【冬の京都】観光客が多すぎる……それでも行きたい世界遺産、銀閣寺の美しさ

  • 写真・文:一史
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ここに載せている写真はすべて、2025年11月の平日に京都「銀閣寺」をひとりで訪れたときのもの。
東京からの出張旅でした。
写真をご覧いただくと、
「静かで穏やかな時間を過ごせそう」
と思いますよね?
いや、いや、いや、いや、いや、いや、いや、いや w
もう大混雑でした!

世界各国からの訪問者から黄色い帽子を被った小学生の大集団まで、人種も世代も入り混じり大賑わい。
さすがに嵐山の竹林や伏見稲荷神社ほどの通勤ラッシュ状態ではないものの、後ろから押されるように境内の順路を一定ペースで歩き続けないといけなかったほど。
掲載写真はカメラを構え、人が消える瞬間を待ち続けた結果です。

さらにもうひとつ、悲しいできごとがあります。
それは……音が騒々しいこと。
観光客の皆がしゃべり続けてますから、静寂は一瞬も訪れず。
人の多さ以上に、この話し声がしんどかったなぁ。
「詫び寂び」はどこへやら。
風情に浸ろうとする自身の内なる声がかき消されます。
修学旅行生や遠足の子どもたちに出くわしたら、通り過ぎるのをひたすら待つ w

銀閣寺に“世界遺産”の冠がついていなければ、ここまでの混雑にはならない気がするのですが。
建物は朽ちて荒れ、丘陵の「池泉回遊式庭園」は苔むした自然界のよう。
魅了される人は限られるでしょう。
ところが!
京都の風情が好きな者には、魅惑のマテリアルと空間美の宝庫なのです。

2時間ほどこの場にいましたら精神がアップデートされ、周囲の雑音を脳でカットする天然ノイズキャンセリング機能を身につけましたよ。
より人が少ない環境を望むなら、冬のオフシーズンのいまが狙い目だと思います。
偉大な“ザ・京都”を訪れるいいチャンス。

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富士山のような大人の背丈ほどの「向月台(こうげつだい)」と、波を模して盛り上げた枯山水「銀沙灘(ぎんしゃだん)」。
整った美しさならこのエリアが銀閣寺の白眉でしょう。
向月台は石を削り取った彫刻のように見えますが、「白河砂」と土を押し固めだけの造形で定期的に手入れされてます。
雨風にも耐えうる丈夫さらしく。

銀閣寺は室町時代に建立されましたが、この庭ができたのは江戸時代後期のようです。
明治時代の直前と思うと、モダンな造形なのも納得。
誰が考案したか、何の目的かもはっきりしていないそう。
「月の光を反射させる」などの、月にまつわるエピソードがよく語られます。

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銀閣寺の正式名称は「東山慈照寺(とうざんじしょうじ)」。
建物はふたつの国宝があり、ひとつが上写真4点の「観音殿(かんのんでん)」(=銀閣)。
「こけら葺き」の屋根の反り上がった造形がとても美しく
一方でこの建物を初めて目にしたとき、古く荒れた印象のほうが先立ちました。
「荒れ=寂びの美」とも言い切れない微妙さで。
木造建築なのに一度も焼失せず東山文化のまま残っている事実や、当時の日本人が理想とした造形美に思いを馳せると、じんわりと心に染み入ってきます。

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もうひとつの国宝が上写真2点の「東求堂(とうぐどう)」。
中にある4畳半のひと部屋が、現存する日本最古の「書院造り」(現在の和室の原型)とされています。
丘になった回遊式の庭を登り、屋根を見下ろす眺めが最高です。

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私的に銀閣寺に強く惹かれる最大の理由が庭園です。
手入れのされかたが絶妙といいますか、寂びのエッセンスがてんこ盛りの空間なのです。
目がきょろきょろしてしまうほどの美の万華鏡。

銀閣寺の庭は、苔寺のシンボルである京都「西芳寺」を手本にしたとされています。
ただし西芳寺は建立された当時(奈良時代)、苔に覆われた寺ではなかったそう。
川の氾濫や強い湿気により荒廃し、いつのまにか苔が密集するようになり苔寺へと方向転換したらしく。
それは江戸時代後期のこと。
銀閣寺も建立当時(室町時代)は苔庭でなく、昔といまとでは大きく姿が異なるようです。
でも現在がとても魅力的なのだから、ぜんぜんOKでしょう!

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ちょっとした細部に重みと風格、伝統の意匠が見られます。
マテリアルが上質だからこそ、雨風にさらされても深い趣を増すのでしょう。
こうした寂びの景色が庭一面に広がっているのが京都の凄みです。

2020年のコロナ禍のとき、某コーヒー店の取材仕事で京都を訪れたことがあります。
空いた時間で「清水寺」に行ったところ、なんと「清水の舞台」、映えスポットの「三年坂」を無人で撮影できる機会に恵まれました。
(京都の方々は観光収入が激減した辛い時期だったでしょう)
いま振り返ると、このとき銀閣寺にも行っておくべきでした。
取材申し込みをして早朝などに訪れない限り、生涯でここの無人の庭空間を眺められることはないでしょうから。

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京都は秋の紅葉時期が観光ピークです。
真冬で植物の葉が落ちても味わいを感じる人は、オフシーズンを狙ってみては?
1日だけ休みが取れるなら日帰りで行く手もあります。
東京駅から京都駅は新幹線で2時間ほど。
神社仏閣は夕方にクローズしますから、朝早く旅立ち夜7時ごろ発の新幹線で帰るのがちょうどいいコース。
目当てのスポットを幾つか巡り、町家改装のカフェで京都名物のコーヒーを飲みつつ一日を振り返るときが最高に幸せな時間です。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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