【新型日産リーフを試乗】高級EV市場を揺らせるか? 日本発EV王者の鮮やかな帰還 第239回東京車日記

  • 写真&文:青木雄介
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第3世代となる新型「リーフ」はCMF-EVプラットフォームを採用し、グローバル戦略車として位置づけられている。

かつて日産「リーフ」は、電気自動車の代名詞だった。

2010年の初代登場から累計70万台超。EVという概念を、理屈ではなくリアルに“生活”に落とし込んできた初めてのクルマだった。「静かだから子どもがすぐ寝る」とか、「排気ガスが出ないから声楽家にだって優しい」とか、いまだと少し気恥ずかしい感想が懐かしい。だがあれはたしかに、EVの原体験だった。

弱点を刷新した、EV王者の復活

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プロパイロット2.0を搭載し、ハンズオフ支援機能を強化。加えて150kW級急速充電に対応し、バッテリーマネジメントを刷新して充電効率を向上させている。

特に欧州での存在感は大きく、2018年までEV販売のトップを走っていた。だが翌年からはテスラ「モデル3」に王座を譲ってしまう。「リーフ」が強みとしていた“街乗りにちょうどよいEV”という立ち位置は、航続距離の長さと充電の速さによって、価値を根底から揺るがされたのだった。

さらに欧州メーカーが本格参入し、SUV型を中心にラインアップを拡充。加えて中国勢が価格競争力と電池技術を武器に急速に存在感を高めてきた。EV市場は、もはや実証段階ではなく、完全な競争市場。いよいよ覇権争いは激しさを増している。けれども市場はまだまだ流動的で、ここからワンチャンなくもない。

そこでかつての王者「リーフ」の新型が登場ですよ。まず明確なのは、弱点を正面から潰してきたこと。航続距離は大きく伸長し、急速充電は150kW級に対応。自宅給電仕様のイメージから、高速充電を利用しつつロングドライブを前提とした設計へ、キャラを変えてきた。

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ティアドロップシルエットを採用し、整流効果を高めるディフューザー形状を取り入れ、走行安定性と効率向上を図った。

デザインも変わった。従来の実直なハッチバックから、空力を意識したクーペライクな近未来的クロスオーバーフォルムへ。リアのダックテイルスポイラーが小粋でね。精緻なLEDシグネチャーは欧州的な洗練を感じさせるし、ほのかに「Z」のプライドも漂う。空力性能を追求しながら、EVらしい視覚的な軽快さをもたらすティアドロップ形状で、「これなら乗ってみたい」と思わせるデザインだよね。

走りもさすがに成熟している。アクセルに対するレスポンスはリニアなのに、トルクの立ち上がりはとても滑らか。車重はあるものの、サスペンションの減衰と制動の合わせ込みが巧みで、足まわりの不快な衝撃や音も抑えられている。ワンペダルドライブの完全停止にためらいは感じられるものの、加速やハンドリングなどの動的質感は明らかにクラス上。ここがいちばんのセールスポイントだね。

現実的な価格と高い完成度で、高級EV市場に挑む

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デュアル12.3インチワイドディスプレイを搭載し、車内OSは最新世代のNissanコネクトを採用。OTAによるソフトウェア更新にも対応する。

インテリアの質感もぐっと引き上げられた。水平基調のコックピットに触感のよい素材選び、そして低音がしっかり効いているBOSEのサウンドシステム。これらを踏まえて補助金込みで300万円台(都内在住なら200万円台)も可能という価格帯は、相当に戦略的と言っていい。装備と体験価値を考えれば、ちょっとありえないぐらいのコスパの高さ。

特定条件で手放し運転も可能なプロパイロット2.0との相性も素晴らしく、試乗中は高速だけでなく幹線道路でも作動させまくった。実際に走らせてみると、東京から名古屋あたりまでなら、「新幹線を使わなくともリーフで行きたい」と感じる完成度だね(笑)。放っておけば勝手に走ってるし、移動しながら思索したい向きには至福の時間じゃないだろうか。 

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EV専用アーキテクチャによりホイールベースを拡大。後席足元空間とラゲッジ容量を拡張し、日常利用と長距離移動の両立を図っている。

では、このクルマは日本におけるEV反攻の狼煙になれるのだろうか。日産の苦境を考えるとなってもらわないと困るのだけど、新型「リーフ」はいいですよ。弱点を補強し、デザインで印象を刷新し、価格で現実解を提示した渾身のパッケージになったと思う。最高に素晴らしいのは、欧州メーカーのような高級化を狙わなかったことだ。このデザインと走りで、この価格だと驚かせるに足る商品力を持っている。いまのところ、EVはこの驚きこそがなにより大事なんだな。

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リアコンビネーションランプはフルLED化。水平基調のシグネチャーと立体的な内部グラフィックにより被視認性を高めている。

余談だけど、英国の自動車専門誌がこぞって初代「リーフ」からのシリーズを懐かしみつつ、新型を高く評価をしているのね。中には“英国製EV”と呼んで、愛情を隠さないメディアもある。その背景には、欧州での拠点が英国サンダーランド工場という文脈がある。でもそれだけじゃない、「リーフ」が再び“選べるEV”になった証でもある訳。

“EV=日産リーフ”と認識された日本発のEVが、欧州の過当な競争環境の中で再定義され、評価され、そしてまた日本市場へ戻ってくる。そのサイクルに期待したいですよ。日産にとってこれは宿命であり、新型「リーフ」は運命の分岐点。その狼煙が、日本ではなく欧州の風の中から上がるのだとしたら、それもまた「リーフらしい」と言えないだろうか。

日産 リーフ

全長×全幅×全高:4,360×1,810×1,550㎜
モーター種類:永久磁石型同期モーター
最高出力:218PS
最大トルク:355Nm           
最大航続距離:702km(WLTCモード)
急速充電:最大150kW対応   
駆動方式:前輪駆動(FWD)
車両本体価格:¥4,389,000~

日産自動車お客さま相談室
TEL:0120-315-232
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