ランボルギーニの新世代スポーツカー「レヴエルトRevuelt」が2024年6月に日本で公開され、7月初旬にメディア向け試乗会がサーキットで開催された。
レヴエルトの最大の特徴は、アベンタドールに続く12気筒エンジン搭載モデル(ワンオフモデルは除く)であることと、さらにそこにプラグインハイブリッドシステムを組み合わせているところ。
最高出力は1015馬力に達する高性能ぶりは「当初宇宙船をイメージしていた」とヘッドオブデザインのミチャ・ボルカート氏は語るが、大胆なボディのイメージによく合っている。
フロントセクションとリアセクションが咬み合ったようなボディデザインは、アベンタドールやウラカンという直近のモデルにおけるデザインテーマを発展させたもの。
そこにY字と六角形という、やはりランボルギーニ車では知られたモチーフが散りばめられている。レヴエルトでは、たとえばフロントのシグネチャーライトがY字型。
シザードアを跳ね上げたときに黒色の三角形がドアに残るのは、かつてのクンタッチ(カウンタック)のモチーフの援用だろう。過去のデザインと、プラグインハイブリッド時代のあたらしいデザインとをうまく橋渡ししている感じがある。
面白いのは、デザインにおける考え方をフェラーリと比較したとき。フェラーリは、基本的に同じデザインを踏襲しないことを明言している。
たとえば、2024年5月初頭に発表された「12チリンドリ」のリア部分の特徴的な「デルタウイング」モチーフ。次に出てくるモデルにも使うかと、イタリア本社での発表会のとき、デザイナーに尋ねると「使いません」と即答された。---fadeinPager---
ランボルギーニは、基本コンセプトをつくり(直近では、前出のボルカート氏がデザインセンターに着任した2016年)、モデルごとにアレンジし、論理的に発展させ、構築的に新しいキャラクター(新型車)をデザインしていく感じがある。
レヴエルトの実車も、とくにプロファイル(側面)はまごうかたなきランボルギーニだ。もちろん、新しい。空力も重要なテーマだからだ。でも、ミドシップされたエンジンレイアウトからくる前後のタイヤ配置や、各ピラーの位置など、機能が形態を決めていく側面はしっかりある。
驚くのはリアビューだ。コクピット背後に縦置きされた6.5リッター12気筒エンジンのヘッドが見えているし、ルーフからリアウインドウそしてエンジンカバーから六角形のテールカッター(排気管の後端部)にいたる部分が2本のうねになっていて、見方によってはルーフから排気管が続いている印象である。---fadeinPager---
「バッテリー駆動へと向かう時代において、排気管を目立たせるのはどうなのか、という意見もあったのですが、レヴエルトは12気筒がセリングポイントでもあるし、思いきり目立たせてしまおう、という結論になったんです」
ヘッドオブデザインのボルカート氏はインタビューで述べている。
思いきりのよいデザインという点では、フロントの処理もユニークだ。そもそもの個性的な造型美は置いておくとしても、よい例がADAS(運転支援システム)のセンサーの処理だ。
「いまのクルマでは必ず必要となりますが、どのメーカーのデザイナーもこの処理には手を焼きます。レヴエルトでは、いわゆる”顔”を作らないといけないのと、大型ラジエターと、とりわけ日本のような国の巨大サイズのナンバープレートの取り付け位置も調整しないといけません」
「ADASセンサーは片側でいいのですが、片側だけだと美的なバランスを欠くので、ダミーをひとつつけて、左右一対のデザインにしました。そこからミサイルとかマシンガンが出るような、ちょっとジェイムズ・ボンド的なデザインになりました」
とボルカート氏は語る。---fadeinPager---
インテリアも、ランボルギーニ的であって、かつ、どのモデルとも異なる新しさがある。T字型のダッシュボードとその上に位置するレイヤードタイプのエアアウトレットは、一目でランボルギーニと思わせるデザイン。さらにエンジンを目覚めさせるとき、親指ではねあげるスターターボタン用のリッドも、ランボルギーニファンにはお馴染みのものだ。
シートの造型も新しい。私の印象としては、バックレストの上の部分は特に、スターターボタンの隣にあるシフターを思わせる造型が斬新だ。物理的なスイッチの数はうんと減って、大きなサイズの液晶コントロールパネル内で操作できるようになった。---fadeinPager---
一方、コントラストの強いカラーコンビネーションや、六角形のモチーフがそこここに使われている表面処理は、ランボルギーニでお馴染みのもの。たとえば、ブラックにオレンジなどビビッドな色の組合せは、クルマ好きの心を踊らせるこのブランドならではのデザイン手法だ。
レヴエルトは、12気筒エンジンをミドシップし後輪を駆動。前輪は左右1基ずつのモーターで駆動する。エンジンには8段のツインクラッチ式変速機が組み合わされていて、ここに3基めのモーターが搭載されて、発進時や加速時にトルクを積み増す。場合によってはフロントのモーターへの電力供給も行う。
エンジン単体のトルクは725Nmもあり、フロントの油冷式アクシャルフラックスモーターは各350Nmものトルクをもつ。カーブを曲がるときなど働くトルクベクタリング機能を備えるし、EVモードを選択すると、なんとフロントモーターだけの前輪駆動となる。---fadeinPager---
果たして、サーキットでドライブした印象は、速い、そして乗りやすい、というものだった。最初に選択したドライブモードは「チッタ(シティ)」。電気モーターを積極的に使うモードなので、無音でスタートして、そのまま力強く加速していく。
速度が時速60kmに達した時点でモードを「ストラーダ(ストリート)」に切り替えアクセルペダルを踏み込むと、エンジンが始動。後輪にトルクが伝わって、ものすごく強い力で押されているような加速をみせる。
カーブではほとんど車体はロールせず、ハンドルを切った舵角に合わせてすかさず向きを変え、カーブの出口へと向かって、失踪するドライブ感覚が味わえる。
さらにハンドル左側の小さなダイヤルを時計方向に回すと、ドライブモードは「スポーツ」そして「コルサ(レース)」が選べる。アクセルペダルを踏んだときの加速のよさと、ハンドルの切れ角が鋭くなった印象だ。
実際、富士スピードウェイで、私程度のドライバーが操縦を楽しもうと思ったら、「ストラーダ」モードで十分。それでもアクセルを床まで踏めない。
1.5kmのホームストレッチでは先行車に追突するかもしれない不安があり、出せた速度は時速300kmに届かなかった。短い距離で信じられないぐらいの高速に達する。それでもアクセルペダルには踏みしろが残っているのは驚きだ。
上記のようなドライブができるのは、ブレーキが強力で、かつフィールがじつに繊細だから。これこそスポーツカーの醍醐味だ。富士スピードウェイは1周が4.563kmあるけれど、何周しても飽きない。
速い。けれども、ハンドリングは不安感がなく、かつ繊細。ブレーキもよく効くので運転がしやすい。レヴエルトはすばらしい技術の賜物と言える。
そういえば、2023年秋、ミュンヘンでのフォルクスワーゲングループのイベントで、ピュアEVの「ランザドールLanzador」(2028年発表予定)のコンセプトモデルが持ち込まれた際、ランボルギーニのステファン・ウインケルマンCEOが、デザイントップのボルカート氏、それに技術部門のトップ、ロウフェン・モア氏とともにいた。
そこで、レヴエルト、それにランザドールと、いよいよEVの時代か、と声をかけたところ、「いまのところ、レヴエルトを購入しようというのは、従来の12気筒モデルとは異なる新しい層です」と答えが返ってきた。ランボルギーニの新時代がいま、レヴエルトから始まるのだろうか。
ランボルギーニ レヴエルト
全長×全幅×全長=4,947×2,033×1,160mm
エンジン形式:6498.5ccV型12気筒エンジン+プラグインハイブリッド。電気モーター前2基、全輪駆動
ホイールベース:2,779mm
車重:1,772kg
最高出力:746kW
最大トルク:725Nm
車両価格:¥66,000,000
問合わせ先/ランボルギーニ・カスタマーサービス
https://www.lamborghini.com/jp-en/