進化を続ける唯一無二のムーブメント! 「9Rスプリングドライブ」を搭載するグランドセイコーの傑作3選

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:篠田哲生
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グランドセイコー「信州 時の匠工房」にほど近い諏訪湖をダイヤルで表現した、9Rスプリングドライブ搭載モデル「SLGA019」

「スプリングドライブ」はセイコーが着想から20年以上もの年月を費やして開発した、ゼンマイ駆動とクオーツ回路を融合させた自己完結型の高精度ムーブメントだ。1999年の発表後、さらに5年をかけてグランドセイコーの冠を付すにふさわしい性能を実現させたのち、満を持して2004年に誕生したのが「9Rスプリングドライブ」である。

グランドセイコーの9Rスプリングドライブ搭載モデルは、伝統的な機械式の魅力に現代の実用性を融合させた、高級腕時計のひとつの究極形と言える。この特別な機構を搭載した、色彩豊かなモデルを3本お薦めしよう。

9Rスプリングドライブ躍進を決定づけた名作の意志を継ぐ、「雪白ダイヤル」のモデル

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SBGA211 /2005年にデビューし、9Rスプリングドライブ搭載モデルとして一躍ヒットした名作「SBGA011」の後継機。自動巻き(スプリングドライブ)、ブライトチタンケース&ブレスレット、ケース径41㎜、パワーリザーブ約72時間、シースルーバック、10気圧防水。¥902,000

回転錘で巻き上げたぜんまいを動力源に、回転運動を利用して発電。そのわずかな電力で水晶振動子やIC回路を動かし、針の動きを適切なスピードにコントロールする。「スーッ」と流れるスイープ運針を特徴とし、ぜんまい駆動ながら圧倒的な高精度を実現する「スプリングドライブ」は、1999年にデビューしたセイコーの独自機構である。そしてさらに研究開発を進めることで、約72時間のロングパワーリザーブを実現した「Cal.9R65」が、2004年よりグランドセイコーに搭載されている。

伝統的な機械式モデルや高精度のクオーツ式モデルとも異なるスプリングドライブ式モデルは、スイスブランドとは異なる独自の存在としてデビュー当初から好評を博した。そして、その人気を確実なものとしたのは、2005年にデビューした「SBGA011」の登場だろう。美しい凹凸で表現したダイヤルは、硬く締まった雪面に現れる風紋をイメージしたもの。「雪白」と命名されたこのダイヤルデザインは、海外でも「スノーフレーク」と呼ばれて話題となり、結果としてグランドセイコーがグローバルブランドへと歩みを進める第一歩となった。

またスプリングドライブ式ムーブメントの特徴である、静かに流れるスイープ運針のブルースチール秒針は自然をモチーフとするダイヤルデザインとの相性もよく、グランドセイコーの美的表現の方向性が明確になった。つまりこの「SBGA011」こそが、グランドセイコー躍進のきっかけとなったのだ。

2017年、グランドセイコーの独立ブランド化のタイミングで「SBGA211」として再登場し、現在も定番モデルとして愛されている。

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「Cal.9R65」は2004年に初登場。グランドセイコー初のスプリングドライブムーブメントで、巻き上げ機構や省電力IC開発などによって、約72時間のロングパワーリザーブを実現。仕上げも美しい。
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職人が手仕上げした金型をつかった型打ち技法によって、繊細な凹凸をつくる。8時位置にパワーリザーブ表示を収めるスタイルは初期からのもので、ダイヤルの美しさを損なわず残量確認ができるデザインが愛されている。

 

「SBGA211」の詳細はこちら

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歴史的ケースデザインに、桜色のダイヤルが映える

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SBGA443 「花筏(はないかだ)」と呼ばれる桜色のテクスチャーダイヤルが独自の魅力を放つ。ムーブメントは同じく「Cal.9R65」を搭載。自動巻き(スプリングドライブ)、ブライトチタンケース&ブレスレット、ケース径40㎜、パワーリザーブ約72時間、シースルーバック、10気圧防水。¥946,000

9Rスプリングドライブ式ムーブメントという新たな技術を手にしたグランドセイコーだが、歴史の継承も軽んじることはない。

グランドセイコーではシャープな平面を活かした「44GS」から始まるデザインコードを大切にしているが、もうひとつの定番ケースデザインとなるのが、1967年に発売されたグランドセイコー初の自動巻きモデル「62GS」だ。多面的なケースサイドの造形はていねいなザラツ研磨から生まれ、その形状を活かすようにベゼルを設けず、ボックスガラスの風防を組み合わせている。その結果、ダイヤルが広くなるため、現在のグランドセイコーが得意とする日本の美や自然を映し込むダイヤル表現とも好相性だ。

2022年11月にデビューした「SBGA443」は四季をさらに6分割し、「二十四節気」のひとつ「春分」に合わせて、桜の花びらが川に浮いている「花筏(はないかだ)」の情景を型打ちダイヤルで表現した。メンズウォッチでピンク色というのは意外だが、まずはアメリカ市場で先行発売して人気を集め、その後日本で正式展開されたというからさらに驚きである。

しかし、ダイヤルの華やかな表現とそれを活かすケースデザイン、そして独自性の高いスプリングドライブ式ムーブメントという組み合わせは、グランドセイコーだからこそ可能なもの。高級腕時計としての表現を広げる美しいメンズウォッチだ。

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多面構造のケースサイドは、面ごとにポリッシュとヘアラインで仕上げ分けて立体感を表現。熟練の職人技で生み出すグランドセイコーらしいディテール。風防はレトロなボックス型を採用。
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繊細な表現とカラーリングで、水面に広がる桜の花びらを表現。直接的なデザインではなく、ぼんやりと情景を思わせることで見る者の創造力を刺激するのもグランドセイコーの魅力だ。

「SBGA443」の詳細はこちら

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風にゆらぐ"水面パターン"のダイヤルと、進化したスプリングドライブ

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SLGA019 /「Cal.9RA2」を搭載、パワーリザーブは120時間まで延び、インジケーターは裏蓋側に移った。自動巻き(スプリングドライブ)、ブライトチタンケース&ブレスレット、ケース径40㎜、パワーリザーブ約120時間、シースルーバック、10気圧防水。¥1,463,000

必ず人の手から生まれる高級腕時計は、製造地の文化や伝統が色濃く反映される。だからスイスやドイツの時計ブランドの多くは、創業地や製造地をダイヤルに明記している。しかしグランドセイコーはもっとつつましく、そして美しく“場所”を表示する。

グランドセイコーにはふたつの製造拠点がある。9Sメカニカル搭載モデルは岩手県・雫石の「グランドセイコースタジオ 雫石」、そして9Rスプリングドライブ搭載モデルは長野県・塩尻の「信州 時の匠工房」で製造されている。

9Rスプリングドライブ搭載モデルの多くは、「信州 時の匠工房」の周辺にある自然や風土をダイヤルデザインに反映させることで、腕時計に特別な個性を加えている。「SLGA019」は、工房から東南に位置する諏訪湖の風にゆらぐ水面をダイヤルで表現しており、ネイビー色は静寂に包まれた早朝の一瞬を描き、その美しいダイヤル上で静かに秒針が流れていく。このように時計が生まれる場所をダイヤルで表現するグランドセイコーの美学も、世界から評価される理由となっている。

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「Cal.9RA2」は2021年に初登場。「オフセットマジックレバー」で薄型化しつつ、大小の香箱をふたつ配置した「デュアルサイズバレル」でロングパワーリザーブ化を実現。堅牢さを高めるワンピースセンターブリッジも特徴だ。

「SLGA019」の魅力はそれ以外にもある。搭載されているのは、2021年に登場したスプリングドライブ式ムーブメント「Cal.9RA2」。パワーリザーブは薄型ながら約120時間(約5日間)という長時間持続を実現している。また、パワーリザーブ表示を裏蓋側に配置することで、ダイヤルにすっきりとした印象をもたらしている。

また外装デザインは、歴史あるデザインコード「グランドセイコースタイル」を発展させた「エボリューション9スタイル」を採用し、審美性と視認性、装着性を向上させている。高性能ムーブメントとモダンなデザイン、そして個性的なダイヤル表現の融合によって、グランドセイコーはさらなる高みを目指しているのだ。

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左:シースルーバックから「Cal.9RA2」が見えるがパワーリザーブ表示の位置にもかなりこだわった。 右:「エボリューション9スタイル」では、ケースへのヘアライン仕上げがつくり出す中間の美を大切にしている。

「SLGA019」の詳細はこちら

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