夏休み、大阪万博へ行くなら“トワイライト”からが狙い目

  • 写真:富野かりん
  • 文:PEN編集部
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建築家・藤本壮介が設計を担当した大屋根リング。柱にスポットライトが当てられており、木組みの複雑な構造が幻想的に浮かび上がる。屋根の上からは、夕日やライトアップされたパビリオンを一望できる。

 大阪・夢洲で開催されている大阪・関西万博。この夏、このビックイベントを最大限に楽しむなら、「夕方以降」を狙うのが正解だ。日中は日陰が少なく、かなりの混雑で会場内を歩き回るのもなかなか大変。

それが、日が傾き始めると一変する。海から吹き抜ける風が心地よくなり、混雑も緩和。人気パビリオンも、20分以内で入場できるケースが増えるという。

そして日没後は、万博の建築群が“もうひとつの顔”を見せる時間帯。会場を取り囲む「大屋根リング」から見渡すと、色とりどりのパビリオンが最新のLEDでライトアップされ、まるで建築の万華鏡のような眺めが広がる。

さらに、ドローンショーや水上パフォーマンスなど、夜ならではの幻想的なイベントも次々と展開。パビリオンに入らずとも、お酒片手に、ライトアップされた世界の建築をみながら散歩するだけでも楽しい。

帰路は、西ゲートからの退出がおすすめ。東ゲートから入場し、夕方以降に西へと歩いていくルートなら、万博全体を横断しながら楽しむことができる。ショーの終了後は大混雑となるため、シャトルバスやタクシーの事前予約を活用すれば、快適な帰り道を確保できる。

夏の万博は、「日が落ちてからが本番」と心得て、のんびり光と建築をめぐる旅に出かけてみてほしい。

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シンガポール共和国のパビリオン。赤い球体の建物「ドリーム・スフィア」は、鱗のような表面が特徴的。上部の鱗には小さなライトが点いており、キラキラと輝くシルエットが美しい。

 

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手前の紫色の球体がオランダ王国のパビリオンで、奥がシンガポール共和国のパビリオン。オランダパビリオンの球体は、クリーンで無限のエネルギーを象徴する「人工の太陽」を表しているが、夜になると紫色に発光し、まるで月のよう。オランダの建築事務所RAU Architectsがデザインした。

 

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落合陽一がプロデュースした、シグネチャーパビリオン「null²」。表面に鏡面状の膜を張り、湾曲させた建物。内部にスピーカーやロボットアームが配置され、壁がぼこぼこ、ゆらゆらと動く。鏡面がスポットライトや周囲の建築物の光を反射し、不思議なゆらめきをつくっている。

 

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フランス共和国のパビリオンテーマは「愛の賛美」。劇場の舞台をモチーフにしており、正面エントランスがドレープで覆われているかのようなデザイン。リボンのように有機的なかたちをした階段が特徴的だ。夜にはドレープ部分が照らされ、ゆっくりと色が変化する。色のベースはフランス国旗色(赤、白、青)、そしてローズピンク。

 

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カタール国のパビリオンは隈研吾の設計。ダウ船(カタール伝統の帆船)と日本の指物技術からインスピレーションを受けている。建物の線が出るように下からライトを当てつつ、大屋根リングに設置したライトで建物上部を照らしている。シンプルな建造物のやわらかいシルエットが浮かび上がる。

 

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マレーシアパビリオンも隈研吾の設計。テーマは「調和の未来を紡ぐ」。伝統織物「ソンケット」をモチーフに、竹を使って組まれた建築物はやわらかな織物のように湾曲している。竹が重なる部分にライトが設置されおり、竹の隙間から光がこぼれ出るようなライティングだ。

 

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フィリピンパビリオン。テーマは「WOVEN」。手編みのラタンパネルと手織りのファブリックパネルが、建物表面を覆う。織物はフィリピンの文化、自然、人々の営みが織り交ぜられたような多様性を表現している。下からのライティングで表面の凹凸とディテールが強調され、夜になるとインパクトが増す建物だ。設計建築はフィリピンのデザイン事務所Carlo Calma Consultancy と、東京を拠点に活動する建築設計事務所cat。