「大人の名品図鑑」レイングッズ編 #4
6月から7月にかけて、日本では本格的な夏がやって来る前に必ず“梅雨”がある。雨や曇りが多くなり、ジメジメした日々が続く。梅雨末期には集中豪雨が降ることも多く、本格的な雨具が必要になるだろう。今回は雨の日に役立つレイングッズの名品を集めてみた。
雨の日にも役に立つバッグとして今回紹介するのは、ハンティングワールドのバッグだ。創業当時から多くの人に愛用され続けている同ブランドのバッグだが、なかでもアイコンと言えるのが「バチュー・クロス」と呼ばれる独自の素材を使ったモデルだろう。このバッグがアメリカに憧れる男性たちから圧倒的に支持されたのが80年代。90年代にブームとなった“渋カジ”では、ダブルの紺ブレに合わせるバッグとして人気を博した。
最近、こうしたブームを知らない若い世代からもハンティングワールドが再認識されているという話をよく聞くが、変わらないブランド独自のデザインが逆に新鮮に見えたのではないだろうか。今回、レイングッズ編でこのバッグを選んだには理由がある。その出自が雨などの天候に関係しているからだ。
ハンティングワールドの創業は1965年。創業者はロバート・M・リー(通称ボブ・リー)という人物で、生まれはニューヨーク州ロングアイランド。幼少のころから田園が広がるこの地で乗馬や射撃、フィッシングなどのアウトドアスポーツに没頭する日々を送っていたが、10歳で独自のライフル照準システムを考案、14歳で超高速ライフルカートリッジを開発するなど、少年時代からものづくりに対する才能を開花させていた。
---fadeinPager---
「バチュー・クロス」の開発秘話
そんな彼に転機が訪れるのは19歳のとき。以前から憧れていたアフリカを訪れ、ウガンダやタンザニアを旅するなか、その雄大な自然に魅了された。そしてボブはアフリカで暮らすことを決意し、4年後の59年にはサファリツアーをアテンドする会社を現地で設立する。
事業は順調に発展していくが、「ラゲージやテントが既存のものではアフリカで使用するのに役に立たない」とボブは考え、これらのアイテムを自ら開発することを決意する。最初につくったバッグはキャンバス製だった。しかしキャンバスのバッグ類は、重い上に防水性がなく、水分や湿気を吸うと重量がさらに増す。ボブは旅にカメラなどの精密機械を持参することも多く、これらの機材を守るためには耐衝撃性や耐油性、加えてアフリカの灼熱から守ってくれる耐熱性も必要だった。
そこでボブは素材開発に取り掛かり、72年に猛暑や極寒の環境でも耐えうる「バチュー・クロス」の開発に成功する。ポリウレタンをコーティングしたナイロンクロスにウレタンフォームを張り合わせ、さらにナイロンジャージをボンディング加工した3層構造の超軽量素材で、撥水性と防塵性などの確かな機能性を備えていた。彼がデザインしたバッグは彼の顧客だけでなく、やがて世界中で愛用されるようなヒット作になった。
そしてアイコンとも言える素材の誕生から半世紀を経て24年に発表されたのが、「ネオバチュー・クロス」。ベース生地を熱圧着に強いポリエステル素材に変更、しかもその素材にはボブの自然への想いが投影された再生ポリエステルが採用されている。土ぼこりや雨から中身を守るため、ポリカーボネートシートをコーティング素材として圧着し、耐候性を向上させたタフなバッグへとさらに進化を遂げている。
「LIVE THE ADVENTURE」。ハンティングワールドが掲げるブランドの遺伝子がこれだ。バッグを含めてどの製品にも息づいているのは、幼少期からアウトドアスポーツに親しみ、アフリカの大自然に魅了された創業者ボブ・リーの想いだ。過酷な天候にも耐えられる丈夫な素材や機能的なデザインは、どれも彼のアフリカでの経験と、ものづくりに対する真摯な姿勢から生まれたものだ。そんな出自を持つ名バッグが雨などの荒天で役に立たないわけがない。
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---
---fadeinPager---
ハンティングワールド帝国ホテル店
TEL:03-3501-7080
huntingworld.com
---fadeinPager---