「大人の名品図鑑」レイングッズ編 #5
6月から7月にかけて、日本では本格的な夏がやって来る前に必ず“梅雨”がある。雨や曇りが多くなり、ジメジメした日々が続く。梅雨末期には集中豪雨が降ることも多く、本格的な雨具が必要になるだろう。今回は雨の日に役立つレイングッズの名品を集めてみた。
雨の日に役に立つアイテムを調べていると必ずと言っていいほど「ゴアテックス(GORE-TEX)」という言葉に出くわす。
「ゴアテックス」はアメリカで開発された防水耐久性や透湿性を備えた素材のことだ。アメリカのデラウェア州に住むウィルバート・ゴアとジュネヴィーヴ・ゴア夫妻が、フッ素樹脂の合成ポリマー(PTFE)の可能性を信じ、自ら会社を立ち上げたのが1958年。そして69年には2人の息子ボブ・ゴアがPTFEを薄く伸ばして自由に加工できる「延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)」の開発に成功、この素材から生まれたのが、現在の「ゴアテックス」技術の核となる「ゴアテックス メンブレン」だ。
これは微細な孔(あな)を無数に持つ膜のような素材で、孔の大きさは水滴が通過できないほど小さく、水蒸気の分子よりは大きいために、水の侵入を防ぎ、同時に中の汗などを発散するという防水性と透湿性、さらには防風性という革新的な特性まで備えている。フッ素樹脂の原料となるのは蛍石という鉱石で、劣化もしないので、「ゴアテックス メンブレン」も適切に使用すれば、その効果はずっと続くという驚くべき性能を持っている。
この特徴を活かして、70年代にはまずアウトドアウェアやギアに採用されるようになり、80年代になるとスペースシャトル計画や南極探検などにも使われるようになった。最近では、アウトドア的なアイテムだけでなく、街用のコートなどのアウターからスニーカー、ビジネス仕様の革靴まで「ゴアテックス」が使われるようになっている。また「ゴアテックス」そのものも、次々と新しいタイプが発表され進化を続けている。
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アメカジの名品にもゴアテックス
数多くの「ゴアテックス」製品の中から今回紹介するのは靴だ。それもアメリカン・カジュアル、通称アメカジ・ファッションには欠かせないレッドウィングから発売された「ゴアテックス」搭載のモデルを取り上げてみたい。
レッドウィングは1905年、アメリカ・ミネソタ州のレッドウィングという街で誕生した老舗のブーツメーカーだ。創業者は17歳でドイツから移民してきたチャールズ・ベックマンという人物で、革の鞣し工場や靴屋で働いた後、14人の仲間とともにこの地で会社を設立した。「アイリッシュセッター」「エンジニアドブーツ」「ポストマンシューズ」など、多くの名品を生み出し、日本でも大きなブームを何度も起こした。もちろん創業以来、120年近くこの地で工場を構え、熟練の職人たちが質実剛健なブーツをつくり続ける、いまではアメリカを代表する老舗だ。
この「#8864 6インチ クラシックモック/ゴアテックス」は、同ブランドの定番的なワークブーツと見た目は変わらないが、「ゴアテックス」が使われ、その機能は大きく進化を遂げている。ライニング=裏地の「ゴアテックス ファブリクス」は、表面に「キャンブレル」という摩耗に強く、吸汗速乾に優れたナイロン不織布が使われており、靴内部が蒸れにくい。
この裏地の組み合わせはワークブーツや特殊用途向けの生地にしか使われないもので、ブーツメーカーの老舗としての経験とこだわりを感じる。またインソールにも断熱素材の「シンサレート」、表面には高いクッション性を備えた「ポロン」を使用するなど、「ゴアテックス」をはじめとする最新素材を使って、ワークブーツ内部の快適さの向上をはかっている。またアッパーに使われる「ラセット・タオス」と呼ばれるレザーも「ゴアテックス」の特徴である透湿性能を妨げないように通気性と防水性を備えている。
「ゴアテックス」などの新しい技術が採用されたことがきっかけとなり、さらに機能性や実用性が増した名品へと進化する。そう断言できる好例ではないか。
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レッドウィング・ジャパン
TEL:03-5791-3280
redwingheritage.jp
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