350万通りの組み合わせから自分だけの腕時計を! トビアス・カッファー副社長が語る、ノルケインの前例なき挑戦

  • 写真:齋藤誠一
  • 文:並木浩一
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ノルケインのトビアス・カッファー副社長。兄のベンとともにノルケインの経営を担っている。

いまスイス時計業界で大きな注目を集めるブランド、ノルケイン。2018年創業だが、わずかな期間で大躍進を果たしたイノベーション力と魅力的な商品開発、信頼性の高い品質と誠実な価格、インディペンデントを貫く経営姿勢は、若い世代を中心に共感を広げている。一方で取締役会顧問として、ブランパンを復興させ、ウブロを大成功に導いた腕時計界の最高頭脳、ジャン-クロード・ビバーが2022年に参画したことも、この若きブランドの絶対的な品質証明となった。

今回、ノルケインCEOの弟でもあるトビアス・カッファー副社長の来日を機に、2024年の新作と今後の戦略を尋ねた。

定番「ワイルドワン スケルトン」にニューカラーが追加

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トビアス・カッファー●ノルケイン バイスプレジデント。ベン・カッファーCEOの実の弟で、1990年、スイス・ビール/ビエンヌ生まれ。2013年からルイ・エラールで時計業界のキャリアをスタート。その後いくつかのブランドを渡り歩き、おもにセールス部門の経験を積む。2021年5月から現職。
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手元には昨年夏の発表から話題を集める「ワイルドワン スケルトン ターコイズ」が。

トビアス・カッファーがこの日着用していたのは「ワイルドワン スケルトン ターコイズ」。昨年6月の発表から今日に至るまで、ノルケインにおいて全世界でトップの人気を得ている大ヒットモデルだ。「ノルテック」と呼ばれるノルケイン独自のカーボン複合素材のパーツが、鮮やかなカラーのラバー製ショックアブソーバーを挟む時計本体は、衝撃に耐える高度な構造と卓抜なデザインを融合させた魅力を放つ。その最新作がふたつのニューカラーで登場した。

「ひとつがコーラルオレンジカラーの“コーラル”、そしてもうひとつが“ゲッコー”、トカゲという意味のグリーンカラーのモデルです」

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左:ワイルドワン スケルトン コーラル 右:ワイルドワン スケルトン ゲッコー/新素材「ノルテック」はスチールの約1/6、チタンの約1/3という驚異的な軽さを誇る。自動巻き、ノルテックケース、ケース径42mm、パワーリザーブ約41時間、ラバーストラップ、シースルーバック、200m防水。各¥902,000

どちらもアイコニックなカラーで目を惹くが、その色には別の意味もある。実はテニス界のレジェンドにしてスイスの英雄スタン・ワウリンカが、この2モデルのアンバサダーなのである。「コーラル」はローラン・ギャロスのクレーコート、「ゲッコー」はウィンブルドンの天然芝コートのインスパイアだ。実際ワウリンカはこの2種類の新作を着け分けながら、グランドスラムを転戦するのである。

「プロテニスプレーヤーがショットする時のインパクト(衝撃値)は、およそ800Gにもなります。それでも『ワイルドワン スケルトン』の耐衝撃性はその6倍以上、5000Gまで大丈夫なのです」

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日本限定のスペシャルモデルも登場

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イルドワン スケルトン JP/ノルケインの定番コレクションから日本限定モデルが発売。自動巻き、ノルテックケース、ケース径42mm、パワーリザーブ約41時間、ラバーストラップ、シースルーバック、200m防水、日本限定。¥935,000

「そして日本の方々に最もお伝えしたかったのが、日本限定のスペシャルエディション『ワイルドワン スケルトン JP』です。たぶんこのモデルを見たら、世界中の市場で欲しいと言われると思うのですが、本当に日本だけでの発売です」とトビアス・カッファー副社長は強調する。

「ワイルドワン スケルトン」はノルケインの快進撃を象徴するヒット作だが、そこに“JP”の2文字を加えてまで、ジャパンオンリーにこだわった。創業6年の若いブランドにとって、日本は早くからその存在価値を認めた特別な国。腕時計の目利きが揃う日本で正規販売店のネットワークをいち早く構築できたことは、世界に通じるアピールポイントなのだ。ブラックとホワイトで全体を統一したカラーコンビネーションのクールさは、確かにグローバルレベルでの魅力に満ちている。

さらに実は今年、もうひとつの日本限定新作モデルがある。それが「アドベンチャー ネベレスト MT.FUJI スペシャルエディション」だ。定番の「NEVEREST」をベースに富士山の頂きを連想させるグレーシャー文字盤、ブルーネイビーのインデックスと針を採用し、ケースバックには富士山のシルエットを刻む。

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アドベンチャー ネベレスト MT.FUJI スペシャルエディション/このモデルの売上の10%は、ヒマラヤ山脈で命を落としたシェルパの遺族支援を目的とした「バタフライ・ヘルプ・プロジェクト」に寄付されるという。自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径40mm、パワーリザーブ約70時間、200m防水、日本限定。¥660,000

「“富士登山競争”をご存知ですか。富士山の麓から山頂まで20キロ駆け上がるこの“日本一の山岳レース”で、ノルケインはオフィシャルタイムキーパーを務めています。今年で77回目のこのレースには、ノルケインのアンバサダーである上田瑠偉選手も、過去最高記録達成を目指して出場します。この機会に、日本の方々の心象風景の真ん中にある富士山モデルをローンチしようと決めたのです」

第77回富士登山競走は、7月26日に開催される予定だ。

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腕時計の新たな可能性を切り拓く「ワイルド ワン オブ ワン」

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「ワイルド ワン オブ ワン」を構成するパーツ。これらの選択により350万通りのものカスタマイズが可能になる。

そして今年、ノルケインは前代未聞のプロジェクトに乗り出した。パーツのレベルから選択することができ、最終的には350万通りのものカスタマイズが可能になる、画期的な新作「ワイルド ワン オブ ワン」の登場である。

「このまったく新しいコンセプトは、ジャン-クロード・ビバーと2年かけて開発したものです。いろんなコンビネーションを楽しみながら唯一無二のユニークピースが完成する、というコンセプトを試行錯誤した結果がこの『ワイルド ワン オブ ワン』です」

楽しみながら自分だけの腕時計をつくるためのシミュレーションには、ノルケインがパートナー企業UDIMUと共同開発した3Dコンフィギュレーターツールが活躍する。プロセスには11のステップがあり、ムーブメント、ケーストップの素材、ラバー製ミドルケースのカラー、文字盤インデックスや針、ケースバックに至る隅々までがカスタマイズできるのである。このフルオーダーをしたユニークピースは、それでも定番モデルの1.5倍程度の価格に抑えられ、納期もわずか3カ月だという。

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3Dコンフィギュレーターツールによるシミュレーションの画面キャプチャ。自分だけの腕時計をカスタマイズするプロセスを試行錯誤でき、完成のイメージをコンプリートできる。

創業6年目にして、全速力で魅力を開花させ続けるノルケイン。日本での取り扱いは、著名な40店舗以上の正規販売店が行っている。海外では2021年12月、初のフラッグシップブティックをスイス・ツェルマットでオープン。翌年にはシンガポール・オーチャードロードに2店舗目を開業し、23年11月には初のポップアップショップをニューヨークに、さらにスイスのチューリッヒには3店舗目のブティックをオープンした。その快進撃のさなかにあっても、まだ前進の意思は強い。

「6年目のノルケインは、いままさにベースキャンプを築いた状態だと感じます。ここからさらに8000メートル級の山頂に登っていく決意を固めた、そんな段階でしょうか」

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ブランドの将来を語る、トビアス・カッファー副社長。家族経営の完全なインディペンデントブランドは、スイス時計業界を育んできた伝統の業態である。

ノルケインジャパン

TEL:03-6864-3876
https://norqain.com