空気や風がすっかり冷たくなり、季節の切り替わりを感じるとともに気分も変わってきた。この冬、新しいフレグランスを取り入れるなら、バニラやトンカビーンズといった甘い素材をキーにした香調がお薦め、と評香師のMAHOさんは言う。
── なぜ冬に甘い香りがお薦めなのでしょうか?
MAHO 寒く乾燥した季節は温かみがほしくなるもの。その点、甘さは温もりを想起させるとともに、人肌や、包み込まれるような包容力を感じさせるため、冬にマッチすると考えています。夏などの気温が高い時季に甘い香りをつけると、その甘さ=濃密さが良くも悪くも目立ってしまうことを考えると、やはり冬向きの香りだと言えます。また、人が自分を労う時にスイーツを食べたくなるように、甘さには自分の心を整えるためのご褒美的な役割もあるので、巷では “おいしそうな香り”=「グルマン」というカテゴリーのニーズが高まっています。
── なるほど。その中でもバニラとトンカビーンズを選ぶ理由は?
MAHO バニラはスイーツなどでも馴染みがある甘い香りの定番なのでイメージしやすく、取り入れやすいと思います。一方で、トンカビーンズはあまり聞き慣れないと思いますが、中南米に自生するクマルという植物の種で、そこから香料を抽出しています。バニラやアーモンドのような甘さの中に、タバコや干し草っぽいドライなニュアンスを持っています。ハーブの爽やかさに土の落ち着きも感じられる、クラシカルで洗練された「フゼア」という男性向けの香調にも欠かせない香りです。
── 勝手に、甘い香りは若い人や女性がよくつけているイメージがありました……。
MAHO 確かに、甘ったるい香りは官能さや色気を感じさせるので、女性や魅力を求める若い世代がつける傾向があったと思いますが、近年は使い方や性別を問わないボーダーレスになってきています。とはいえ、アダルト世代の男性の多くは、爽やかでさりげない香りを好むので、そのニーズを踏まえながら、この冬にチャレンジしていただきたい4つのフレグランスを紹介します。バニラを軸としたディプティック「オー デュエル オー ド パルファン」とジバンシイ「ジェントルマン オーデパルファム」は、甘さとともにミステリアスな雰囲気や知的な印象を与えますし、トンカビーンズをベースにしたジョー マローン ロンドン「ミルラ & トンカ コロン インテンス」とメルセデス・ベンツ「サイン オードパルファム」は、温もりに包まれながら、清々しさや誠実さを思わせる香りです。また、それぞれがオードパルファンなので、長く香りを楽しむことができますよ。
── それぞれ甘い香りの先に大人の趣を感じます。これらの香水をつけるときに意識したほうがいいことはありますか?
MAHO すっきり爽やか系の香りをつけていた方や、初めて甘い香りをつける方は、まず、首元や胸元など顔周りを避けてください。慣れない香りが常に香っていると、自分自身や身近な人が疲れを感じることがあります。服を着る前にウエストあたりや腿裏に、少し離して広範囲にスプレーするようにしてください。
── 気をつけたいと思います。
MAHO 余計なお世話かもしれませんが、甘い香りは色気を感じさせるので、急に切り替えると恋人や奥様から〝変な注目〟を集めてしまうことも……。つける際は、まずパートナーに相談してみることをお薦めします(笑)。
── お気遣い、ありがとうございます(笑)。香りは、いつでも相手や周りのことを考えてつけることが重要ですね!
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ジョー マローン ロンドン ミルラ & トンカ コロン インテンス
甘さ ★★☆
華やかさ ★☆☆
リラックス ★★★
ラベンダーのフレッシュな香りに始まり、ミルラの樹脂的な渋さとスモーキーさにトンカビーンズの軽やかな甘さが重なる。重厚なムードを持ちながら、肌にのせると静かに温かみが立ち上がり、爽やかな色気を醸し出す。
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ディプティック オー デュエル オー ド パルファン
甘さ ★★★
華やかさ ★★★
リラックス ★★★
ピンクペッパー、柑橘、フローラルが交差するシプレ調の香りから、ブルボンバニラの甘さがクリアに広がる。緑色のうちに収穫し、34カ月熟成・乾燥させたバニラビーンズが、大人に似合う落ち着いた甘さを生み出す。
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メルセデス・ベンツ サイン オードパルファム
甘さ ★☆☆
華やかさ ★★☆
リラックス ★☆☆
カルダモンの爽やかなスパイス感とラベンダーが絡み合い、後半にトンカビーンズの厚みが現れる。甘さは控えめで、清潔感と男らしさを明確に印象づける。三つ星のエンブレムを備えるボトルも大きな魅力。
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ジバンシイ ジェントルマン オーデパルファム
甘さ ★★☆
華やかさ ★★☆
リラックス ★★☆
ペッパーとアイリスのシャープな彩りに、パチョリとレザーの深みのレイヤリング。甘さは抑えめだが、しっかりと主張する。“ジェントルマン”らしい大人の清潔感や緊張感を持ちながら、成熟した色気を演出する。




