横尾忠則から田名網敬一まで! 1960年代後半〜70年代にかけて日本の芸術界を席巻した、アングラブームを振り返る

  • 文:門倉奈津子
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年表とともに圧巻の資料数でアンダーグラウンド文化を紹介する。展示風景:『MAM リサーチ 011:東京アンダーグラウンド 1960-1970 年代―戦後日本文化の転換期』森美術館(東京)2025 年 撮影:古川裕也 画像提供:森美術館(東京)

六本木ヒルズにある森美術館にて、『MAMリサーチ011 : 東京アンダーグラウンド 1960-1970年代 ー 戦後日本文化の転換期』が開催されている。

それまでの「前衛」に代わって、最先端の芸術の集合点となった「アンダーグラウンド」、通称「アングラ」は、アメリカから実験映画を通じて日本に入り、美術、音楽、漫画、デザイン、演劇、舞踏などの分野にも広がり、わずか数年で一般社会に認知されるほどの流行となる。しかし、当時のベトナム反戦運動や安保闘争といった反体制運動と交わって定着したために、運動の衰退とともに1970年代前半には消えてしまった。

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アンダーグラウンド文化初期に開催された映画イベントのポスターからも時代の空気感が伝わってくる。『草月シネマテーク:アンダーグラウンド・シネマ 日本・アメリカ』ポスター 1966年 デザイン:細谷 巖 画像提供:慶應義塾大学アート・センター

現象としては短命だったが、アンダーグラウンド文化は戦後日本社会に大きな影響を与え、今日でもひとつの様式として残っているといえるだろう。また、この文化は、その性質上、物理的な「作品」よりも一時的な「出来事」に注目し、その担い手を受け入れる「場所」を重視。そのため、アンダーグラウンドは時代の雰囲気として捉えられ、その実態はいまだに解明されていない。

本展は、1960年代後半から70年にかけて、東京の都市空間を中心に日本の芸術界を席巻したアンダーグラウンドの盛衰をテーマに、それを伝えるに相応しいエフェメラ(一時的な使用を目的とした印刷物)を含む多くの資料を展示する。作品リストには当時の出版物やポスター、演劇やパフォーマンスの記録写真や台本、チラシなどが並ぶ。これらの資料を読み解くことで、アンダーグラウンドの歴史や思想と担い手たち、そしてその広がりと限界を詳細に振り返ることができるだろう。

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アンダーグラウンド文化は、映画、芸術、漫画、演劇などさまざまなジャンルで華開いたことが展示からもわかる。展示風景:『MAM リサーチ 011:東京アンダーグラウンド 1960-1970 年代―戦後日本文化の転換期』森美術館(東京)2025 年 撮影:古川裕也 画像提供:森美術館(東京)
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横尾忠則が手がけた表紙のアートワークが目を引く。『別冊 キネマ旬報 8月号:アングラ '68 ショック編』 1968年8月10日 装画:横尾忠則 画像提供:横尾忠則、キネマ旬報社 ©横尾忠則

 

『MAMリサーチ011 : 東京アンダーグラウンド 1960-1970年代 ー 戦後日本文化の転換期』

開催期間:開催中〜2025年6月8日(日)
開催場所:森美術館
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー
開館時間:10時~22時 ※火のみ17時まで
https://www.mori.art.museum/jp/