ)
ティソ シデラル
マルチカラーのアイコニックなスタイルは1971年発表の「シデラル S」譲りで、イエローの他にレッド、ブルーの計3色をラインアップ。ブラックPVD加工を施した逆回転防止ベゼルにはダイビング用の目盛りに加え、レガッタ仕様のカウントダウン目盛りを装備している。当時はグラスファイバー製であったケースは、フォージドカーボンとして現代的にアップデートされた。
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1960年代後半から70年代初期を象徴する腕時計のフォルムといえば、オーバル型のケースであろう。正確に言えば楕円形の上下を水平方向に断ち落とした形状で、呼び方はバレルやトノーのほか、ラウンドの一種とされることも少なくない。当時の先端技術を駆使して未来都市空間を演出した70年の大阪万博。科学技術の礼賛や未来志向はさまざまなプロダクトデザインにも反映されていた。半世紀の時を経て、そのスタイルが、いま脚光を浴びている。
同時代のヴィンテージ製品をあさってみれば、いかにこのスタイルが圧倒的であったかがわかる。それまでの、丸型からラグを伸ばしてストラップにつながるシルエットとは訣別し、流れるようなラインで一体感を高めたデザインは、未来を予言し、時代の先端を行くものだった。ただしその流行は長くは続かず、オーバル型はオールドファッションとなってメインストリームから外れていった。
その状況を一変させたのが、最近のレトロフューチャーデザインのブームだ。ロンジンは68年製の自社アーカイブから着想を得て、55年ぶりにデザインコードを復活させた。ティソのフォージドカーボン使いは、69年から始まったシリーズで採用した世界初のグラスファイバー製ケースの革新性を再解釈したものだ。ラドーは堂々たる60周年記念モデルを発表。
一周回って新しく、“ダサかわいい”デザインの競演。70年代に想い描いた未来のカタチは、予言を実現するのではなく、その魅力のまま蘇ったのである。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。新著に『ロレックスが買えない。』。
※この記事はPen 2023年9月号より再編集した記事です。