2023年夏、アーティストの山口一郎と、JTの加熱式たばこデバイス「Ploom X」がコラボレーション。日本の伝統工芸品「鼈甲」と「桂剥き」をモチーフとしたフロントパネルを製作した。
約3年の時を経て、再タッグが実現。山口が新デバイス「Ploom AURA」用のフロントパネルに選んだのは、前回同様、日本の伝統工芸だった。「真鍮」と「九谷焼」を扱った和を感じるアイテムたち。山口に伝統工芸への想いや、テーマとして掲げた「経年変化と愛着」について聞いた。
最新デバイスと伝統工芸が融合して生まれる、美しき違和感
前回コラボの際に行ったインタビューで、伝統工芸を用いた理由を「伝統工芸品の素晴らしさを広く発信したいし、何より僕自身が日常使いしたいから」と語っていた山口。彼が惹かれるワケを自己分析してもらうと、“違和感”という言葉が発せられた。
「建築やインテリアも好きで、なかでも和と洋が融合したジャパニーズモダンに惹かれます。本来混ざり合わないもの同士が融合して生み出す“違和感”に、心地よさを感じるのです」
最新技術を宿したる加熱式たばこ用デバイスと、日本の伝統工芸。確かに本来なら混ざり合わないもの同士かもしれない。しかし、完成したフロントパネルとデバイスは、見事な調和を見せている。
「スティック型の『Ploom AURA』を見て、日本古来の喫煙具である煙管(キセル)を思い浮かべました。ならば伝統工芸品が面白いのではないかと、真鍮と九谷焼を思いつきました」
山口がそれらをモチーフに選んだ理由は、ほかにもある。フロントパネルの元となる素材の製作を手掛けたのは、真鍮は京都「開化堂」の八木隆裕さん、九谷焼は石川「上出長右衛門窯」の上出惠悟さんで、ふたりとも山口とのクリエイション経験もある旧知の仲だ。
「八木さんも上出くんも歴史ある工房の六代目。伝統を守りつつチャレンジを続け、伝統工芸の新たな表現を模索しています。今回の依頼にも快く『やりましょう!』と引き受けてくれました」
なるほど、上出さんは九谷焼でバナナのオブジェを製作したり、八木さんもイタリアの時計ブランドとコラボした製品を手掛けるなど、いずれも従来の真鍮や九谷焼からは想像できない、素敵な“違和感”を生み出す、新時代の開拓者だ。
今回のコラボテーマは「愛着と経年変化」。「真鍮」と「九谷焼」に加え、CLUB JTで展開中のキャンペーンにて抽選で入手可能な「金継」「緑青」「ローズウッド」は、まさに経年変化により増した愛着を表現している。
「金継ぎで修復した九谷焼を表現した『金継』。『緑青』は、銅が経年で酸化し、豊かな表情を宿します。『ローズウッド』は、山形の天童木工のヴィンテージデスクをイメージソースとしたもの。いずれも、僕の日常にあるものたちをサンプリングした、愛着を持って経年変化を楽しめるものたちです」
山口がインテリアやデザインを学ぶ上で、多大な影響を与えている存在がいる。日本を代表するインテリアデザイナー、片山正通だ。
「かねてから片山さんにデザインに関することを教わっています。それまで興味はあったものの、作品の歴史や素材、技法などのコンテクストまでは意識していませんでした。片山さんからは作品が生まれた背景を理解し、咀嚼する方法を教えていただきました」
片山からの学びにより、自身がなぜ伝統工芸や経年変化に惹かれるのかを理解できるようになったという。
「ものが持つヒストリーです。企業やアニメなどのタイアップ曲も手掛けていますが、僕は単にイメージや雰囲気でつくるのではなく、その歴史や開発経緯、また原作を調べるタイプで、その過程がとても楽しい。そうした性格が、多彩な歴史的背景を持つ伝統工芸を好む理由であり、いまの僕の視座になっていると思います」
信念を持ち創作されたものは、時を経てなお愛される
経年変化と愛着。これは、時代を超え長く愛される楽曲があるように、音楽にも共通する概念ではないだろうか。
「シティ・ポップが再評価される以前に、ユーミン(松任谷由実)さんに、古きよきポップスをつくりたいと相談したことがあったのですが、その時に言われたのが『本当のポップスは5年後、10後に評価されるもの。アナタはすでにつくっているじゃない』と言われたのです」
山口のバンド、サカナクションの代表曲「新宝島」は2015年と10年以上前にリリースされたが、当初は「よい作品をつくった自負はあるが、世の中に認められていないジレンマを感じていた」と振り返る。
「でもその後、映画「バクマン」の主題歌として日本アカデミー賞最優秀音楽賞を獲得し、複数のタイアップも獲得。また、MAD動画のBGMにたくさん使われたことで、多くの方に聴いてもらえるようになった。最近、ある音楽ストリーミングサービスで1億回再生に到達したようです。信念を持って創作すれば、長く愛着を持って聴いてもらえる。改めてユーミンさんの言葉を理解できたし、嬉しいですね」
もうひとつ、山口がクリエイションの際に大切にしている言葉がある。
「写真家の森山大道さんの作品が大好きなのですが、本のタイトルにもなっている『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい』という彼の言葉があって、まさにそうだなと。あえてレコーディングでヴィンテージのギターを使うのは、そのギターでしか出せない音色があるし、また、ローズウッドのデスクで詩を書くのも、そうすることで意味や新たな物語が生まれると思っているからなのです」
今回のコラボでは、『Ploom AURA』用のフロントパネルのみならず山口主演のコラボレーションムービー“僕と。”も製作された。
「田中裕介監督とはMVやライブ演出もやってもらっている、十年来の仲です。公私ともに仲が良く、僕のことをよく理解してくれています。また、JTさんには音楽という表現、カルチャーへのリスペクトをすごく感じます。今回のムービーも『ぜひ、サカナクションのチームで制作を!』と言っていただき、田中監督をはじめいつものチームと、とてもよい環境でつくらせてもらえました」
浜松の海岸で撮影された叙情的なムービーは、現在、「CLUB JT」内で放映中。ぜひチェックしてほしい。
最後に、今回製作した5つのフロントパネルのうち、どれが一番のお気に入りかと聞くと、山口は苦笑して答えてくれた。
「全部です。僕はコンセプトを考案しただけで製作は、信頼する上出くんと八木さんにすべてお任せしました。なので、彼らがOKを出したなら僕からはなにも言うことはありません。あ、でも、本体ボディにも各色ありますから、パネルとボディカラーの組み合わせを楽しんでもらえたら、より愛着を持って使ってもらえると思います」
九谷焼特有の透き通るような乳白色と、ゴールドとはまた異なる真鍮ならではの輝き。山口がプロデュースした美しき違和感を放つフロントパネルは、現在、CLUB JT オンラインショップ、または全国のPloom Shopで数量限定にて発売中だ。
Ploom AURA × 山口一郎
