「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2025」(以下、キョウトグラフィー)の会場記録をお届けしているブログ記事の第3回目は、お待たせしました、フランス人アーティスト&活動家のJR(ジェイ・アール)さんです。
上は2025年5月11日に写真展が終了したあとも展示され続けている巨大ボード。
このコラージュ写真こそが、今回キョウトグラフィーに招かれたJRさんのメイン作品であり、キョウトグラフィー最大の目玉でもある大作でしょう。
とてつもない労力で作られた作品です。
JRさんの市民参加型壁画シリーズ『クロニクル』の京都版。
過去にサンフランシスコ、ニューヨーク、キューバなどで同様の撮影と制作が行われてきました。
そのアーカイブに京都が加わったことになります。
京都版のスペックは以下です。
・登場人物:505名
・撮影場所:京都市内8箇所に設けた、移動式トラックスタジオ
・撮影形式:切り抜き合成用グリーン背景の前でのストロボ撮影
・作品形式:人物と京都風景との写真コラージュ
・備考:登場人物全員の自分語りを音声録音
・サイズ:横22.55×縦5メートル
デジタルデータ量どれくらい……!?
細かく分割して出力したデータをつなぎ合わせて完成させたようです。
総制作時間や経費は公表されていませんが、膨大なものと推察されます。
なおカメラ操作の撮影者は、JRさん自身ではないようです(舞台裏ムービーを観ての見解)。
とてもキャッチーでポップで、大勢の人に愛される作品でしょう。
登場者たち、その家族、友人、知り合いの人生に大いなる刺激となったのではないでしょうか。
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「すべての人を平等に」を理念に掲げた『クロニクル』のアーカイブ展、及び、京都のクロニクルを活用したもうひとつのアート展が、京都新聞社で開催されました。
こちらもインパクト大なビジュアルで、皆さんよくご存知かと思います。
505人の中から厳選された10名が巨大パネルとなりました。
来場者はツアー形式でスタッフに案内され、ひとまとまりで中央の通路を歩くインスタレーションです。
照明が落とされた暗い状態から始まります。
人物が手前から順に、スポットライトで照らされていきます。
同時にその人物の自分語り音声が室内に流れます。
こういう人間で、こうやって生きてきて、こういう夢があって、といった内容。
音声が当人の日本語の声ですから、生々しさもあります。
登場した10名は、芸姑になる舞子、三味線奏者、藍染職人、チアリーディングが好きな小学生、将棋が得意な小学生、甲子園出場高校の球児、京都新聞社長、重度難聴者で手話で歌う(手歌)コーラスチームの一員、イベントプロデューサー、広島で被爆した女性。
とても特徴のある人たちです。
海外の人にも伝わりやすい日本人像でもあります。
JRさんが意図する社会メッセージの代弁者として選ばれたのでしょう。
いつまでも自分の記憶に残りそうなインスタレーションでした。
懸命に生きることの美徳を説くイデオロギーの濃い作品。
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京都新聞での展示会場で、まず最初に閲覧したのがこの部屋。
もうひとつの京都『クロニクル』です。
切り抜いた人物と新聞の紙面を合成し、絵巻物のように並べていった展示。
各都市版の『クロニクル』も展示され、都市ごとの違いを見られました。
わたしのような陰キャは、とてもじゃないけど参加できない世界です w
登場者はいろんなバックボーンを持つ人たち、とはいえ、皆が積極的にスタジオに入り自身の姿を撮ってもらっているワケですから。
ポジティブでキラッキラです。
あとひとつ気づいたのですが、どの都市でもドラァグクイーンが最上段のポジションなんですね。
京都版でも同じです ↓
現代的なDEI(diversity<多様性>、equity<公平性>、inclusion<包括性>)に基づく意図でしょうか。
ドラァグクイーンって、間近に見ると大迫力の人たち。
某百貨店の夜イベントで、スポーツ選手並の身長と筋肉の人たちが超ミニスカワンピでハイヒール履いて闊歩する真横をすれ違ったことがあります。
パフォーマーとして招待されたドラァグクイーン集団の、パワフルなエネルギーに圧倒されました。
JRさんも「ヤバい、カッコイイ!」と、意図せず各都市の最上段にコラージュしたのかもしれません。
京都市のモダンなビジネス街にある京都新聞社。
わたしは新卒時の職業としてファッション雑誌の編集者(出版社に就職)を選んだ者ですが、ジャーナリズムにも憧れがありました。
40歳で戦場で亡くなったロバート・キャパや、カルティエ・ブレッソンらのマグナム・フォト所属の報道写真家たちは、写真を“見ること”を好きになったルーツ(カメラいじりの趣味は小学生から)。
自分がカメラを構える撮影仕事でロケを好むのは、感覚の基本がスナップ、または報道だからだと思います。
そんなわたしでも正直な話、報道の要である新聞を定期購入していません。
新聞人の活動をお金でサポートしていないのに安易に「存続してほしい」などとは口にできない立場ながら、今回は展覧会を通じて新聞という存在を再び思い起こすことになりました。
JRさんの手のひらで転がされたのかもしれませんね!

ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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