東京都写真美術館にて開催中の『いわいとしお╳東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ』。メディアアーティストで絵本作家でもある岩井俊雄(いわいとしお)が、自らのメディアアートと、原点となる19世紀の映像装置をつないで見せるユニークな展覧会だ。その見どころを紹介したい。
独自のメディアアートを切り開きつつ、絵本作家としても活躍
1962年に生まれ、幼少期からアニメや特撮テレビに夢中となり、パラパラ漫画や電気工作などに親しんだ岩井。高校の時に古川タクの作品集で驚き盤を知って衝撃を受けると、大学入学後に本格的な創作をスタートさせる。そして原体験のパラパラ漫画と19世紀の映像装置への興味、さらにコンピューターや映像機器を取り入れた独自のメディアアートを切り開いていく。一方でいわいとしおとして絵本作家として活動すると、「100かいだてのいえ」シリーズが販売部数累計400万部を超えて大ヒットするなど人気を博した。
ハンズオン展示も充実。貴重な19世紀の映像装置を一挙公開!
東京都写真美術館がコレクションする19世紀の映像装置の展示が充実している。映像装置の黎明期だった19世紀は、現代の身の回りにあふれる写真や動く映像のルーツとも言えるが、会場ではゾートロープやシネマトグラフといった特に重要と思われる発見や映像装置を紹介し、その連鎖の歴史をひもといている。またこうした装置は文化財のために触れることは叶わないが、プリミティブメディアアーティストの橋本典久の協力のもとに制作された多くのレプリカを展示することで、実際に触れて動かしながら、仕掛けや視覚的効果を楽しむこともできる。---fadeinPager---
メディアアートの先駆的作品《時間層》シリーズとは?
岩井が大学在学中の1985年から1990年にかけて制作した《時間層》シリーズは、メディアアートの先駆的作品だ。このうち《時間層II》とは、120体の紙の人形を並べた円盤をモーターで回転させ、円盤上部に画面を下向きに設置したテレビからストロボ光を照らすと、すべての人形がダンスをするように動き回るイリュージョンが生まれるもの。「第17回現代日本美術展」の大賞を受賞した。なお計4点の《時間層》シリーズは、長らく展示の機会を得ていなかったが、メディアアート研究者である明貫紘子の協力のもと修復され、実に25年ぶりに揃って展示された。
19世紀のイメージを現代のテクノロジーでアップデート
グランドピアノとコンピューターグラフィックスを融合させた《映像装置としてのピアノ》や、ゾートロープを進化させた《立体ゾートロープ》 など岩井のメディアアートは、体験しているとついつい時間を忘れてしまうほど遊び心に満ちている。この他にも「100かいだてのいえ」シリーズの原画や、描き下ろしのメインビジュアルを合わせ鏡の立体作品にした《巨大かがみの100かいだてのいえ》も公開。19世紀のイメージを現代のテクノロジーでアップデートさせる、岩井によるチャレンジングな展示を見逃さないようにしたい。
『いわいとしお╳東京都写真美術館 光と動きの100かいだてのいえ―19世紀の映像装置とメディアアートをつなぐ』
開催場所:東京都写真美術館 地下1階展示室(東京都目黒区三田1-13-3)
開催期間:開催中〜2024年11月3日 (日・祝)
http://www.topmuseum.jp/