この秋に開催されたノルケインの新作発表会では、"ノルケイナー"と呼ばれるふたりの日本人トップアスリートが壇上に上った。ブランドと共鳴するのは飽くなき挑戦心。スイス時計業界に新たな旋風を巻き起こす注目ブランドの最新作について、ノルケインのトビアス・カッファー副社長に話を伺った。
高品質とアフォーダブルをスケルトンで表現
初対面の挨拶をかわすと「トビーと呼んでください」と屈託のない笑顔を向けた。それもファミリーブランドならではの親しみやすさだろう。だがそこには、CEOである兄ベンとともにビジネスを推進する、強い意志と情熱が秘められていることはいうまでもない。
そんな自分の道を貫く勇気にインスパイアされたコレクションの新作が「インディペンデンス スケルトン 42MM グレー」だ。サンドブラストされたケースには堅牢なリューズガードを備え、力強さを強調する。オープンワークが施されたスケルトンのグレー文字盤には、レッドゴールドカラーが指針やインデックスにあしらわれ、シックに調和する。
「私たちが最初にスケルトンを採用したのが2021年です。理由は個性的なデザインをアピールすることはもちろんですが、最高の品質を最適価格で提供するというブランドの姿勢を明らかにしたかったからです」とカッファーは説明する。
インディペンデンスというコレクション名には、独立系ブランドの自負が重なる。
「独立系であることは本当に重要なバリューで、人間にたとえれば自分らしく生きるということ。それは同時にチャレンジでもありますが、思いが通じるパートナーファクトリーとは100パーセントの信頼関係で仕事ができます。そこから私たちの時計が生まれるのです」
ブランドのイノベーションを象徴するフラッグシップの「ワイルドワン スケルトン 42MM」からは、2本の新作が登場。独自素材のノルテック(NORTEQ)を用いたモデルと、18Kレッドゴールドを使用したエクスクルーシブなスタイルを持つモデルだ。
グレーのノルテック素材を使用した新作は、チタン製コンテナに収めたムーブメントをラバー製ショックアブソーバーで保護し、ノルテックを用いたケージで挟むマルチピース構造のケースを採用する。
「ノルテックはカーボン複合素材で、本来割れやすいカーボンでも変形に強く、けっして割れません。さらに独自のケース構造によって5000Gの耐衝撃性を実現し、ゴルフ、テニス、野球、自転車競技、どんなスポーツの時につけても問題ありません。これをさらにスケルトン文字盤で軽量化し、重量はわずか78gです」
一方、18Kレッドゴールドを採用した新作は、チョコレートブラウンとのカラーハーモニーがとても気に入っているという。
「外装にゴールドを使い、重量は約100gですが、5000Gの耐衝撃性は変わりません。それだけのタフネスをエレガントなスタイルに秘めています。これらの新作ではスイス出身のプロアイスホッケー選手、ローマン・ジョシをアンバサダーに起用しました。トレーニングやリンク外でもシームレスに使え、まさに彼のライフスタイルにふさわしいと思います」
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日本へのリスペクトを捧ぐ限定モデルが登場
ブランド創業時のファーストコレクションとして発表した「アドベンチャー スポーツ」から、日本限定の新作が登場し、2色の文字盤が用意された。レギュラーモデルがスポーティなセラミックベゼルなのに対し、ポリッシュで仕上げ、エレガントな光沢が際立つ。
「想定したのは初めてスイス機械式時計を使われるような方で、シーンや服装を選ばず、着けていただきたいと考えました。2色の文字盤を用意したのは日本からの提案がきっかけで、より選択肢を広げたいと思ったからです」
ミッドナイトブルーとアンスラサイトの2種類のカラーはそれぞれ異なる個性をアピールし、自分のスタイルに合わせて選ぶことができる。いずれの文字盤にもノルケインパターンを刻む。
「細部にも拘りたいと考えています。カレンダーディスクを文字盤と同色にしているのもそのひとつ。一般的には白や黒なのですが、それだと目立ち過ぎてしまいます。一方、同色なら自然に馴染むのですが、他の文字盤との汎用性がなくなり、手間やコストもかかる。それでも同色にしたのは時計づくりに妥協したくなかったからです」
トビアス・カッファーは、日本人の時計に対する情熱、品質と細部への探求に強く共感するという。日本限定に込められているのはそのリスペクトにほかならない。そして次世代に向けて、スイスの時計文化を継承し、さらに発展させたいというノルケインの大いなる挑戦とも共鳴するのだ。