いま注目すべき腕時計をデザインの視点から切る、雑誌『Pen』で好評連載中の「並木教授の腕時計デザイン講義」。今回のテーマは「ローマンインデックスの3針×カラーダイヤル」。色彩が古典的正統を解き放つ“新時代のエレガントウォッチ”に注目!

かつてドレスウォッチの定義は、きわめてストイックなものであった。白か黒のダイヤルに、控えめな貴金属のケース。そこには「礼節」という名の厳格なルールがあり、腕時計はあくまで格式を支える存在であるべきとされていた。しかしドレスコードも時代とともに変容する。タイドアップの機会は減り、ラグジュアリーの価値も「形式」から「自己表現」へと移行した。装いの自由度が広がるなかで、腕時計のデザインにも新しい解釈が求められている。
その象徴が、カラーダイヤルとローマンインデックスの融合であある。ローマ数字という意匠は、時計史において最もクラシックで正統な記号だ。この古典的な骨格があるからこそ、ダイヤルに大胆な色彩を与えても、時計としての品格がゆらぐことはない。むしろ堅苦しさが中和され、現代的な「エレガントウォッチ」ともいうべき新カテゴリーを生み出している。
さらに、ブレスレットを採用しスポーツウォッチの軽快さを取り込んだドレスウォッチは、もはやスーツ専用ではない。上質なニットやラフなデニムに、ブラウンやグリーンのローマンダイヤルの3針を合わせる。それは、歴史への敬意を払いながらも自由を享受する、現代人の知的な遊びである。
スポーツウォッチをよりドレッシーに、あるいはドレスウォッチをよりファッショナブルに。古典をカラーというフィルターで読み解くと、ドレスウォッチは儀礼のための道具から個性を語る存在になる。それは、現代的な「新しい正統」と言えるだろう。
---fadeinPager---
1.BLANCPAIN(ブランパン)
ヴィルレ ウルトラスリム
古典派の頂点に立つブランパンの「ヴィルレ」が、ブラウンゴールドのダイヤルカラーを纏うことで、驚くほど艶やかな色気を獲得した。二重の段差を設けたダブルステップ・ベゼルと、繊細に造形されたゴールド製ローマンインデックス。そこに重なるチョコレートのような文字盤の色彩は、伝統を単なる歴史の継承にとどめず現代の装いへと引き寄せる進化の象徴だ。
---fadeinPager---
2.TUDOR(チューダー)
チューダー ロイヤル
スポーツウォッチのタフネスとドレスウォッチの端正な顔立ちを兼ね備えた「チューダー ロイヤル」。サンレイ仕上げのブルーダイヤルにローマンインデックスとミニッツトラックを重ね、視認性と装飾性を両立。ケースからつながるインテグレーテッド・ブレスレットの造形が、ほどよい存在感と品格をもたらす。形式に縛られず、自分のスタイルを楽しむ現代のビジネスパーソンにふさわしい。
---fadeinPager---
3.TISSOT(ティソ)
ル・ロックル
カラーダイヤルによって、クラシカルな美学を継承する「ル・ロックル」コレクションに瑞々しい息吹を吹き込んだ。歴史あるローマンインデックスが、グリーンの背景によってここまでモダンに映るのは印象的だ。伝統的なギョーシェ彫りの質感を巧みに残しつつ、深みのある色彩を選んだダイヤル構成も秀逸。価格以上の完成度で、知的なエレガンスを日常の装いに無理なく取り入れられる一本だ。

並木浩一
桐蔭横浜大学教授/時計ジャーナリスト
1961年、神奈川県生まれ。1990年代より、バーゼルワールドやジュネーブサロンをはじめ、国内外で時計の取材を続ける。雑誌編集長や編集委員など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。ギャラクシー賞選奨委員、GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)アカデミー会員。著書に『ロレックスが買えない。』など多数。
関連記事
- 【ムーンフェイズの腕時計3選】ブレゲからブランパン、ナオヤ ヒダまで、大人の遊び心と風格が宿る「ゴールドケース」のドレスウォッチ
- 【カラーダイヤルの腕時計3選】IWCからジャガー・ルクルト、パルミジャーニ・フルリエまで、新時代を予感させる「スモールセコンド」付きのドレスウォッチ
- 【ピアジェからロンジン、ベル&ロスまで】クールで洗練された印象を演出する、「シルバーカラーのワントーン」の腕時計3選
- 【パテック フィリップからルイ・ヴィトン、ブルガリまで】トレンドのブラウンダイヤルを纏った、「ゴールドブレスレット」の腕時計3選
- 【ハリー・ウィンストンからピアジェまで】機構を“魅せる”「オープンワークダイヤル」の腕時計3選



