JALとANAが新型機を導入!新しいフラグシップ機が、日本の空を変えていく

  • 文:吉川忠行
  • イラスト:菊地義裕 
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コロナ禍からの再始動とともに日本の国際線と国内線に新フラグシップ機が登場した。世界的にCO2排出量削減などが求められるなか、どのような空の旅を提案するのか。

Pen最新号は『エアライン 最新案内』。2020年のパンデミックによって、エアラインを取り巻く環境が大きく変わった。リモートが普及し、CO2削減が人々に浸透した現在、円安を考慮しても航空券価格は世界的に高騰している。最新ビジネスクラスは、以前のファーストクラスのようなサービスや価格へと変化し、安いが不便だったLCCは、「ちょうどいい」ハイブリッドエアラインへと進化する。エアラインの最新を知れば、新しい時代の旅が見えてくる。

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コロナ禍を経て、快適性を重視した新たな空の旅へ

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エアバス A350-1000

●全長:73.79 m●巡航スピード:マッハ0.85●エンジン:Trent XWB-97(ロールス・ロイス製)●席数:239席(国際線X35)●航続距離:16,112km

20年ぶりとなる国際線の新フラグシップで1路線目の羽田-ニューヨーク線に1月就航。ファーストクラスとビジネスクラスはJAL初の個室タイプで、プレエコは電動化。エコノミーの個人用画面は4K対応に進化した。全クラス新シートで日本の伝統美を意識。JA01WJ、JA02WJ、JA03WJの計3機を運用予定。

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ボーイング787-10

●全長:68.3m●巡航スピード:マッハ0.85●エンジン:GEnx-1B(ジェネラルエレクトリック製)
Trent 1000(ロールス・ロイス製)●席数:429席(国内線78K)、294席(国際線781)●航続距離:10,770km、11,600km 

胴体長の違いで3機種あるボーイング787。次世代国内線フラグシップは最長の787-10。大型機777-200より4.3mも長く、燃費は約25%改善。26年前に就航し退役が近づく777-300の514席に次ぐ座席数429席を誇り、快適性と環境性能を兼ね備えている。JA900A、JA901A、JA902A、JA981A、JA982A、JA983A、JA984Aの計7機を運用予定。

日本の空がコロナから本格的に復活した2024年。航空大手2社のフラグシップ機が就航した。1月に日本航空(JAL)が国際線にエアバスA350‐1000型機、3月に全日本空輸(ANA)が国内線にボーイング787‐10型機を相次ぎ投入。低騒音やCO2排出量削減といった環境性能を重視しつつ、いままでにない個室シートや大型画面で快適性を打ち出している。

JALが国際線旗艦機を刷新したのは20年ぶりで、ファーストクラスとビジネスクラスは同社初の個室を採用。ファーストは頭上の手荷物収納棚をすべて取り払った開放感あるキャビンに、日本家屋を意識した引き戸とプライバシーに配慮した157㎝もの高さがある壁でわずか6席の贅沢な空間をつくり出した。ビジネスも天井が広々とし、132㎝の壁と扉で個室感を高め、リビングのように過ごせる。そしてプレミアムエコノミークラスは初の電動化。エコノミークラスはモニターを大型化し4K対応13インチにした。

ANAは3機種あるボーイング787の中で胴体が最も長い787-10を国内線にも投入。13年前に世界で初めてこの機体を就航させ、標準型「-8」、胴体が約6m長い「-9」、12m近く長い「-10」のすべてを運航している。最新の787-10は置き換え対象の大型機777-200より胴体が長く、座席数も増えて429席。プレミアムクラスの快適性に加え、普通席も座り心地や大画面にこだわった。普通席はトヨタ紡織製で日本メーカーの航空機シートは珍しい。座面を低くし、どのような体格の人もフィットする着座感は快適だ。

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JALは機材メーカーを分散させ、20年後を見据えた新しい機体をそろえる戦略

エアバスA350導入までボーイング一辺倒に等しかったJAL。世界的にJALのようなフルサービス航空会社は、機材発注時にメーカーを分散するのが一般的で、価格交渉だけでなく機体に不具合が起きた際の欠航を抑えるリスクヘッジにつながる。

ボーイング機として18年ぶりの発注となった737MAXは現行機737-800の発展型であることが選定の大きな要因となった。40機以上ある737-800の約半数をMAXに置き換えるが、今回重要視されたのは、国内市場の変化。新たに導入するA321neoは小型機A320neoの胴体延長型だが737の後継機ではなく、国内線を飛ぶ中型機767の機材更新に充てる。A321neoは767よりも座席数が2割程度減少するとみられるが、日本の将来的な人口減やコロナで縮小した出張需要など現行機を導入した時代とは状況が変わってきたことが大きい。

小型機なら臨時便で増便するなど小回りが利く。特に地方路線を維持するには、空席ばかりで飛ばし続けることは避けなければならない。そしてA350とA321
neoはコックピットに共通性があり、時間がかかるパイロットの機種移行訓練なども短縮できる。既存機をそのまま置き換えるのではなく次世代機が飛ぶ20年後を見据えた決断だ。

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ボーイング 737-8

●全長:39.52m ●巡航スピード:マッハ0.79●エンジン:LEAP-1B(CFMインターナショナル製)●席数:2クラス162~178(カタログ値)●航続距離:6,570km(カタログ値)

737 MAXの標準型で737-800の後継機として2026年から21機導入予定。JALがボーイングの新機材を発注するのは18年ぶりで、新型エンジンや翼端のウイングレット、胴体後部の形状見直しで燃費とCO2排出量を約15%改善できる。機内Wi-Fiサービスはインテルサットのシステムを採用する。

 

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エアバス A321neo

●全長:44.51m ●巡航スピード:マッハ0.82●エンジン:LEAP-1A(CFMインターナショナル製)またはPW1100G-JM(プラット・アンド・ホイットニー製)●席数:2クラス180~220(カタログ値)●航続距離:7,400km(カタログ値)

国内線用767の後継機で2028年から11機導入予定。A321はJAL初導入で、大型機A350とコックピットの設計に共通性を持たせてあり、パイロットの機種移行時に時間短縮ができる。日本の人口減少やコロナ後の国内出張が戻りきらない状況が続く可能性を視野に、小型で効率のよいA321neoに置き換える。

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ANAの787型機の保有は100機以上!貨物輸送も視野に入れた大型機の導入

コロナ禍で旅客需要が〝蒸発〟した一方で急増したのが航空貨物だった。通常は旅客機の床下貨物室で運んでいる貨物が旅客便の大量運休で運べなくなった。加えて海運では貨物コンテナが不足するなどの混乱が生じ、貨物部門を持つ航空会社は旅客収入の落ち込みを貨物で補うことができた。

ANAも貨物特需の恩恵を受けた一社で、貨物機を保有していることが奏功した。ANAは旅客型の777Xを20機発注していたが2022年7月に2機を貨物型の777-8Fに発注変更。現在は中型貨物機の767Fを9機、1機当たり約2倍の貨物が運べる大型機の777Fを2機保有しており、大型機を増やすことで1便当たりの輸送力を向上させる。

貨物機だけでなく旅客機も増やす計画で、30年度には主力のボーイング787型機を100機超に拡大する。国際線と国内線両方に導入している787を現状より20機程度増やすことで、既存路線の輸送力拡大や新路線開設につなげる。小型機は既に新型エンジンを採用したエアバスのA320neoを11機、A321neoを22機導入済みで、25年度からはボーイング737MAXを最大30機受領する計画。大型機はホノルル専用で総2階建てのA380を除きボーイングに統一しているが、小型機はエアバスとほぼ半々にする計画だ。

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ボーイング 777-9

●全長:76.72m ●巡航スピード:未発表●エンジン:GE9X(ジェネラルエレクトリック製)●席数:2クラス426席(カタログ値)●航続距離:13,500㎞

次世代大型機777Xの旅客型。ANAは2機種ある777Xのうち胴体が長い777-9を777-300ERの後継機として発注し、2025年度以降に18機受領する見通し。長距離国際線を中心に投入を計画している。貨物型の777-8Fも28年以降に2機導入を予定している。この機体は往年のジャンボ機、747-400の貨物型とほぼ同等の積載能力を持つ。

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BOEING 737-8

●全長:39.52m ●巡航スピード:マッハ0.79●エンジン:LEAP-1B(CFMインターナショナル製)
●席数:2クラス162~178(カタログ値)●航続距離:6,570㎞(カタログ値)

737 MAXの標準型で2025年度から最大30機導入予定。39機運航している国内線機材737-800の後継機で、確定発注が20機、オプション(仮発注)が10機の契約を結んだ。現行機は166席(プレミアムクラス8席、普通席158席)で近い仕様になりそうだ。燃費とCO2排出量を約15%改善できる。

 

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