近年、世界のリゾート建築は単なる「宿泊施設」の枠を超え、壮大な実験の舞台となっている。そこには、建築家たちが追い求める新しい自然との関係や、持続可能な観光のヒントが詰まっている。
今回は、Pen Onlineの連載「世界のデザインニュース」から、いま世界で話題の“未来宿”を5つ厳選。
①海に浮かぶUFOの正体|サウジアラビア
サウジアラビアの紅海に誕生した「シェバラ・リゾート」は、未来都市のような外観で世界の建築ファンの注目を集めている。海の上に浮かぶのは、まるで銀色のUFOのような球体ヴィラ。ステンレス製の外装は空や海、砂浜を映し込み、時間帯によって姿を変える幻想的な景観をつくり出す。
この施設の特徴は、73棟のヴィラが真珠のネックレスのように水上へ並ぶ大胆な配置だ。デザインは海底から立ち上る泡に着想を得たもので、建築そのものが海と一体化するよう設計されている。さらにこのリゾートは、太陽光発電や海水淡水化設備を備えた完全オフグリッド運営を目指すなど、環境配慮の面でも先進的。未来のラグジュアリーリゾートの姿を体現するプロジェクトといえる。
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②崖から海へ飛び出す“隠れ家ヴィラ”|アルバニア
バルカン半島のアルバニアでは、断崖絶壁に溶け込むようなリゾート住宅「シグネチャー・ヴィラ」の計画が進んでいる。設計を手掛けるのは国際的建築事務所オッペンハイム・アーキテクチャー。彼らが掲げた理念は「土地の上に建てるのではなく、土地とともに建てる」ことだ。
建物は現場打ちコンクリートで構成され、崖の地形に沿って配置される。室内からはイオニア海の水平線を一望でき、細長いプールが崖の外へ張り出す大胆な構造となる。建築は極めてミニマルだが、アルバニアの伝統刺繍から着想を得た装飾が施されており、土地の文化とも深く結びついている。自然と建築が静かに対話するような、次世代の“隠れ家リゾート”だ。
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③標高3000m“巨大かまくらホテル”|ジョージア
コーカサス山脈の麓、ジョージアの山岳地帯では、標高3000メートルに建つユニークな高地リゾートの計画が進んでいる。丸みを帯びたコンクリートの外観は、日本の雪国に見られる「かまくら」を思わせる形状だ。
各コテージは50㎡ほどのコンパクトな空間ながら、大きなガラス窓から雄大な山岳風景を望むことができる。メザニン構造のベッドルームなど、少人数向けのパーソナルな滞在体験を重視した設計となっている。太陽光発電などを利用した持続可能な運営を目指しており、登山者やトレッカーの拠点としても期待される。過酷な自然の中でこそ成立する、静かなラグジュアリーがここにはある。
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④島に現れた“虹色ドーム都市”|イラン
イランのホルムズ島に建つ「マジャラ・レジデンス」は、約200個のカラフルなドームで構成されたユニークなホテル兼文化施設。赤い大地と青い海のコントラストの中に、虹のような建築群が広がる。
最大の特徴は、地元の土を詰めた袋を積み上げる「スーパーアドベ」と呼ばれる工法。地元住民が建設に参加することで、雇用創出とコミュニティ再生を目指す社会実験でもある。敷地には宿泊棟のほか、工房や図書館、レストランなどが点在。観光と地域文化を結びつける新しいエコツーリズムのモデルとして、国際的な建築賞も受賞した。
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⑤ 森に生える“キノコ型楽園”|ベトナム
ベトナムの森の中に誕生した「ロータス・クラブハウス」は、まるでキノコの群れのような円形屋根が特徴のリゾート施設。約2000㎡の敷地に建物を分散配置し、自然の景観と一体化するよう設計されている。
屋根には植栽が施され、熱を抑えながら雨水を集める仕組みを備えるなど、環境性能も高い。建物は森の中を散策するように点在しており、訪れた人は光や風、水の変化を感じながら空間を歩く体験ができる。自然を支配するのではなく「共鳴する建築」を目指したこの施設は、未来のエコリゾートを象徴する存在だ。
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いま世界で生まれているリゾート建築は、単なる豪華ホテルではない。それは自然環境、地域社会、そして未来の観光のあり方を問い直す実験でもある。新しい可能性を見せてくれる建築を、次の旅の目的地にしてみてほしい。