定時運航を支える、ANAの空と地上の個性豊かなスタッフ

  • 写真:竹之内祐幸、藤井由依
  • 文:石井 良
Share:

SNS戦略で未来の顧客=若い世代からの支持を伸ばすANA。そこには、私たちの快適な空の旅を支え、生き生きと働くスタッフの姿がある。

Pen最新号は『エアライン 最新案内』。2020年のパンデミックによって、エアラインを取り巻く環境が大きく変わった。リモートが普及し、CO2削減が人々に浸透した現在、円安を考慮しても航空券価格は世界的に高騰している。最新ビジネスクラスは、以前のファーストクラスのようなサービスや価格へと変化し、安いが不便だったLCCは、「ちょうどいい」ハイブリッドエアラインへと進化する。エアラインの最新を知れば、新しい時代の旅が見えてくる。

『エアライン最新案内』
Pen 2024年8月号 ¥990(税込)
Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら

現場スタッフの姿をSNSで配信し、身近に感じてもらえる存在へ

12_20240521_PEN_DSF7044 (1).jpg

グランドスタッフのおもな業務のひとつがチェックインカウンターでの旅客対応。

ANAのSNSが面白い。そんな声が巷で聞かれるようになったのは、2021年頃から。

InstagramやTikTok、YouTubeをのぞいてみると、確かにユニークな投稿が目立つ。客室乗務員(CA)が業務の合間にダンスを披露していたり、パイロットのステイ先(片道フライト後の宿泊先)にカメラが密着していたり……。そこには、普段乗客である私たちには見えない楽しげなスタッフの姿が映し出されている。

そんなSNS戦略で興味深いのは、投稿づくりにスタッフが積極的に参加していること。ほとんどの企画から撮影、編集までを社内でまかなっているというから驚きだ。しかし、だからこそ画面越しでもスタッフの個性が存分に伝わってくるのだろう。

ANAがSNSに力を入れるようになったきっかけは、コロナ禍だった。航空需要が落ち込むなか、顧客との関係を絶やさないため、社員の顔が見えるコンテンツを発信することで、身近に感じてもらうことを目指した。

その結果、総フォロワー数は合計で150万人以上も増加。現在では約504万人にフォローされている。スタッフたちの多様な個性が魅力となって、親しみを感じてもらえた結果だろう。

さて、改めて投稿を見てみると、さまざまな職種が登場していることに気が付く。パイロットやCAだけでなく、整備士やグランドハンドリングスタッフなど、縁の下の力持ちにもスポットライトが当てられているのだ。普段、乗客として飛行機に乗るだけでは関わることはないが、実はこんなにも多くのスタッフがいるのだということを再認識させられる。

飛行機の安全と定時運航は、航空会社の最重要課題。それを支えているのは、一人ひとりのスタッフだ。乗客の命を預かる仕事に真摯に向き合っているのはもちろん、誇りをもって仕事を楽しんでいる。彼らは普段、どんな仕事に、どんな想いで取り組んでいるのか。知れば、細やかなサービスを受ける快適な空の旅に、よりありがたみを感じるだろう。

ここからは、現場で活躍するANAのスタッフたちを紹介。空の旅の案内人たちの声を聞いてみよう。

---fadeinPager---

【グランドスタッフ】いくつもの役割を担い、サービスを極める“空港の顔”

ANA_11.jpg
高月奈美さん

空港カウンターでのチェックイン、搭乗ゲートでの案内などの接客から、バックオフィスでの運航管理など多岐にわたる業務を担うグランドスタッフ。

「よりよいサービスを提供するため、業務ごとにさまざまな社内資格があり、キャリアも枝分かれしています。私は最近ANAスイートラウンジで業務するコンシェルジュの資格を取りました」と高月さん。

より高度な接客が求められる現場で日々奮闘中だとか。「接客が大好きで、いろいろな方と関われるこの仕事を目指しました。今年で11年目ですが、接客の道に終わりはないと実感する毎日。もっともっとスキルを磨いていきたいと思っています」

ANA_8.jpg
ANA_10.jpg
左:空港内で迷っている乗客の案内も定時運行になくてはならない業務。時には搭乗ゲートまで案内することも。 右: 日本の航空業界の制服で、印象的なのがスカーフ。巻き方に厳密なルールはなく、スタッフごとに好みや気分で巻き方を変えているのだとか。高月さんは入社以来、先輩に教わったというこのスタイルを貫いている。

【キャビンアテンダント】安全で心地よい空間をつくる、おもてなしのスペシャリスト

q1.jpg
河野真愛さん

「幼い頃から飛行機に触れる機会が多くあり、いつか世界とつながる仕事がしたいと思っていました」

客室乗務員歴5年目の河野さんは、多い日で1日4便の乗務をこなす。

「保安要員として機内の安全を守ることが客室乗務員の重要な役割です。目的地に到着した後はすぐに次の便の出発となるため、業務はスピードが命。乗務員同士はよくOKサインで連携を取っているので、今度飛行機に乗られた際は注目してみてください」。そんな彼女の宝物は、仕事中に小さな子どもの利用客からもらった手紙だとか。

「いつも鞄に入れて乗務しています。お客様からの感謝の言葉はどれも宝物。力が湧いてきます!」

【パイロット】使命に燃えるキャプテンは、人の想いも一緒に運ぶ

9_IMG_2092 19.44.41 (1).jpg
池町昌信さん

ANAの主力機であるボーイング787の機長として活躍する池町さんは、業務システムの開発にも参画するなど、社内での信頼も厚いベテランだ。

「飛行機は人の想いも乗せています。ビジネス、旅行、帰省。乗る理由はさまざまです。そういった方々のお手伝いをできるパイロットは、自分の一生をかけるにふさわしい仕事だと思っています」。

そんな彼は、機内アナウンスにも心を配る。

「実は話す内容やタイミングはパイロットに委ねられているんです。ビジネス路線、リゾート路線など便によって性格が異なるので、その都度路線に合ったアナウンスを考えますので、ご搭乗の際はぜひ耳を傾けてみてくださいね」

7_20240508_PEN_38214.jpg
フライトの前後には、飛行経路プランのサポートをする運航支援者とブリーフィングを行い、より安全で快適に飛べる航路を選択する。
10_20240508_PEN_6327 (1).jpg
ANA_6.jpg
左: ジェットエンジンのブレードを加工したネクタイピンがお守り代わり。「付けるのがフライト時のルーティンです」 右:機長か副操縦士かは制服の袖を見ると一目瞭然。機長は4本のライン、副操縦士は3本だ。

【整備士】複雑な構造を熟知し、安全な飛行機を送り出す職人

あ_20240521_PEN (1).jpg
北村友記さん

外装や躯体部分など、重要箇所の不具合やダメージを点検・修復する構造整備部門を担当する北村さん。

「バードストライクや落雷など、機体は飛行中に皆さんの想像よりも多くのダメージを受けています。修理マニュアルに載っていない対応が必要になる場合が多くあり、知識と経験が試されます」

時には技術スタッフと連携し、航空機メーカーと最善の修理方法を導き出す、まさに職人だ。「私は業務上、直接お客様と接することは少ないですが、安心してご利用いただけるようやれることはすべてやりたいです。気を引き締めるため、いつも自分の家族を乗せる気持ちで仕事に向かっています」

ANA_7.jpg
機体は基本的に「ドック」と呼ばれる大型倉庫のような空間で整備。少しのミスも見逃さないよう、些細なことでも整備士同士で話しやすい雰囲気が保たれている。
16_整備② (1).jpg
機内の内張を剥がし、外壁の裏側を点検する場面。ファスナー(ネジ)にゆるみはないか、すべてに目を光らせる。

【グランドハンドリング】駐機場で飛行機の離着陸をサポート、定刻をつかさどる最後の砦

ANA_14.jpg
中野さん

飛行機の誘導から貨物の積み込みと搬出、ターミナルと航空機をつなぐ搭乗橋の運転など、飛行機が安全かつ時間通りに離着陸できるようにサポートするのがグランドハンドリングの仕事だ。

「父親がこの職に就いていて、子どもの頃から憧れでした」と語るのは入社7年目の中野さん。

「作業の一つひとつに資格が設けられていて、多いと100以上を保有する人もいるんです。かなり緊張感のある職場ですが、担当する便を定刻通りに送り出せた時には、大きな達成感を感じますね。滑走路へ向かう飛行機を見送る際、機内のお客様が手を振ってくれているのはちゃんと見えていて、やりがいにつながっています」

19_【149-1】マーシャラー (1).jpg
手信号で飛行機を駐機場へ誘導するマーシャリングは花形業務。「パイロットと連携して機体を操るのが醍醐味です」
20_GH (1).jpg
駐機場を走るトーイングトラクター。別名マメタグ。荷物の入ったカートやコンテナを牽引する。他にも、飛行機を押して動かすトーイングカーなどを運転する。

Pen0628売_表紙_CMYK (1) (1).jpg

『エアライン最新案内』
Pen 2024年8月号 ¥990(税込)
Amazonでの購入はこちら
楽天での購入はこちら