アメリカン・エキスプレス(以下、アメックス)が、地域活性化を目指して街の小さなビジネスを応援する取り組み「SHOP SMALL」。その一環として行われているプログラム「RISE with SHOP SMALL」が今年も実施され、受賞者が決定。9月25日に記者説明会が行われ、アメックス副社長の津釜宜祥(つがまのりよし)さん、および受賞者の一部が登壇し、その取り組みについて語った。さらに本記事では、今回の受賞者のうちの1組である、有名温泉街での過疎化に立ち向かう二人の若き起業家の挑戦にも注目した。
アメックスが街の小さなビジネスを応援
新たな名産品や魅力的な店舗が地域に人を呼び込んだり、新たなビジネスの創出によって地域に雇用が生まれたり、地域の活性化はもちろん、地域が抱える課題を解決する力も秘めたスモールビジネス。そうしたスモールビジネスの支援に、10年以上前から力を入れてきたのがアメックスだ。
アメックスが多彩な取り組みを通じ、街の小さなお店をバッキング(応援)するプログラムが「SHOP SMALL」。もともとは加盟店や行政、NPO、そして企業が連携して地域の小さなビジネスを支援し、地域のコミュニティや経済の活性化を促そうという取り組みとして、米国から始まった。
「『SHOP SMALL』はリーマンショックで大きなダメージを受けたアメリカのスモールビジネスオーナーを、全社を挙げて支援しようと始まったプログラムです。その後にイギリスやオーストラリア、台湾や日本などへと広がりました。独自調査で浮き彫りになった、資金面や経営ノウハウ、集客や情報発信についての悩みなど、スモールビジネスオーナー様が抱えるさまざまな課題に対して、当社がどのように支援できるのか。チームで検討を重ねながら、毎年さまざまな施策を行っています」
そう話すのは、アメックスの加盟店事業部門マーケティング アジア太平洋地域副社長の津釜宜祥さん。日本での「SHOP SMALL」は、2017年に横浜で加盟店でのキャンペーンなどを展開する取り組みとして始まり、その後は全国へと拡大。2022年にはそうした取り組みの一環として「RISE with SHOP SMALL」が誕生した。
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地域を元気にし、街を多様なものにする
「RISE with SHOP SMALL」では、全国のスモールビジネスオーナーから応募を募り、毎年のテーマに即して受賞ビジネスを決定。受賞した方は、支援金やメディアを通じた情報発信などのサポートを受けることができる。
第1回目では女性ショップオーナーの支援にフォーカスされたが、昨年からは「ALWAYS WELCOME」をテーマに、さまざまなダイバーシティに配慮したお店づくりやビジネスへの支援に対象を拡大。
「地域のスモールビジネスを支援することで、日本のそれぞれの街を多様にし、地域の活性化に貢献していきたい」
記者発表会でそう津釜さんが話した通り、第3回目の開催となった「RISE with SHOP SMALL 2024」でも、ダイバーシティに配慮したお店づくりや地域の活性化に挑戦しながら、それぞれに個性豊かなビジネスを創出する7組が受賞。それぞれのビジネスオーナーへの支援が決まった。
障がい児と健常児の双方を対象にしたインクルーシブ・ブランドを運営する京都の企業、株式会社Halu代表取締役の松本友里さん(A賞、500万円相当の支援) や、北海道で最も小さな村の新たな名物として期待されるジェラート店「Gelateria the GreenGrass」代表の名徳知記さん(B賞、200万円相当の支援)、子を持つ親の体験から創出された子ども靴の定額制レンタルサービス「Kutoon」を運営する谷口昌優さん(B賞)など、受賞者たちの顔ぶれはまさに多様。
各地で光を放つスモールビジネスをアメックスのような企業が支援することは、コミュニティや経済の活性化などを通じた地域への貢献という点で大きな意義を持つものだ。
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過疎化する有名温泉地を、スモールビジネスで活性化!
多彩な面々が受賞した今年の「RISE with SHOP SMALL 2024」。なかでもPenが注目したのが、有名温泉街の過疎化に立ち向かう株式会社Yugeの挑戦だ。
山形市で今年5月に創業した株式会社Yugeは、同市の蔵王温泉出身の岡崎博門さんと日本やアメリカで都市の開発や再生に関わってきた井上貴文さんが、過疎の進む蔵王温泉街に活気を取り戻すべく起こした“まちづくり会社”。
「賞をいただけて大変うれしいのと同時に、きちんと事業を前進させていかなくてはならないというプレッシャーや覚悟につながった」(岡崎さん)、「受賞できたことは、我々の事業の方向性が間違っていなかったのだという確信にもなりました」(井上さん)
そう受賞の喜びと感想を語る二人は、大学時代の同級生。家業として蔵王温泉で老舗温泉旅館を営む岡崎さんは、当時から漠然と「いずれは蔵王温泉のために貢献したい」という思いを抱いていた。一方の井上さんも、岡崎さんの案内で学生時代から何度も蔵王温泉を訪れ、街の変化を目の当たりにしてきたという。
「ピーク時で約2000人だった人口もいまでは約300人までに減り、街にはどんどん明かりが少なくなっていきました。温泉やスキー、樹氷などを目当てに国内外から観光客は多くいらっしゃるのですが、事業承継がうまく進んでいない上、コロナで地元の飲食店などがどんどん閉店し、街の活力が急激なスピードで失われていたのです」
負のスパイラルに陥った街の明かりを、これまでのキャリアで培ってきた知識や経験、ノウハウを使って取り戻したい。そんな二人の思いから生まれたYugeでは、遊休不動産などを利活用した“まちづくり”に挑戦する。
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観光客も地元住民もわくわくできるまちづくり
海外の観光客向けにデザインされた観光地とは違い、蔵王温泉には古い温泉街の風情が残る。
「国内外から訪れた方々に蔵王温泉という土地を楽しんでもらうため、ローカルな素地を大切にしながら街を整えていけば、観光で来る外国人も日本人も、そして地元の人々もわくわくするような環境がつくれるのではないかと考えています」
井上さんがそう話す通り、Yugeが目指すのは、地元に住む人と外から訪れる人のニーズや価値観をミックスした、多様性に応えるまちづくり。その第一歩として、来年1月には温泉街の玄関口にある築60年の遊休不動産をリノベーションし、事業の拠点となる場を創出する。
老舗商店の跡地を改装した店舗のテナント部分に入るのは、温泉街の新たな名物として開発された温泉饅頭「湯気の通り路」を提供する饅頭茶屋「高湯饅頭 湯ノ香」と、蔵王温泉の人や食材、歴史にフォーカスを当てた「山形蔵王温泉食堂」。店内だけで完結しないオープンな設計の施設を通じ、街を歩く人々との関係を深め、地域コミュニティの結節点となることを目指していく。今回のアメックスからの支援金(最大500万円)は、改装や運転資金の一部に充てられる予定だ。
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企業が小さなビジネスを応援することの意味
「今後も閉店した店舗の跡地への飲食店などの誘致など、小さなリテールを通じて街の活性化に貢献したい。また、地域に残る名産品の創出や、それらの事業を通じた地域コミュニティの再生にも取り組んでいきたいと考えています。そのためにも、今後はともに闘ってくれる多くの仲間が必要ですが、我々だけでは事業の足元を固めることに必死で、広報にまで手が回っていないのが現状でした。多くのタッチポイントを持つアメックスさんのような企業が応援してくださることは、外部への発信という点でも大きな意味を持つと考えています」(岡崎さん)
「我々のような小さな事業者が、日々のあれこれを自らの手で行いながら、事業の火を消さないように薪をくべつづけることはなかなか難しい部分もあります。今回のように、アメックスさんに資金面と広報面のご支援をいただけることは心強く、事業を推進させていく原動力となるものだと思っています。私たちのように楽しみながら挑戦する大人を見て、挑戦しようと思う次世代の方々に刺激を与えられれば大変うれしいです」(井上さん)
過疎化が進む有名温泉街に、明かりを取り戻すための起業家たちの挑戦。街の小さなビジネスを応援するアメックスの取り組みが、地域に活力を生むスモールビジネスを後押しする。
アメリカン・エキスプレス 「SHOP SMALL」