「大人の名品図鑑」アメリカ大統領編編 #3
11月5日の決戦の日が迫っている。4年に一度行われるアメリカ大統領選挙の投票日だ。ドナルド・トランプ前大統領が再びその地位に返り咲くか、あるいはカマラ・ハリス副大統領が「ガラスの天井」を破り、女性初の大統領に選ばれるのだろうか。今回の名品図鑑は、歴代アメリカ大統領が愛用した名品を集めてみた。
現代では時計は時刻を知るという本来の目的よりも、身に着ける人の社会的地位、あるいは個人の趣味嗜好を表す役割がある。アメリカ大統領の場合は、当然のことながら前者の意味合いが強いだろう。
では歴代アメリカ大統領はどんな時計を身に着けていただろうか。代表的な例を挙げておこう。ロレックスを愛用していたのは、アイゼンハワー、レーガン、ケネディ、ジョンソン、トランプ、バイデン大統領など。ケネディ元大統領はロレックス以外にもオメガ、カルティエ、ブローバなどのいくつもの時計を愛用していた。トランプ前大統領は、ロレックス以外ではパテック フィリップやヴァシュロン コンスタンタンなどの高級時計を着けていると報道されている。
意外な時計が多くの大統領に愛用されている。スイスの老舗メーカー、ヴァルカンの「クリケット」だ。1947年に発表されたモデルで、アラーム音が「ジリリリ」とコオロギの鳴き声に似ていることから、「クリケット」と名付けられた。太平洋戦争中のトルーマンから、戦後のアイゼンハワー、ニクソン、ケネディ、ジョンソン大統領にも愛用され、「大統領の腕時計」と言われた。多くの人々が朝起きるときにこの時計のアラーム機能を使っていたと言われているが、大統領が愛用した目的もそうだったのだろうか。
多くの大統領はいわゆる高級時計を愛用していたが、第42代大統領のビル・クリントンが身に着けたのが、アメリカの時計メーカーであるタイメックスの「アイアンマン 8ラップ」というモデルだ。93年の大統領就任式でも、マーティングリーンフィールドで仕立てたと思われる最高級のスーツにこの時計を合わせていた。このスタイルは物議を呼び、当時の『ニューズウィーク』誌は「テクノロジー・オタク」と評し、『ワシントン・ポスト』紙は「見苦しい汚点、歪な物体」と揶揄したと言われている。彼のスタイルは、いまならどう評されるだろうか。社会にカジュアルスタイルが浸透したいまでは「よくぞ合わせた」と絶賛されるだろうか、それとも同じく厳しい評価を受けるだろうか?
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当時斬新だったグレーメタリックのタイメックス
クリントン元大統領はランナーでもあったので、機能優先でこの時計を選んだのかもしれない。あるいは選挙戦も戦略が大事と、アメリカ生まれの時計メーカーを愛用することで、愛国心や親しみやすさを演出したのかもしれない。彼が愛用したこのタイメックスはその後スミソニアン博物館に寄贈され、アメリカの歴史の一部に加えられている。ちなみに第41代大統領のジョージ・W・ブッシュは同ブランドのシンプルな「イージーリーダー」を愛用、大統領愛用の時計ではいちばん安価な時計かもしれない。
「アイアンマン8ラップ」が生まれたのは、1986年。デジタルウォッチは黒一色という時代に、グレーメタリックのボディに斬新なデザインで登場した。デザイナーのジョン・T・フーリハンはゼネラルモーターズ社のカーデザイナーだった人物で、彼のひらめきによってクルマと同じ塗料を使い、スポーツカーのようなグレーメタリックが施されたという。
当時の先進スペックであった8ラップのメモリー機能や100m防水、走りながらも操作しやすい大きなフロントボタンなどの特徴を備え、その優れたデザインと操作性によって、発売初年度で40万本も売り上げるという驚異的なヒットを記録し、「世界で最も売れたスポーツウォッチ」と言われている。最近、日本のセレクトショップとコラボレーションした同モデルも発売されているが、今年の9月からは99年に発売した「アイアンマン フリックス100」も復刻されている。ファッションは90年代ブームが続いている。30年近く経ってまたこれらの時計が新鮮に見えてきたということなのだろう。
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