広島で注目の新しい酒米を使った「天寶一」は、フレッシュな果実味と軽やかな味わい【プロの自腹酒 vol.21】

  • 文:山内聖子
  • 写真:榊 水麗
  • イラスト:阿部伸二
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天寶一(てんぽういち)/天寶一 萌えいぶき純米酒

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「改良雄町」と「なつほのか」という品種を掛け合わせてできた「萌えいぶき」は、温暖化にも適応できる耐暑性がある酒米。心白が大きく、酒米の王者・山田錦と同じくらい高精米(高級酒)に向いている酒米として、広島で開発され、注目を集めている。そんな酒米を100%使用したこの酒は、ブドウを思わせるフレッシュな果実味があり、軽快な味わいが魅力。「特に青菜系の野菜と合う」と店主。しっかり冷やして飲みたい。720mL ¥1,320/天寶一 TEL:084-962-0033

広島県出身の「ほじゃひ」店主・疋田多賀志さんにとって、地元の酒は人生の相棒である。公私ともになくてはならない存在だ。

「広島はおいしい日本酒が多いのに、蔵元はアピールが苦手な人が多い。だから僕が広島酒の素晴らしさをもっと世間に広めていきたい」

その郷土愛は広島の蔵元たちも公認するほど。地元酒の魅力を発信する若手として、多くのつくり手に支持されている。

そんな店主の自腹酒はやはり広島の日本酒。

「ひとつだけ取り上げるのは猛烈に悩みます」と困った表情を浮かべながらも、なんとか選んでくれたのが「天寶一(てんぽういち)」の純米である。この酒は広島で20年以上ぶりに新しく誕生した品種「萌えいぶき」という酒米を使用しているのが特筆すべき点。蔵元である村上康久が先陣を切って昨年からこの酒米を使い、試行錯誤の上にようやくリリースにこぎつけた一本だ。

「気付いたら減っているような、飲み飽きない酒です。清涼感があって、フレッシュな果実味があるところも好き。後口のキレも抜群なのでスルスル飲めますよ。暑い季節に飲むのにもぴったりです。それに、新しい酒米を使って酒づくりに挑戦した蔵元に想いを馳せながら飲めば、もっとお酒が進んでしまいます」

お薦めのおともは、なんと“人”である。

「自分が楽しいと思う雰囲気で飲むのがいちばん。そう考えると、ひとりで黙々と飲むのも悪くはないですが、気のおけない好きな仲間と想いを共有しながら飲めば、お酒がさらにおいしくなります。このおともはどんなつまみにもかないません。お酒って同じ空間にいる人と連帯を生みますよね。その連帯感がある輪の中で飲むと、お酒はやはりいいなあと思います」

店主はそう言いながら天寶一を手に取り、酒瓶を愛おしむように見つめていた。

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気心が知れた酒仲間と、心ゆくまで盃を重ねる

店の仕事が終わって天寶一を飲む時は、常連客やアルバイトのスタッフなどの酒仲間が最高のおともになる。近年は天寶一の蔵元ジュニアも加わった。つい飲み過ぎることも。

疋田多賀志

本格お好み焼きと広島地酒の酒場店主。広島から直送する麺を使ったお好み焼きのほか、鉄板でつくる旬の素材を使ったつまみが人気。店で扱う酒はすべて酒蔵を訪れて選んでいる。

ほじゃひ

住所:東京都品川区東五反田1-12-9 8
TEL:03-3445-8223

※この記事はPen 2024年8月号より再編集した記事です。