天然小国杉の天井が生む、極上の居心地を実現した阿蘇くまもと空港のラウンジ

  • 写真:斎藤誠一
  • 編集&文:渡邊卓郎
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機材やサービスが進化しているように、空の玄関口も旅行者に優しく、多様な進化を遂げている。評判の世界4空港を取材した。第三回は、2023年にオープンし、これまでの無機質な空港とは一味違う、ハードとソフトの両面において、利用客に心地よさを追求した空港である阿蘇くまもと空港について。

Pen最新号は『エアライン 最新案内』。2020年のパンデミックによって、エアラインを取り巻く環境が大きく変わった。リモートが普及し、CO2削減が人々に浸透した現在、円安を考慮しても航空券価格は世界的に高騰している。最新ビジネスクラスは、以前のファーストクラスのようなサービスや価格へと変化し、安いが不便だったLCCは、「ちょうどいい」ハイブリッドエアラインへと進化する。エアラインの最新を知れば、新しい時代の旅が見えてくる。

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木の豊かさを感じる、オーガニックな質感を大事にしたラウンジ

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小国杉100%の合板が生む心地いい空間。ショッピング&グルメスペースと搭乗ゲートの位置関係はシームレスな移動体験をもたらす。

新しくなったばかりの阿蘇くまもと空港の搭乗待合エリアは、「無機質」と表現できる場所がまったくない。まるでリビングにいるような心地よい空間は、いたるところに木の存在を感じる。日本の空港でこれほどオーガニックな質感の空港があっただろうか。

天井には熊本県産の天然小国杉を100%使用した構造用合板が一面に施工されている。天然木材の持つ風合いを感じられるようにと、合板の表面は無塗料で仕上げられているため、2023年3月のオープン当初からしばらくの間は、空港内に天然小国杉の爽やかな香りが漂っていたそうだ。

国内線・国際線共用となる搭乗待合エリアは搭乗ゲートとの距離がとても近く設計されているのも大きな特徴。保安検査場を抜けた先に広がるショッピング&フードスペースには、曲線状にゆったりと配置された25の店舗がある。ここを回遊するように巡り、熊本ならではのグルメや土産物探しを搭乗の直前までゆっくりと楽しむことができるのだ。

この空港は搭乗待合エリア内のラウンジにも注目したい。航空会社カード会員と提携クレジットカード会員の全社共通の設備「ラウンジASO」は、落ち着いたトーンの照明の演出も加わり、温かみがありつつ開放的な空間で、エアラインが提供する上級会員用のラウンジと肩を並べるほどの心地よさ。阿蘇に拠点を置くライフスタイルブランド「FIL」による小国杉製のチェアが置かれたコーナーもあって、空間にアクセントを加えている。全体的に熊本城を象徴する「黒」をテーマカラーとしたことでスタイリッシュな空間を形成することに成功したのだろう。

2016年に熊本地震で被災したのち、復興のシンボルとして全面建て替えの計画が進み、民営化された阿蘇くまもと空港。その成り立ちが他の空港にはない個性をつくりあげた。商業施設を多く手掛ける三井不動産などが株主ということもあって、利用客の動線などを徹底的に計算した末に居心地のよさが生まれた。

ハードとソフトを現在の利用客の目線でアップデートした熊本空港は、いままでの無機質でひたすら明るい空港とは明らかに違う。リビングのように落ち着ける新しい熊本空港に、ぜひ足を踏み入れてほしい。

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登場待合エリア内の「ラウンジASO」。阿蘇天然水仕込みのビールが一杯無料などのサービスも行う。テーマカラーの黒と木材によって落ち着いた空間になっている。
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阿蘇、小国町などの協力を得て、杉を素材にした家具が多く配置されたレストスペース。さまざまな形状の椅子に座り、小国杉の魅力を体感することができる。
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空港内クラフトビール専門店「ウィッチズ ビア フライト」。熊本県産を中心にしたビールが味わえる。「ウィッチズ・フライト」缶¥930、タップ(大)¥1,500
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天草を拠点に飲食店を展開する「福伸」が経営する「鮨 福伸」では、天草の海で獲れた地魚や生の本マグロを堪能できる。「本まぐろづくし」¥2,090

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阿蘇くまもと空港

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利用客数:3,241,876人(年間/2023年)/便数:国内・国際線合わせて約80便(1日)/広さ:37,800㎡/市内中心地までのアクセス:約40分
外観は熊本の象徴である熊本城をデザインモチーフとして設計。熊本城の黒がテーマカラーとなっているだけでなく、城の漆喰壁にも使われている伝統的な塗り壁や、熊本の木材がふんだんに使用されるなど、地域のアイデンティティを空港全体から感じることができる。空港利用者だけでなく、地域に暮らす人も楽しむことができる「そらよかパーク」が2024年秋に開業予定。

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