コーヒーが飲める“ラジオ放送局”。 サンパウロの音色が響く、「レディオ クルチューラ」が菊川に誕生

  • 写真:河内彩
  • 文:Pen編集部
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レディオ クルチューラ コーヒー アンド ギャラリー

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「レディオ クルチューラ コーヒー アンド ギャラリー」の店内。アートとサウンドが共鳴し合う、街の片隅の小さな“放送局”。

菊川に現れたレディオ クルチューラは、ブラジル・サンパウロに実在した放送局へのオマージュを冠し、音とアート、コーヒーが交錯する文化の小さな“発信基地”だ。店内には「ALTEC 9844」や「YAMAHA GT-2000」などをはじめとする70~80 年代のヴィンテージ機材が並び、針を落とせば日本や南米を中心とした音楽のセレクションが流れ出す。

棚に整然と並ぶ約1000枚のレコードは、すべて店主自らが長い年月をかけて蒐集したもの。そして特に注目すべきなのが、ここだけでしか入手できないオリジナル盤だ。たとえば最新作「DSCL-005」は、ウルグアイのレジェンド鍵盤奏者ウーゴ・ファトルーソと新世代の女性打楽器奏者アルバナ・バロカスによるデュオ「HA DUO」のアルバム『Puente』。オパ時代から世界を魅了してきたファトルーソのマジカルなキーボードワークはそのままに、コーラスやハーモニーをさらに洗練させた2023年新録の一枚だ。希少盤とともに、この場が独自の文化を発信する拠点であることを示し、訪れる者を高揚させる。

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棚の左上に並ぶのはオリジナル盤シリーズ。Kazuhiro Nishiwakiによる描き下ろしのジャケットもまた、音楽体験を豊かに彩っている。
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店内の奥に広がるのは、音楽を浴びながら身を委ねられる空間。店主の家に招かれたような温もりが特別感を添える。

壁を飾るのは、ストリートアートやスプレー、グラフィティーなど多様な表現たち。音だけでなく視覚にもリズムを与え、ミッドセンチュリー調の家具と相まって、まるで店主の部屋に招かれたような親密さが漂う。さらに、この空間ではラジオの公開収録も構想されており、“放送局”としても楽しむことができる。

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全自動ハンドドリップマシン「ポアステディ」で淹れられるのは、蔵前の人気ロースタリー「リーブスコーヒー」の豆を使ったコーヒー。
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左に輝く銀彩のカップは福村龍太の作。冷たいアイスを涼やかに。右は山田洋次の器で、温もりのあるホットをゆったりと味わう。

ここで欠かせないのがコーヒーだろう。蔵前の人気ロースタリー「リーブスコーヒー ロースタリー」の豆を使い、全自動ハンドドリップマシン「ポアステディ」で一杯ずつ丁寧に淹れるコーヒーは、空間に漂う音楽と調和して豊かな時間をつくり出す。

ただのカフェやレコードショップではなく、文化の“周波数”を街の片隅から発信する小さな放送局。耳を澄ませ、コーヒーを片手にすれば、まだ出合ったことのない音や文化に触れられるかもしれない。

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音に浸るも、アートに触れるも、ここを訪れればインスピレーションが静かに芽生える。
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多彩な機材を使い分けて鳴らす一枚一枚のレコード。音楽を愛する人だけでなく、初心者にとっても新鮮な体験になるはず。
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店主の審美眼が映し出す3盤。左は、ブラジルの巨匠パーカッショニスト、アイアート・モレイラによる『Fingers』(1973)。サンバとジャズをクロスオーバーさせ、後の南米フュージョンの礎を築いた名作。中央は、ウルグアイ出身のグループ、オパによる『Magic Time』(1977)。幻想的なキーボードと軽やかなグルーヴが響く、ラテンジャズの重要盤。そして右は、伝説の鍵盤奏者ウーゴ・ファトルーソと新世代打楽器奏者アルバナ・バロカスによるHA DUOの『Puente』(2023)。伝統からダンサブルなグルーヴまで網羅し、限定盤としてリリースされた最新作だ。

RADIO CULTURA coffee and gallery

住所:東京都江東区森下4-9-14 12ビル 1F
営業時間:15時〜21時 (水) 14時〜20時(日)19時〜22時(金、土※予約のみ)
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