ビンテージを愛する東京2ブランドが旗艦店をオープン、クリーンな空間に現代のライフスタイルを見た【着る/知る Vol.195】

  • 写真・文:一史
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ブラームスの運営会社による新店舗の一角。人物はショップスタッフ。

身体に負担なく快適に着られる日常着。デザインの源泉はワークやミリタリーなどのビンテージ。等身大で気取りのない装い。ブラームスとキャプテン サンシャインは、こうした服の担い手である。日本流大人スタイルのシーンを支えている。
セレクトショップへの卸しを中心に展開してきた彼らが、2025年3月に初のショップを誕生させた。店を設けたのはどのような理由からだろうか?実店舗に足を運ぶ客が得られる愉しみとは?そんな問いを胸に彼らの店を訪れてみた。そこには現代的な暮らしの姿を投影させた居心地いい空間があった。各ブランドが提示するハイセンスな服とライフスタイルをご覧いただこう。

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ブラームスと仲間が集う、END ON END.

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ショップ内でのブラームスのコーナー。

ブラームス(blurhms)及びブラームスルーツストック(blurhmsROOTSTOCK)を2012年より展開するワンダリズム(WONDERISM)のデザイナー兼代表の村上圭吾にとって、店を構えるのは長年の夢だった。店の実現に向けてブランド運営と同時に企画を温めてきた。その夢が東京・二子玉川にほど近い東急田園都市線の用賀駅から徒歩7、8分の理想的な物件と出会ったことでついに実現した。

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むき出しの天井と白い壁面で囲んだ内装。ビンテージ家具は村上デザイナーの私物やアンティークショップで買い付けたもの。テーブル上の麻のエプロン すべて¥15,400。

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倉庫のように広いワンフロアに、日中は自然光が差し込む。商品構成はシックからポップまでテイストが幅広い。

店舗は1階フロアで、4階までの上階はギャラリー運営も可能なショールーム、オフィス、ミシンや膨大な古着資料がストックされたアトリエ。ワンダリズムのすべてがこの建物に集まった。
ユニークなのはこの店のエンド オン エンド(END ON END. )がセレクトショップ業態であること。ブラームスとブラームスルーツストックは、店が選んだブランドのひとつと捉えられている。村上デザイナーが店のあり方を次のように語った。
「自身のブランドだけでは表現しきれない部分があり、セレクトショップにしました。頭の中でぐるぐる回っていたモノを形にして表現してみたかった。尊敬する方々(ブランド)の商品を揃えたり、服以外の違った目線で空間イメージをつくりたかった」
製造から小売までを完結できる空間がこの建物の全体像だ。

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店内奥に設置されたコーヒースタンド、モレンシーコーヒー(MORENCI COFFEE)。バリスタが常駐してハンドドリップで丁寧に抽出。アメリカーノやラテ用のエスプレッソマシンも装備。

住宅が多いローカルなエリアに出店したことにも理由がある。
「情報量が多すぎる場所が苦手で、ゆっくりできる地域が好きです。洋服屋の多い立地、モール、駅周辺ビルなど何でも揃っているいまの時代は便利で私自身も利用します。ですがそこに出かけるのは服を見に行くのが主目的でなく、ほかのたくさんの目的も加わってきます。それでいいとも思いますが、エンド オン エンドは『あそこの店に服を見に行こう』と思われるような、ゆっくりできるお店になればいいなと思っています」
ワンダリズムの旧オフィスは世田谷区の代沢にあった。古着屋が多い下北沢周辺ではあるものの、ファッションブランドのオフィスは少ない地域。ローカルな活動発想をさらに煮詰めた次なるステップが今回の新拠点だ。

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2点ともに店舗限定のブラームス別注アイテム。左 シルクリネンのカーディガンジャケット ¥67,100、右 同素材のイージーカーゴパンツ ¥49,500
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古着リメークブランドの佐々木洋品店からの仕入れアイテム。

エンド オン エンドの今季25年春夏取り扱いブランドは、バウト(BOWTE)、コム デ ギャルソン・シャツ(COMME des GARCONS SHIRT)、エドワード・グリーン(Edward Green)、ユーゲン(HEUGN)、佐々木洋品店、ブラームス、ブラームスルーツストック、エンド オン エンド のオリジナル。秋冬からはセヤ(Seya.)も加わる予定だ。どれも村上デザイナーが作り手に共感し尊敬するブランドばかり。Tシャツにフォーカスしたイベントを行ったり、店は常に動き続けている。覗くたびに新たな発見を得られるに違いない。

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ショップマネージャー与那嶺さんのパーソナルな着こなし。ショップ限定のシルクリネンのワークシャツをジャケットのように羽織り、足元は別注エドワード・グリーン。
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エドワード・グリーン別注シューズ。店では全4型を取り扱っている。右 ¥284,000、左 ¥ 259,600

大人の心を鷲掴みするアイテムが、イギリス紳士靴の頂点に位置するエドワード・グリーンへの別注シューズ。自分たちの店だからこそ本当にほしいもの、別注したいブランドへのオーダーが叶ったようだ。ワークウェア調の服や古着を着るときも、足元をエレガントにすれば品の良さが保たれる。大人こそ意識して取り入れたい着こなしテクである。

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この建物は店舗であり、社員が働くオフィスでもある。ワンダリズムの将来を見据えた発信拠点だ。

END ON END.
東京都世田谷区玉川台2-2-8
営業:12時〜19時
定休日:変動あり。公式サイトなどで要確認
TEL:03-5797-9710
www.instagram.com/end_on_end.official_/
https://end-on-end.com/

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南青山の隠れ家、キャプテン サンシャイン

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エントランスから入店して右側に位置する部屋。写真右の鏡に写ったスペースが試着室とグッズ類の棚。通路の奥にはスタッフルームがある。ガラス窓の屋外は中庭。

ビンテージの服をベースに、素材をシルクやカシミヤなどの高品位なものに置き換えるデザイン。デザイナーの児島晋輔が手掛けるキャプテン サンシャインは、高級な服と民主的な服との境界線をあいまいにする。どのような服でも大人趣味の逸品に変貌させていく。
これまでバブアー、ジョンスメドレー、カルーゾといったヨーロッパの老舗に加え、日本のゴールドウインともコラボしてきた。トラッドからスポーツまで変化する時代を捉えた柔軟な姿勢が小気味いい。
そんな同ブランドが03年の立ち上げ以来、初となる旗艦店を東京・南青山にオープン。骨董通りからさらに奥まった路地の先にある、デザイン事務所やアパレル会社が軒を連ねるエリアだ。

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涼しげなインディゴブルーから穏やかなベージュまでシックな色が並ぶ。洗いを掛けたこなれた風合いが多いのもキャプテン サンシャインの個性のひとつ。
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日本の季節感のある生花がクールな室内に彩りと温もりをプラス。メンズショップでも家族が暮らすリビングのように優しい空間演出が施されている。

ブランド10周年を通過した今年、児島デザイナーが狙っていたスタイリッシュな空間を手に入れて店舗オープンに至った。店内は主に2フロアで構成されている。服をメインに並べる白いメイン部屋と、グッズ類を置く試着室の部屋。室内には児島デザイナーが自ら選んだビンテージ家具が置かれ、上質なライフスタイルを演出。この店で彼が客に感じてほしいのはどのようなことだろうか?その問いの答えは以下の通り。
「心地よさを求めて素材からデザインしたキャプテン サンシャインのフルラインナップを、ゆっくり見て触り着てみてください。着心地のよさと、ほどよい質感を感じていただけるでしょう。店内空間作りやインテリアは、数々の旅や経験にインスパイアされたものです」

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服のラインナップは主にこのメインフロアで展開。写真右側の窓外にはコンパクトな中庭があり、客が希望すれば外に出られる。

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ゆったりと羽織るライトブルーのデニムジャケット。¥59,400

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手仕事が込められたインドのプリント生地を使った薄手のカバーオールジャケット。¥85.800

服のコレクションは大半がキャプテン サンシャインのオリジナル。明るくカジュアルな色が充実する一方で、黒が基調のダークカラーも取り揃える。ブランドの持ち味であるこなれた風合いの服を、クールなモノトーンで都会的に着られるのだ。品数豊富な直営店だからこそ自分流の自由なコーデができる。これまでセレクトショップで探して購入してきた人こそ訪れる意義があるだろう。
服に組ませるグッズ類は、児島デザイナーがセレクトした英国ビンテージジュエリーや、リプロダクション オブ ファウンドへの別注ジャーマントレーナー、アメリカのコンフォートなオーロラシューズなど。店に行ったときは一捻りあるグッズ類も逃さずチェックしておきたい。

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ショップスタッフが着た春の装い。茶系の色味が今年らしい感性だ。カバーオールジャケットのインナーに同素材のベストを重ね着。

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道路に面する大窓から見える室内は、グッズ類と試着室の部屋。試着室を優雅な空間にした理由について児島デザイナーは、「試着して購入を悩む時間が一番楽しいとき。そのひとときをいい時間にしてほしい」と語った。

KAPTAIN SUNSHINE FLAGSHIP AOYAMA

東京都港区南青山5-18-10 1F
営業:12時〜20時
定休日:月
TEL:03-6712-6830
www.instagram.com/kaptainsunshine/?hl=ja

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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