ジャガー・ルクルトからブライトリングまで、ミラネーゼブレスレットの腕時計3選

  • 写真:渡邉宏基(LATERNE)
  • 文:並木浩一
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いま注目すべき腕時計をデザインの視点から切る、雑誌『Pen』で好評連載中の「並木教授の腕時計デザイン講義」。今回のテーマは「ミラネーゼブレスレット」。密かな盛り上がりを見せる、ミラネーゼブレスレットを要チェック!

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金属製でありながら、布のような織り目を見せるメッシュブレスレットがいま密かな盛り上がりを見せている。「ミラネーゼ」の愛称で呼ばれることが多いのは、金細工で有名なミラノ発祥の技術ゆえ、というのが定説だ1950〜60年代に大流行し、現在もヴィンテージ市場で根強い人気を誇っているが、近年のクラシック回帰やヴィンテージデザインの再評価の高まりを受けて、今年の新製品でも話題作が登場している。ケースやムーブメントの進化が成熟を迎えるなかで、各ブランドがブレスレットの開発に注力していることも背景に挙げられるだろう。

ミラネーゼは、ブレスレットといってもソリッドな印象はなく、薄くしなやかなテクスチャーはむしろレザーストラップに近い。とはいえ耐久性は段違いで、夏場を含め、使い勝手は申し分ない。ドレスウォッチにも合わせやすく、水への耐性の高さからスポーツモデルやダイバーズへの採用も進む。名だたるトップブランドがその魅力を再評価・再解釈し、ラインアップに加えるのも納得だ。

昔ながらのミラネーゼは、細いワイヤーを専用の機械でまさに「織る」ようにしてつくられていた。現在も熟練の専業メーカーが年季の入った「メタルの織機」で製作を続けているケースもあるが、最近ではごく小さなリンクを連結して多連のメッシュ構成にするのが一般的だ。ブレスレットそのもののファッション性が高まるなかで、美しさと触感の価値観が、いまミラネーゼの最前線で競われているのである。

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1.JAEGER-LECOULTRE(ジャガー・ルクルト)
レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド

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手巻き、18KPGケース&ブレスレット、ケース径45.6 x 27.4㎜、パワーリザーブ約42時間、3気圧防水。¥6,424,000/ジャガー・ルクルト TEL: 0120-79-1833

ゴールド製ミラネーゼブレスレットは、横に16連の織り筋で仕上げたもの。レクタンギュラーケースやグレイン仕上げのダイヤルとともに、完璧な一体感を描く。アールデコの傑作である「レベルソ」のスタイルにスモールセコンドを備え、ドフィーヌ針とバーインデックスも同色で統一した。本年の「ウォッチズ&ワンダーズ」でもひと際話題を呼んだ新作で、ジュエリー感覚でも纏える一本だ。

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2.OMEGA(オメガ)
シーマスター ダイバー300M

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自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径42㎜、パワーリザーブ約55時間、シースルーバック、30気圧防水。¥1,001,000/オメガ TEL:0570-000087

ジェームズ・ボンドが着用した「007 エディション」と同様に、ヴィンテージ感を引き立てる15連のメッシュブレスレットとドーム型風防を採用し、1960~70年代のレガシーを受け継ぐスタイル。ポリッシュ仕上げとサテン仕上げを施した、フォールディングクラスプ付きメッシュブレスレットは、長さを調整するための穴が開けられ、ダイバーズとしての実用性にも細やかな配慮がなされている。

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3.BREITLING(ブライトリング)
トップタイム B01 ファウスト・コッピ

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自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径41㎜、パワーリザーブ約70時間、シースルーバック、100m防水、世界限定750本。¥1,138,500/ブライトリング・ジャパン TEL:0120-105-707

ホワイトの文字盤にターコイズのサブダイヤル、オレンジの稲妻形秒針を備えたモダンレトロなデザイン。細やかな横19連のメッシュブレスレットは、全体の印象を完成させる切り札だ。自転車競技選手でイタリアの伝説の英雄であるファウスト・コッピは、ブライトリングが自転車競技の最高峰レースで公式タイムキーパーを務めていた時代のアンバサダーだ。

並木浩一

1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。近著に『ロレックスが買えない。』

※この記事はPen 2025年8月号より再編集した記事です

連載「並木教授の腕時計デザイン講義」