暦の上では冬の終わりが見え始める頃だが、朝晩の空気はまだ冷たく、クローゼットには“本当に信頼できるニット”が欠かせない。いま選びたいのは、流行を追う一枚ではなく、来年も、その先も迷わず手に取れる“名品”だ。
本記事では、「大人の名品図鑑」としてこれまで紹介してきた数多くのニットの中から、時代を超えて愛され続けるニットを5着厳選。
①THISISASWEATER.の「アランセーター」
アイルランド西岸、アラン諸島で根付いた漁師のワークウェアから派生した伝統的ニット。縄編みやハニカム編みなど複数の編み柄が絡み合い、一目で見飽きない立体感を湛える。今回紹介するモデルは、故・モーリン・ニ・ドゥンネルというアラン最高の編み手の技を模し、糸の太さと編みパターンを細密に設計。粗野でありながらカシミヤのような柔らかさを併せ持ち、マシンメイドながら職人の手仕事感を漂わせる。紋様には伝統的な祈願や物語が息づき、ただの防寒着を超えた文化的な価値を宿す。白いカラーはトラッドスタイルとも相性が良く、現代のワードローブにも落とし込みやすい。
---fadeinPager---
②アンデルセン-アンデルセンの「セーラーセーター」
北海に囲まれたデンマーク発のブランドが、古い海軍用セーターから着想を得てつくる「Navy Crewneck」。素材には特別紡績されたイタリア製エクストラスパンメリノウールを用い、耐久性とフィット感を両立。前後対称のシンプルな構造は、作業着として生まれたセーターの機能美をそのままに、日常的な着こなしへと昇華した。フルファッション編みで裏側も美しく処理されるため、ネックラインの立体感が際立ち、首元の品格を高める。北欧の海洋文化が息づくデザインと高品質素材の混然一体が、大人のニットとしての存在感を放つ。
---fadeinPager---
③J.プレスの「シャギードッグセーター」
アメリカ東部アイビー文化を象徴する定番ニット。スコットランドのシェットランドウールを用い、表面に天然のチゼル(アザミの実)を使って起毛させる伝統的な仕上げが特徴。ブランド創業当時から続く製法は、保温性と軽さ、空気感を両立し、着るほどに体になじむ質感を実現する。サドルショルダーのシルエット、やや大きめのサイジングは、現代のTシャツスタイルとも相性が良く、トラッドとスポーティの境界で活躍する一枚だ。伝統と革新が共存するこのセーターは、世代を超えて支持される逸品。
---fadeinPager---
④エル・エル・ビーンの「ノルウェージャンセーター」
ノルウェーの職人たちが丁寧に編む、クラシックなノルウェージャン柄のニット。ネイビーブルーを基調にした「バーズアイ」模様は、海霧や厳冬の風にも耐える耐候性と伝統的なデザインが魅力。100年以上の歴史をもつアウトドアブランドのアイコン的存在として評価され、暖かさと耐久性、そして本物感を兼ね備える。ブランド史の中で紋章的な意味を持つこのセーターは、北欧の厳しい気候とアウトドア精神が結晶した一枚。大人の休日着としても日常着としても長く寄り添う。
---fadeinPager---
⑤アラン ペインの「クリケットセーター」
英国伝統スポーツ「クリケット」に由来するVネックニット。ピュアメリノウールを用い、生成りにネイビーのトリムを施すことで、スポーティと上品の共演を実現する。アラン ペインの創業は1907年に遡り、大学クラブやスポーツマンたちのユニフォームとして洗練されてきたデザインは、いまもトラッド愛好者の定番であり続ける。『華麗なるギャツビー』に登場する英国趣味の象徴として描かれるなど、文化的背景も豊かな一枚。日常のコーディネートに品格を添える役割を果たす。
冬の終盤だからこそ、その価値がいっそう際立つニットがある。今年の残りの寒さを心地よく受け止め、次の冬を迎える準備としても、大人のための名品たちを手に入れたい。
連載「大人の名品図鑑」
流行や時代に左右されることなく、大人の紳士としてもっておくべき価値あるものをご紹介。テーマを決め、アイテムを毎回変えて徹底解説。1カ月通してみると、ひとつのスタイルが見えてくるはず。たとえば、スティーブ・マックイーンなど偉人の愛用品、アメトラ、プレッピーといったスタイルを主語にしたテーマなどを取り上げます。あなた好みの永遠の定番品を見つけて下さい。