北海道の木彫り熊が歩んできた、知られざる歴史をたどる 【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】『開講!木彫り熊概論 歴史と文化を旅する』

  • 文:印南敦史(作家/書評家)
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【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『開講!木彫り熊概論 歴史と文化を旅する』

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北海道大学大学院文学院 文化多様性論講座 博物館学研究室/田村実咲編著 文学通信 ¥2,420

かつて家庭の応接間や居間に、北海道の木彫り熊が飾ってある光景をよく目にしたものだ。なのに私たちの多くは、それほどメジャーな存在だったこの土産品についての詳細を知らない。そこで、大正時代末期に誕生し、戦前から戦後の北海道観光ブームに乗じて道内外各地で制作・販売された木彫り熊に関心を持ってもらい、その価値を再発見してもらおうと書かれたのが本書である。道内に広がるルーツを徹底的に検証した第1章は特に興味深く、伝承の経路をたどる以降の章へと関心は誘導されることになるだろう。

※この記事はPen 2024年12月号より再編集した記事です。