クリュッグ×作曲家マックス・リヒター、2008年の卓越したシャンパーニュが共鳴する美しき3部作

  • text by madame FIGARO.jp
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複雑さ・バランス・繊細さを併せ持つ味わいがクラシック音楽にたとえられることも多いシャンパーニュ、クリュッグ。セラーマスターのジュリー・カヴィルが「最後の冷涼年、クラシックビューティ、時を越えた美しさ」と呼んだ2008年のヴィンテージから生まれた3つのキュヴェに、現代を代表する作曲家でピアニスト、マックス・リヒターがそれぞれに呼応した3部作の楽曲を創造。グラスを手に、美しい生演奏のハーモニーに浴する演奏会がロンドンで開催された。

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『クラシックビューティ、時を越えた美しさ』と呼ばれる、2008年の味わい

「どんな気候にも左右されず、最高品質のシャンパーニュを毎年世に送り出す」をモットーにするクリュッグ。1843年の創業以来その伝統は連綿と続き、個性の違う区画から生まれる250種類のワインと、10以上の年代から選び抜かれた150種類にも及ぶリザーヴワインから比類なき個性を持つシャンパーニュ「クリュッグ グランド・キュヴェ」が毎年リリース。さらに、個性的なヴィンテージからはその年の名を冠したキュヴェや、区画を厳選した特別なボトルが生み出される。なかでも2008年のヴィンテージは特別なのだ、とジュリー・カヴィルは語る。

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クリュッグのブドウ畑を訪れた作曲家マックス・リヒター(左)と、セラーマスターのジュリー・カヴィル。

「私たちはそれぞれのヴィンテージにニックネームを付けていますが、2008年は『クラシックビューティ、時を越えた美しさ』。気候変動の著しい昨今、シャンパーニュらしい理想的な冷涼地としての特徴が最も表れているヴィンテージなのです」

フランスのワイン生産地の中でも最も北に位置するシャンパーニュ地方は、その冷涼な環境だからこそ生まれる酸味と、約7000万年に堆積した白亜質(チョーク)の土壌から生み出されるミネラル感が特徴。冷涼なヴィンテージである2008年のブドウには、その酸味の感覚がとても秀でているのだ。

2008年という卓越したヴィンテージに感銘を受けたのが、作曲家にしてピアニストのマックス・リヒター。映画の劇伴音楽をはじめ舞台、ファッションショー、「睡眠のため」の音楽イベントなど、これまでもあらゆるコラボレーションを実現してきた現代音楽の第一人者だ。

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マックス・リヒター●作曲家・ピアニスト 1966年、ドイツ生まれ、イギリス育ち。エディンバラ大学と王立音楽アカデミーでピアノと作曲を学び、フィレンツェでルチアーノ・ベリオに作曲を師事。2008年、映画『戦場でワルツを』で第21回ヨーロッパ映画賞作曲賞を受賞。4月10日日本公開の映画『ハムネット』でも劇伴音楽を手がけている。

偉大なヴィンテージを表現する楽曲を手がける「Every Note Counts(「エヴリー・ノート・カウンツ」すべての音に意味がある)」というプロジェクトが始動し、リヒター自ら畑やメゾン、セラーに赴き、2年にわたって製作を実施。3つのキュヴェそれぞれに共鳴する3部作「Krug from Soloist to Orchestra in 2008」として結実した。

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シャンパーニュと音楽が共鳴し合う、美しい時間

とある午後、思い思いに盛装したゲストたちを乗せたハイヤーが霧雨の降るロンドンを走っていく。世界中から集まった“クリュッグ ラヴァー”たちは、中央にグランドピアノが据えられたコンサートホールに案内された。座席に座ると、オーケストラの団員たちが楽器を手に静かに入場し、そしてマックス・リヒターが姿を表す。同時にボトルを携えたウェイターたちがグラスにシャンパーニュを注いでいく。

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自らピアノを演奏するリヒター。1曲目「Clarity(クラリティ)」ではピアノ、ヴァイオリン、チェロのソリストのトリオ編成で進行。単一品種・単一畑のピュアな個性を表現する。

初めに注がれたのは「クリュッグ クロ・ダンボネ 2008」。「クリュッグ家がもっとも愛する畑」と言われる、アンボネイ村の0.68ヘクタールしかない畑のみで収穫されたピノ・ノワールを100パーセント使用したブラン・ド・ノワール(黒ブドウから生まれる黄金色のシャンパーニュ)だ。

キリッとした酸味がどこまでもピュアで、ビターさを感じながらも心地よい余韻を堪能していると、リヒターがピアノのトリルを奏で始める。リフレインを穏やかに重ねるうち、ヴァイオリンが寄り添い、チェロのソリストが加わる。第1楽章「Clarity(クラリティ)」と名付けられた楽曲は音の高低を行き来しながら、どこまでも穏やかなリズムが続き、それはまるで波打ち際を眺めているかのようで、シンプルなメロディの連続が心をゆっくり、大きく揺する。

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第2楽章「Ensemble(アンサンブル)」は、クリュッグ2008のテクスチャーと均衡を室内楽で表現。

ふたつ目のグラスに注がれるのは、「クリュッグ 2008」。ジュリー・カヴィルは「素晴らしいヴィンテージで生まれたアイ、ブジー、アンボネイといった区画それぞれのブドウの大きく異なった味覚と芳香を、対比するように互いに補い合いながらブレンドをすることでクラシックの傑作を生み出した」と言う。爽快な酸味の奥に柑橘、焼きリンゴやハチミツ、バタークッキーのような香ばしさもあり、長い余韻にしっかりとしたミネラル感。

第2楽章「Ensemble(アンサンブル)」は、弦楽とピアノの弾むような旋律からスタートし、まるでグラスの中で微細な泡が立ち上り弾けるかのような心地よさに浸れる。こちらも徐々に楽器が増えていき、管楽器のリズム感が響く頃にはグラスのシャンパーニュが空気と触れ合い、味わいが花開いたような空間が広がる。室内楽のメンバー構成で、音楽は決して膨らみすぎず、一定のメロディのリフレインでグラスの中の味わいが変化していくような、まさに不可逆な時間の流れを体感するような美しさだ。

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第3楽章「Sinfonia(シンフォニア)」は11年にわたる127種のワインをブレンドして造られたシャンパーニュの奥深さを交響曲編成で表現。

最後のグラスに注がれたのは、1990年から2008年にいたるまで127種のワインをブレンドしてつくられた「クリュッグ グランド・キュヴェ 164 エディション」。トーストしたバゲットのような香ばしい芳香に、スパイス、満開の花のようなニュアンス。口をつけると、オレンジ、ジンジャーブレッド、アーモンド、ハチミツ、ブリオッシュ、コーヒー……そのさまざまな要因と複雑さが心地よい。

会場に響きわたるのは第3楽章「Sinfonia(シンフォニア)」。リヒターの穏やかなピアノから始まり、管楽器が静かに寄り添う。これまでの楽曲と同じように主旋律を重ねていくが、楽器の数が多くなり、それぞれが美しく響き合う様子はまさにシャンパーニュの複雑性を表しているかのようだ。対比があり、同調があり、そしてそれらは決して後退しない。緩やかに、静かに、指揮者はタクトを止める。世界中のゲストはスタンディングオベーションで、マックス・リヒターと楽団、そしてジュリー・カヴィルに惜しみなく拍手を送っていた。

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クリュッグを片手に、音楽に浸る時間を

「ワインと音楽はとても近しいもの。両方とも『言語を持たない』ながら、あらゆる人に同じ感覚が届き、心を揺り動かすことのできるユニバーサルランゲージ(世界共通語)なのです」とリヒターが言えば、カヴィルもその言葉に大きく頷く。

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左から「クリュッグ クロ・ダンボネ 2008」、「クリュッグ 2008」、「クリュッグ グランド・キュヴェ 164 エディション」。

「マックスと私は、普段話す言語も違えば暮らしている場所、仕事の内容も全然別です。しかし、手がけているプロセスにとても共通点があった。それは、お互いの仕事が時間をかけることでしか生まれないこと、とても多くの人々がプロジェクトに関わっていること、生み出したワインや音楽を通じて、世界中の人々に感動や美しい時間を届けられることです」

今回の3部作「Krug from Soloist to Orchestra in 2008」は、各種ストリーミングサイトにて配信が開始され、家に居ながらにしてこれらの楽曲を楽しむことができる。

「シャンパーニュは喜びの時を祝うもの。そして音楽というものも、ぜひ意識的に聴く、という時間を大切にしてほしいと思います。感覚であり、香りであり、味であり、音である。それら全てに身を委ねる、『そのひと時を生きる』感性を味わっていただけたら、と思います」

MHD モエ ヘネシー ディアジオ

問い合わせ先: www.mhdkk.com/enquiry
クリュッグ公式サイト: www.krug.com/jp