21_21 DESIGN SIGHTで開催中の『ラーメンどんぶり展』。それはラーメンの歴史や丼のさまざまな要素を解剖しつつ、クリエイターらがデザインした「アーティストラーメンどんぶり」などを紹介する展覧会だ。ラーメン丼と美濃焼との知られざる関わりとは?
ラーメンと丼とは? 佐藤卓がデザインの観点から大解剖!
ラーメンは中国を起源としながら、日本で麺料理として発達して世界に広まり、もはや国民食といっても良いだろう。そのラーメン専用の食器である丼はとても身近なだけに、普段、かたちや色柄を強く意識して見ることは少ない。しかし本展では、グラフィックデザイナーの佐藤卓が、ラーメンの見た目や香りにはじまり、丼の色、触感、重さなど多様な切り口にてラーメンと丼を徹底解剖。中には丼を叩いた時の音の響きや、土から丼がどのように作られているのかについても紹介され、そもそもラーメンと丼とはいかなる存在なのかを余すことなく学ぶことができる。一番外側の情報であるラーメンという名称からスタートし、次第に強度や構造といった丼を成立させる要素を解析していくようなアプローチも興味深い。
お気に入りの丼を探そう!40組のクリエイターによる「ラーメンどんぶり」
ラーメン店の定番である赤のれんの下に「アーティストラーメンどんぶり」がずらりと並んでいる。これは40人のクリエイターたちがラーメン丼とレンゲをデザインしたものだ。うち10点は新作で、同館ディレクターの深澤直人をはじめ、グラフィックデザイナーの祖父江慎、現代美術家の横尾忠則のほか、デザイナーの皆川明やアーティストの束芋、さらには画家のヒグチユウコなどが思い思いにデザインしたラーメン丼が、本人のコメントと合わせて展示されている。
また竹中工務店やデザイン事務所のTONERICO:INC.に加え、建築家の中原崇志も自由な発想によるラーメン屋台を公開。そのうち会場全体の構成を担った中原崇志は、「水路に屋台があったら?」をきっかけにした舟の形をしたユニークな屋台を展示し、建築物としての屋台の新たな可能性を示している。---fadeinPager---
ラーメン文化を支える、美濃焼の産地を紹介!
ラーメンと丼の解剖と「アーティストラーメンどんぶり」に続くのが、世界有数の陶磁器の産地として知られ、岐阜県の東濃地方西部で作られている美濃焼の展示だ。「ラーメンと丼の展覧会になぜ美濃焼が?」と思うかもしれないが、実は日本国内のラーメン丼の9割は美濃焼で出来ている。そこで本展は、美濃焼の窯業を発展させた最大の特長を「土をデザインする技術」と捉え、美濃ではどのような土を用い、どのような製品が生み出されたのかについてさまざまな資料を交えて紹介している。志野や織部、黄瀬戸といった伝統的な技法で作られた、地元の陶芸作家によるラーメン丼10点も見どころだ。素朴な佇まいの粉引の丼や、絵付けの華やかな赤絵の丼のいずれも魅力に満ちている。
日本一のラーメン丼コレクション。オリジナルのラーメンマップも公開
このほかでは日本一のラーメン丼コレクター、加賀保行が全国各地を巡って集めた約250点ものラーメン丼の展示や、サウンドデザイナー・映像ディレクターの岡篤郎による、ラーメン店の環境を思わせるような音のインスタレーションなども見どころのひとつ。デザインの観点からラーメン丼の面白さを発見しつつ、お気に入りの丼を探して歩くのも良いが、しばらくするとラーメンが無性に食べたくなるのも実際のところ……。そこで会場では鑑賞後にラーメンを楽しむべく、21_21 DESIGN SIGHT周辺のラーメンが食べられるお店を紹介するオリジナルのラーメンマップも公開している。ラーメン×デザインを切り口に、美濃焼の産地までを紹介する『ラーメンどんぶり展』へとお腹を空かせて出かけたい。
企画展『ラーメンどんぶり展』
開催期間:開催中〜2025年6月15日(日)
開催場所:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
開館時間:10時〜19時 ※入場は18時半まで
入場料:一般 ¥1,600
www.2121designsight.jp