コロナ禍からの再始動とともに日本の国際線と国内線に新フラグシップ機が登場した。世界的にCO2排出量削減などが求められるなか、どのような空の旅を提案するのか。
Pen最新号は『エアライン 最新案内』。2020年のパンデミックによって、エアラインを取り巻く環境が大きく変わった。リモートが普及し、CO2削減が人々に浸透した現在、円安を考慮しても航空券価格は世界的に高騰している。最新ビジネスクラスは、以前のファーストクラスのようなサービスや価格へと変化し、安いが不便だったLCCは、「ちょうどいい」ハイブリッドエアラインへと進化する。エアラインの最新を知れば、新しい時代の旅が見えてくる。
『エアライン最新案内』
Pen 2024年8月号 ¥990(税込)
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コロナ禍を経て、快適性を重視した新たな空の旅へ
日本の空がコロナから本格的に復活した2024年。航空大手2社のフラグシップ機が就航した。1月に日本航空(JAL)が国際線にエアバスA350‐1000型機、3月に全日本空輸(ANA)が国内線にボーイング787‐10型機を相次ぎ投入。低騒音やCO2排出量削減といった環境性能を重視しつつ、いままでにない個室シートや大型画面で快適性を打ち出している。
JALが国際線旗艦機を刷新したのは20年ぶりで、ファーストクラスとビジネスクラスは同社初の個室を採用。ファーストは頭上の手荷物収納棚をすべて取り払った開放感あるキャビンに、日本家屋を意識した引き戸とプライバシーに配慮した157㎝もの高さがある壁でわずか6席の贅沢な空間をつくり出した。ビジネスも天井が広々とし、132㎝の壁と扉で個室感を高め、リビングのように過ごせる。そしてプレミアムエコノミークラスは初の電動化。エコノミークラスはモニターを大型化し4K対応13インチにした。
ANAは3機種あるボーイング787の中で胴体が最も長い787-10を国内線にも投入。13年前に世界で初めてこの機体を就航させ、標準型「-8」、胴体が約6m長い「-9」、12m近く長い「-10」のすべてを運航している。最新の787-10は置き換え対象の大型機777-200より胴体が長く、座席数も増えて429席。プレミアムクラスの快適性に加え、普通席も座り心地や大画面にこだわった。普通席はトヨタ紡織製で日本メーカーの航空機シートは珍しい。座面を低くし、どのような体格の人もフィットする着座感は快適だ。
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JALは機材メーカーを分散させ、20年後を見据えた新しい機体をそろえる戦略
エアバスA350導入までボーイング一辺倒に等しかったJAL。世界的にJALのようなフルサービス航空会社は、機材発注時にメーカーを分散するのが一般的で、価格交渉だけでなく機体に不具合が起きた際の欠航を抑えるリスクヘッジにつながる。
ボーイング機として18年ぶりの発注となった737MAXは現行機737-800の発展型であることが選定の大きな要因となった。40機以上ある737-800の約半数をMAXに置き換えるが、今回重要視されたのは、国内市場の変化。新たに導入するA321neoは小型機A320neoの胴体延長型だが737の後継機ではなく、国内線を飛ぶ中型機767の機材更新に充てる。A321neoは767よりも座席数が2割程度減少するとみられるが、日本の将来的な人口減やコロナで縮小した出張需要など現行機を導入した時代とは状況が変わってきたことが大きい。
小型機なら臨時便で増便するなど小回りが利く。特に地方路線を維持するには、空席ばかりで飛ばし続けることは避けなければならない。そしてA350とA321
neoはコックピットに共通性があり、時間がかかるパイロットの機種移行訓練なども短縮できる。既存機をそのまま置き換えるのではなく次世代機が飛ぶ20年後を見据えた決断だ。
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ANAの787型機の保有は100機以上!貨物輸送も視野に入れた大型機の導入
コロナ禍で旅客需要が〝蒸発〟した一方で急増したのが航空貨物だった。通常は旅客機の床下貨物室で運んでいる貨物が旅客便の大量運休で運べなくなった。加えて海運では貨物コンテナが不足するなどの混乱が生じ、貨物部門を持つ航空会社は旅客収入の落ち込みを貨物で補うことができた。
ANAも貨物特需の恩恵を受けた一社で、貨物機を保有していることが奏功した。ANAは旅客型の777Xを20機発注していたが2022年7月に2機を貨物型の777-8Fに発注変更。現在は中型貨物機の767Fを9機、1機当たり約2倍の貨物が運べる大型機の777Fを2機保有しており、大型機を増やすことで1便当たりの輸送力を向上させる。
貨物機だけでなく旅客機も増やす計画で、30年度には主力のボーイング787型機を100機超に拡大する。国際線と国内線両方に導入している787を現状より20機程度増やすことで、既存路線の輸送力拡大や新路線開設につなげる。小型機は既に新型エンジンを採用したエアバスのA320neoを11機、A321neoを22機導入済みで、25年度からはボーイング737MAXを最大30機受領する計画。大型機はホノルル専用で総2階建てのA380を除きボーイングに統一しているが、小型機はエアバスとほぼ半々にする計画だ。
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