【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】第200回クルマから降りる真田広之が見たい !? 浪漫をかなえるロングノーズのハンサムクーペ

  • 写真 & 文:青木雄介
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1947年に世界初のグランドツアラーを発表した75周年を記念する特別モデル。 

ロングノーズのハンサムクーペ、マセラティの新型「グラントゥーリズモ」に乗った。ピニンファリーナの先代デザインを受け継ぎ、自社デザイナーのクラウス・ブッセがより洗練させた造形美は圧巻だね。トライデント(三叉矛)のバッジが冠せられたフロントノーズは、どこか古代の海洋生物を連想させる。どこから見てもマセラティ。うん。それが大事よね(笑)

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ヘリンボーンモチーフのパンチングレザーを用いた瀟洒なインテリア。

ロングノーズクーペはとにかく見た目が第一。このクルマがレッドカーペット前に乗りつけられたら、どんな紳士か淑女が現れるのか胸が高鳴りません? クルマにつけ人生につけ、良し悪しがわかるロマン派の人物にこそ乗ってほしいところ。

個人的にはもう俳優の真田広之先輩一択ですよ。自らプロデューサーとなり主演も務める、ディズニープラスのドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』が国内外で大好評。ハリウッドの制作陣を従えて自分が伝えたい日本の武士道を世界に発信するなんて、浪漫の塊だよね。

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ブランドを象徴するサイドの3連エアベントとトロフェオのバッジ。

まずこのクルマがすごいのは、まったく同じフォルムでフォルゴレ(日本未発表)というEVモデルもラインアップしていること。車台を共有して異なるパワートレインを搭載可能にし、構造的に難しいロングノーズを四輪駆動化した。嗚呼、ボンネットを開ければ一目瞭然。小ぶりな自社製V6エンジン(ネットゥーノ)をキャビンに寄せて低重心のフロントミドシップにし、前車軸のデフに重ならないようにしているんだ。

寝かせたフロントウインドー、その奥まで広がるダッシュボードの心意気。低くて強めのビートを刻むエンジンが、走行モード「コルサ」に入れるとより低音になり、アクセルレスポンスが鋭くなる。峠に入れば、先代より約100㎏軽い軽量感と、フロントミドシップのバランスのよさをはっきりと実感できる。フレームのしなやかさやステアリングの正確性、足まわりの応答のよさも含めて、四輪駆動化によって走りをワンランク洗練させているんだな。

驚きなのは四輪駆動のグリップ力とともに、後輪駆動のような軽快なステアリングを両立していること。電子制御のリアデフを搭載することで前後3:7のパワー配分を、最大で9割まで後輪に集中させることができるんだ。

それとエアサスの足まわりも至高のグランドツアラーだね。街中やクルーズ走行のために「コンフォート」と「GT」というふたつのドライブモードを用意しているのだけれど、「GT」こそがこのグラントゥーリズモの本質を表現している。

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ボンネット後方に搭載されたネットゥーノ。

高速道路を流して走るときは海鳥が羽を伸ばすように悠々と走り、「ここぞ」とアクセルを踏めばネットゥーノが鋭く反応して加速する。リラックスしつつも澄んだ空のように明晰でいて臨機応変、アクセルひとつで戦闘態勢に入れる。どうです、殿(真田先輩)。これぞ戦国武将のあるべき姿と申せましょうぞ(笑)

そんな浪漫をエンジニアリングでかなえた伊達者クーペは車高だって低い。実はこの低さが走りのシャープさに直結しているし「ロングノーズは車高の低さがいちばん大事」って話にもなる。先輩ならわかりますよね。

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電子制御リミテッドスリップ・リアディファレンシャルを搭載。

マセラティ グラントゥーリズモ トロフェオ

全長×全幅×全高:4,965×1,955×1,410㎜
エンジン:V型6気筒ツインターボ
排気量:2,992cc
最高出力:550ps/6,500rpm
最大トルク:650Nm/2,500-5,500rpm
駆動方式:4WD(フロントミドシップ4輪駆動)
車両価格:¥36,600,000(75周年アニバーサリーモデル)
問い合わせ先/マセラティ コールセンター
TEL:0120-965-120
www.maserati.co.jp

※この記事はPen 2024年7月号より再編集した記事です。