スイス
「自分の所有地に隠れ家を作りたい」。そんなクライアントからの依頼を受けた建築家が、コンパクトなツリーハウスをデザインした。スイス北部の森の中に建てられたこの家は、人と自然との生活をテーマにしたアメリカの作家、ヘンリー・デヴィッド・ソローへのオマージュでもあり、シンプルかつ実用的な大人の隠れ家となっている。
芸術家の森に誕生! 建築規制を受けない家
キャセッタ・テッシーノと名付けられたツリーハウスは、スイスのティチーノ州ロカルノ地区にある、オンセルノーネ渓谷の森に建てられた。この渓谷は、ティチーノ州の中でも特に印象的で神秘的な谷とされ、広葉樹の緑豊かな風景が特徴的だ。20 世紀には、自然に囲まれた環境が創作活動にぴったりだとして、有名作家や芸術家たちが集まり居を構えたため、アーティスト・コロニーとしても知られるようになった。
この渓谷に住むスイス人芸術家で気候変動活動家でもある人物が、自宅の敷地内で新たな居住空間の増設を計画したという。しかし地域の建築規制では、既存の建物への増築は不可で基礎工事も禁止だった。そこで依頼を受けた建築家オリン・ペッツォルドは、この規制を回避するため、地面ではなく木の上に家を建てるという型破りな解決策を考え付いた。
シンプルかつ自然の力を取り入れた設計 建設は DIY で!
プロダクトデザインを紹介するオンラインマガジン、ヤンコ・デザインによれば、ツリーハウスはクライアントの自宅から 150 メートル離れた所有地の森に、クライアント自身の手で建設されることになっていた。そのためペッツォルドは細部の簡素化と材料の軽量化に取り組み、経験の浅い人でも建てられるデザインを提案した。
家を支えるのは、3 本の木を支柱とした三角形の基盤。その上に、基盤からずらすように回転させた三角柱のような建物がデザインされた。外装には木材と半透明のポリカーボネートパネルを使用しており、建物の三面すべてが開閉可能だ。夏には森の涼しさが室内に取り込まれ、木々がひさしとなって日陰をつくる。寒い季節には、太陽光を通すポリカーボネートが家の中を暖めるという。床下にはベッドが設置され、4 枚の木製パネルをはずすことで使用することが できる。それ以外で室内に据え付けられたのは、ベンチと机の役割をする 2 枚の板のみ。小さな部屋は空っぽに見えるが、限られた空間を最大限に活用した無駄のないつくりになっている。
『森の生活』再び。今後はクリエイターに開放
キャセッタ・テッシーノは、アメリカの作家、ヘンリー・デヴィッド・ソローへのオマージュでもある。ソローは、マサチューセッツ州ウォールデン湖畔の森の丸太小屋で、2 年に渡り自給自足で生活。その日々を 1854 年の回顧録『森の生活(原題:Walden)』に記録した。その哲学は後世に多大な影響を与えており、森に住み自身の執筆と活動家の理念構築に集中するという、ツリーハウスの依頼主の考えとも重なる。ヤンコ・デザインによれば、クライアントの本宅ではリビング・キッチン・寝室が一体化しており、独立した静かな空間が必要だったという。寝る場所、座る場所、書く場所しかないこのシンプルなツリーハウスは、まさに静寂を求める芸術家にはぴったりな場所だ。今後は執筆に利用したい他のクリエイターに開放されるということで、素晴らしい作品が生まれることを期待したい。
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Webライター
早稲田大学第一文学部卒業。レコード会社に勤務した後に渡米し、コミュニケーション学の修士号取得。米ノースウエスト航空機内誌の編集を経て、日本航空の機内エンターテイメントの選定買付に携わる。夫の転勤で通算9年の東南アジア滞在後、帰国して世界のニュースを紹介するライターに。現在は関西の片隅で、仕事の合間にフランス語学習に奮闘中。
早稲田大学第一文学部卒業。レコード会社に勤務した後に渡米し、コミュニケーション学の修士号取得。米ノースウエスト航空機内誌の編集を経て、日本航空の機内エンターテイメントの選定買付に携わる。夫の転勤で通算9年の東南アジア滞在後、帰国して世界のニュースを紹介するライターに。現在は関西の片隅で、仕事の合間にフランス語学習に奮闘中。







