若者の代弁者として80年代の音楽界を駆け抜けたシンガーソングライター尾崎豊。26歳で夭折した彼の腕時計は、息子の尾崎裕哉が受け継いでいる。35歳となった今、父の形見となった腕時計を手に何を語るのか。
Pen 2024年12月号の第1特集は『100人が語る、100の腕時計』。腕時計は人生を映す鏡である。そして腕時計ほど持ち主の想いが、魂が宿るものはない。そんな“特別な一本”について、ビジネスの成功者や第一線で活躍するクリエイターに語ってもらうとともに、目利きに“推しの一本”を挙げてもらった。腕時計の多様性を愉しみ、自分だけの一本を見つけてほしい。
いつも力を与えてくれる、父・尾崎豊の傷だらけの形見
これまで、人生の節目ごとに腕時計を購入してきたという尾崎裕哉だが、彼が腕時計に対して興味を抱くきっかけとなったのが、二十歳になった時に母親から亡き父・尾崎豊の形見として手渡された、「ブルガリ・ブルガリ」だ。
「父が晩年に愛用していたもので、よく同じブランドのネックレスやブレスレットと合わせて着用していたそうです」
その姿は、死の直前の取材で、最後のインタビューとされる『ロックンロール・ニューズメーカー』の記事にも残されている。
「腕時計は特にヴィンテージのものが好きで、気に入っているお店の在庫状況は、常にネットでチェックしています。ツアーで地方に行った時に、そういうお店を巡るのも楽しみのひとつなんです」
他にも、ロレックス、パテック フィリップ、カルティエなどの時計を多数所有している尾崎だが、最近は、そのコレクションの断捨離を考えているそうだ。
「35歳になったいま、いろんなものを使うよりも、本当に好きなものがひとつあれば、それでいいと思えるようになってきました。そう考えた時に、やっぱり最終的に手元に残しておきたいと思うのは、このブルガリ・ブルガリみたいに、自分とパーソナルなつながりのあるものなんです。特にこの時計は、僕にとっては心強いお守りのようなもの。大事なステージで父の歌を歌う時には、いつも大きな力を与えてくれています」
イエローゴールドのケースに刻まれた傷痕の一つひとつに、亡き父の面影を感じる形見の時計は、これから先も、新しい時を刻み続けていくことだろう。
BVLGARI / ブルガリ「ブルガリ·ブルガリ」
『100人が語る、100の腕時計』
Pen 2024年12月号 ¥990(税込)
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