2026年は、印象派の巨匠クロード・モネが逝去して100年目にあたる。モネが生まれ、暮らし、創作活動の大半を行ったフランス・ノルマンディーとパリ地方で、今年3月から約1年かけて100以上の関連イベントが開催される。近代美術の象徴的存在ともいえるモネの足跡をたどる旅に出かけてみてはいかがだろう。
モネ作品を堪能できる美術館へ
モネの傑作が数多く展示されているのはパリにある3つの名門美術館、オルセー、オランジュリー、マルモッタン。そして生誕の地であるノルマンディー地方の美術館にも主要コレクションが所蔵されている。今年は各美術館でモネに焦点を当てた企画展が開催。まずは主要な展覧会を紹介しよう。
1. 『睡蓮の前にモネが見つけたジヴェルニー、1883〜1890 AVENT LES NYMPHEAS. MONET DECOUVRE GIVERNY, 1883-1890』
ジヴェルニー印象派美術館
2026年3月27日〜7月5日
モネがジヴェルニーで新しい環境を探求した、その基盤となる数年間に注目する。展示室ではモネの視点から描かれた風景を鑑賞し、その後、美術館の周辺を散策することでモネの描いた風景を実際に辿ることができる。
2. 『ル・アーヴルのモネ MONET AU HAVRE』
ル・アーヴル アンドレ・マルロー近代美術館(MuMa)
2026年6月5日〜9月27日
モネの若き日々に焦点を当てる前例のない展覧会。幼少期のモネが家族とともにル・アーヴルに移住した1845年から、パリで第一回印象派展が開催された1847年までに描かれた80点の作品を紐解く。
3. 『風景画の歴史、モネからホックニーまで(1890年から2025年)HISTOIRES DU PAYSAGE DE MONET A HOCKNEY(1890〜2025)』
パリ マルモッタン・モネ美術館
2026年9月24日〜2027年1月31日
世界で初めてモネコレクションを所蔵した同美術館では、1890年から現代までの風景画に焦点を当てた特別展を開催。印象派の巨匠の作品を20世紀と21世紀の芸術家の作品と対比させながら紹介する。
4. 『モネと時間 MONET ET LE TEMPS』
パリ オランジュリー美術館
2026年9月30日〜2027年1月25日
オルセー美術館とマルモッタン・モネ美術館のコレクションを中心に、フランス国内外のパブリック/プライベートコレクションからの貸与作品を含む約40点のモネの絵画を厳選。とくに『睡蓮』の作品群に焦点を当てながら異なる時期を取り上げる。
このほか、ルーアン美術館やウジェーヌ・ブーダン美術館(オンフルール)でも、その土地にゆかりのある作品が展示されているので、ぜひ立ち寄ってみたい。
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モネの暮らした家で画家の私生活に触れる
パリ近郊からノルマンディにかけて、モネは生涯を通じて自らを取り巻く多様な風景やモチーフを探究し、それをキャンバスに描き出してきた。モネが人生の異なる時期に住んだ3軒の家が見学可能だ。ひとつ目は1871年、モネが家族とともにパリから移住したアルジャントゥイユ。現在は「印象派の家」として、没入型の見学コースを提案しており、『アルジャントゥイユのレガッタ』などの作品が生き生きと蘇る。
ピンクの壁に緑の鎧戸が目をひくアルジャントゥイユの家は、現在「印象派の家」として一般公開されている。 © Ville d’Argenteuil
ふたつ目はセーヌ川沿いにあるヴェトゥイユだ。ここにはモネがジヴェルニーへ移る前の1878年から81年まで住んでいた邸宅があり、2026年4月1日(水)より一般公開される。経済的に厳しく、最初の妻を亡くした場所だが、当時から変わらない周囲の風景はモネにとって尽きることのないインスピレーションの源であり、ここで100点以上の作品が生み出された。
3つ目は、1883年から40年以上暮らしたジヴェルニーの家。キッチンから寝室、ダイニングルーム、サロン兼アトリエまでが忠実に再現されている。また、画家が生涯をかけてつくり上げたジヴェルニーの庭はそれ自体がひとつの芸術作品であり、モネが計画したとおりいまでも季節に合わせて手入れがなされている。
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現代アートとのコラボは必見、ノルマンディー印象派フェスティバル
2年おきにノルマンディ地方で開催されている印象派フェスティバル。今年はモネ没後100年を記念した特別エディションが予定されている。5月29日から9月27日まで「庭園 モネへのオマージュ」と題し、ルーアン、カーン、ル・アーヴル、ドーヴィル、オンフルール、ヴェルノン、モン・サン・ミッシェルなど、ノルマンディ各地で視覚芸術、音楽、映画、ダンスなど60のイベントが開催。歴史に名を刻む現代アーティストが招聘され、庭を題材に作品を発表する。
日本人作家では中谷芙二子がオンフルールで霧の彫刻を、蜷川実花がルーアン大聖堂のライトアップを手掛ける。ほかにも写真家のサラ・ムーン、アーティストの蔡國強(ツァイ・グオチャン)や艾未未(アイ・ウェイウェイ)、セレスト・ブルシエ=ムジュノ、デザイン集団スタジオ・ドリフト、映像作家のジャック・ペルコントなどが参加予定だ。
Pedvale Open Air Art Museum, Sabile, Latvia, Photo:Ojars Feldbergs
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鉄道や自転車でモネの見た風景を追体験
19世紀の印象派の画家たちは、開通したばかりの鉄道を使ってパリ近郊やノルマンディを旅し、風景を発見していった。そんな画家たちの足跡をいまも追体験することができる。
パリのサン・ラザール駅から列車に乗ってルーアンやル・アーヴル、ヴェルノン、ジヴェルニーなど、モネゆかりの駅で下車したら自転車を借りて散策するのもおすすめ。とくにパリとセーヌ河口のオンフルール港を結ぶ500kmの道のりは「ラ・セーヌ・ア・ヴェロ」と呼ばれるサイクリングロードがあり、印象派の絵画ゆかりの地を巡る絶好のコースだ。
一方、ハイキングを楽しみたい人には2023年に開通した長距離ハイキングコース「印象派のセーヌ川」(GR)とノルマンディ地方のGR21がおすすめ。前者はシャトゥーからジヴェルニーまでの128kmを8つのステージで結び、道中ではヴェトゥイユの教会などモネにインスピレーションを与えた風景に出合える。後者はノルマンディ地方の海岸や断崖絶壁を横断するコースで、20年には「フランス人が好きなハイキングコース」にも選ばれた。
このほかにも各地で多彩なイベントが目白押し。今年は印象派を追体験する旅に出かけてみてはいかがだろう。